2001
may

5/16
5/17






5月16日

【イーピン事件】


二十歳の夏。

気が狂いそうなほどの蝉達の大合唱を聴きながら、僕らは(麻雀を)打(ぶ)っていた。

クーラーの無い6畳間。
むせ返るような暑さの中で卓を囲む4人の男。

抜け番で暇を持て余している俺と浩平さん。

パンッ、といい音をさせて誰かが捨牌を切る。

イーピンだ。

牌いっぱいに書かれた丸模様。ピンズの代表格。
そのフォルムは、見慣れた何かを連想させる。


暑さに参った浩平さんは履いていたジーパンを脱いで、Tシャツにトランクスだけの姿で台所に向かう。

寝ている俺をまたぐ。
蝉の声がやむ。
僕は、ふと目を開けた。


「ギャアアアアアアアアアア!」


「ど、どうしたコイズミ!?」

「(泡を吹きながら)イ、イーピンが…イーピンが…」

「また犠牲者が…」
「可哀相に…」
「オマエ、トランクス姿禁止」


ふと見上げてしまった俺が悪いのか。
浩平さんはヘラヘラしながら缶ジュースを飲んでいる。

誰かがまた、パンッと牌を切る。
蝉が鳴きはじめる。
僕は泣かなかったと思う。



5月17日

明日、今月締めのAP2つのプレゼンをしなくてはならない。
時間は23時。
やった! やっと動いた!!
生成しているファイル内容にも問題無し!
そしてデバッグ用のfprintfを外して再コンパイル。実行。

core dump

わー
わー
わー
そんな、今更。
もう駄目だ。

一箇所だけ、fprintfを削除、またはコメントにするとcoredumpができて異常終了する。

※ 解説 -fprintf-
出力関数。ここではログファイルに吐き出させている。
普通は、これを書こうが消そうが処理自体に影響は無い。
※ 解説 -coredumpができて異常終了-
AP全体の何処かで使っちゃいけないメモリ領域を破壊している可能性大。
全体的なソースの見直しが必要。


即座に出た俺の言葉。

「デバッグ用のfprintf文を、如何にしてさも仕様のログ出力のように見せるかが問題だ


皆、最初は笑っていたが、俺が本気だと気づいたらしく本気で止められた。

「アハハ、駄目ですよー」
「良心の問題ですね」
「プ、プロフェッショナルとしてそれはできないでしょ?」
「マジで駄目だって!」

その時動いてくれればどうでもいいんですよ。

たぶん俺はプログラマに向いていない。



つうか、もう駄目だ。