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気が付くと電車だった。 頭がボーッとしている。 状況がよくわからん。 目の前にはおっさん。 駅員さんらしい。 起こされた所をみると、どうやら終点まで乗り過ごしてしまったということなのか。やれやれだ。 階段を登る。 南武線のホームが見付からない。 (当時、南武線の稲城長沼駅付近に住んでました) 人が居ない。 どうやら終電が終わってしまったようだ。 目は半分閉じたまま、俺はフラフラと駅を出る。 改札でブーッとかいわれる。 機械のくせにナマイキ。 蹴りを入れそうになったけれど、駅員の気配を感じ、大人しく清算。 俺は泥酔しててもジェントルメンなのだ。 タクシーが停まっていたのでタクシーで帰ることにスル。 フラフラと乗り込み行き先を告げてみた。 稲城長沼駅の近くまでヨロシク。 「は? もう一度お願いします」 稲城長沼駅までヨロシク。 「えェと、その駅っていうのは、どのへんですか?」 彼は何を言っているのか。不勉強極まりない。しかしジェントルコイズミ、優しく説明。 登戸のほうですヨ。 「はぁ。それじゃとりあえず行きます」 そう。とりあえず行ってください。 少しずつ酔いが醒めてくる。 時計を見ると、1時半を少し回ったところだったと思う。 周りは知らない景色。 …思い出した。 今日は、平日の前日なのに、研修一緒の連中とハジメマシテ的な呑み会をしたのだった。 けっこう呑んで、なんか何人かにキスをしていた気がするが、まあそれは今はいい。 しかしどうでもいいが、奴等、俺のことを社長(重役出勤から社長出勤となり、研修中のニックネームは社長に落ち着く)と呼ぶのは勘弁願いたい。 デカイ声で。しかも路上で。 オッサンなんかに『この若造はいったい?』という感じに振り向かれるのは、たいへん恥ずかしいのです。 まあそれはともかく、何故、南武線が見付からなかったのだろうか? んー? 見付からなかったということは、南武線が無いということか? そういえば、大船駅って書いてあった。大船って何処だ? 冷たい汗を感じて料金メーターを見ると¥5000を少し過ぎたところ。 一気に酔いが醒めていくのを感じながら見る俺の財布の中には千円札が3枚。 あと、細かいのが少し。 この時点で既に¥2000ほどオーバーしているその事実。 酔っ払いにも理解できました。 つまり、もう降りれない。 どうやって逃げる? と、ノータイムで考える俺はどうなんでしょうか。 酔いはドンドン醒めていく。料金メーターもドンドン上がっていく。 もうほぼシラフだ。 初夏の暖かい夜だというのに冷たい汗が流れてくる。どどど、どうしよう! 運転手が不安そうな顔をしている。 「ここの道は、どっちですかねえ?」 オイオイ、先天的悪性方向音痴の末期患者であるこの俺にわかる訳がナイじゃないか。ねえ、彼。 うわー、俺、帰れるのかなー。ふーあーんー。 ガソリンスタンドで道を聞く。 やっぱ少し方向がズレていたので、修正して再度発進。 あ、メーターの桁が一つ増えた。 もうどうでもいいや。 もう既に一時間以上、運転手さんと一緒にいる。何か話でもして気を紛らわそう。 これ以上メーターを見てると気が滅入る。 いやあ、参りましたね。酔っ払ってたもんで。大船って遠いんですネェ、アハハ。 「そうですねえ、前にも同じようなお客さんを何度か乗せたことがありましてねえ、えェと、アレは女性の方でしたけど、 確か新宿まででしたねえ。いくらだっけかな? 確か3万…4万はいかなかったですねえ。 いやー私も参っちゃいましたヨ。ドンドン上がっていくメーターを見ながらその人、ドンドン顔が青くなっていきましてねえ(笑) メーター見てたら気分悪くなったみたいで、いきなりゲロゲロ吐かれまして(笑) アハハハハ、参りましたヨ」 笑えない笑えない。 彼なりに俺を安心させうようとしたのか? それともただの馬鹿か、意地悪なのか? 「他にもねえ、何処だっけかな? その人も新宿のほうだったかなぁ? あの時はいくらだったかなあ? 確か、4万…」 いいからアンタもう黙っててください。 ますます気が滅入る。 もうどうでもいいや。 あ、メーターが一万五千円に。 ウソウソ、やっぱどうでもよくないヨ! つうか、まだ着かないですか? まだまだですか? 「そうですネェ、まだ着かないんですかねえ。ここどの辺なんですかねえ?」 ああ、そうですか。 メーターが一万七千円を超えた。 また、どうでもよくなってきた。 とかやってるうちに見覚えのある道に。 嗚呼! ここ! ここ知ってます!! こっちです、えェ、この道を行ってください…グス…あ、あれ? ごめんなさい、私…私、泣くつもりなんて…なかっ…グス…アレ? 涙が…どうしたんだろう?……… あ、ハンカチなんてそんな、ありがとうございます…グス…あ、そこ入って、えェ、そのあたりでいいです、止めてください。 キキー 嗚呼、やっと着きましたね…グス…ありがとうございました。 あの、今、気が付いたんですが、手持ちが足りないみたいで。家に行って取ってきますネ。いやあ、どうもお疲れさまでした。 ドア開けてください。 え? 身分証明書? ああ、そうですね。何か置いていかないとね、 そのまま逃げちゃうような悪党もいるかもしれませんしね。 まあ、私と運転手さんは、もう知らない仲じゃないし、不要でしょうけど。 …あ、出さなくちゃ駄目ですか? わかりました。えェと、今出しますので、ドア開けてください。 え? はいはい。今出しますってば。 あれー? んー、無いかもしれないにゃー。 …あ、コレ? ああ、免許証ありましたね。だからドア開けてください。 渡してから? あぁ、勿論渡しますよ。当たり前じゃないですか。 はいはい、いくらですか? 何よ、2万持ってくればいい訳ね!(逆ギレ) 幸いなコトに、部屋に3万ほど金があった。普段絶対無いのにツイてた。いやツイてねェ。 運転手さんは「これから私、一人で大船駅まで帰らなくちゃいけないんですよねえ…」と疲れた顔で言い、去っていった。 そこまでは、俺知らん。 時刻は平日の午前3時半を少し回ったところ。 だいちゃん(※)の部屋のチャイムを鳴らす。 寝ぼけ眼で出てくるだいちゃん。 おじゃましマース! まあ汚いケド、そのへん座れヨだいちゃん。まあちょっと聞いてくれ、大変だったんだ! 2万近くもかかりやがった! タクシーでさ! アレだ、大船まで行っちまったんだが… ビシッ!(チョップ) テメ寝てる場合じゃねェだろ! それでアレだ、終電終わっててさぁ… …フェイドアウト ※ だいちゃん[人名] →smilin'day 19990826, 19990829 参照。 |
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