働く男4






またしてもローソンバイトの続き。


前回事件のスグ後くらいに、新しいバイトが入ってきた。
忙しい店なので入れ替わりが激しく、新しいバイトは珍しくないが、その人はちょっと変わっていた。

別に変人という訳ではないが、その彼は28だか29歳で床屋さんの店長さん。
夜暇だとか、店が流行ってないだとか、昼寝てるから体力が余ってるだとか言っていたが、単に店が潰れかけて財政的にピンチだったんじゃないかと推測する。
何となく、この人には髪を切られるのは厭だなあと思ったので、納得できた。


その彼が入って2日目くらいに新たな事件は起こった。


普段バイトは二人だが、床屋さんは2日目というコトもあり、その日は俺とM君の3人体制。
時間は12時か1時くらいだったと思う。深夜勤務では忙しさのピークだ。

慌ただしい様子で女のコ(といっても25,6歳くらいだったと思う)が入ってきた。
最初から何やらオロオロしていて(店員、少なくとも俺なんかは意外と客の様子を見ているものです)、何故かバックルーム入り口のあたりで壁を向いたまま動かない。
挙動がオカシかったので気にはなったが、トイレを借りたいのだろうか?とも思ったし(バックルームにあって勝手に借りちゃう人もいたので)、何よりレジに行列ができていたので、ほったらかしにする訳にもいかなかった。

レジにできていた列も一段落し、さっきの女のコのコトをM君に聞いてみた。

「俺も気になってましたけど、いなくなったんじゃないスかね?」

ふうん。
バックルームの物盗られてないだろうな…?とか思っているとゴツイ系の男たちが5,6人入ってきて、キョロキョロと店内を見回した後「若い女、入ってこなかった?」と俺らに聞いた。(ホント変な奴しか来ねえな)

「さあ、知りませんね。忙しかったもので」
M君が口を開く前に即答。

絶対あの女のコだ。

さっきの男たちは、納得したのかしないのか、店内からは出ていったものの店の前をウロウロしていた。
うざったいなあ。客足が遠のいちゃうよ。(嬉しいじゃないか)

店の外を見て「い、いいんですか…?」と心配そうなM君。

いいんでないの?
いくら怪しかろうと、そこそこカワイイ女のコと男の集団じゃ(どっち側につくか)考えるまでもないし。

それに、何かワクワクするじゃ…





…ってオイ!


バックルームからさっきの女のコがぴょこっと顔を出して手招きしている。
ちょー、何してんのアンタ!?

話を聞いてみると、変な男達に付きまとわれて困っているとこのことを、目を潤ませながら説明する。

実際、以前にもそんな感じで逃げ込んで来た女の子はいたし、夜の繁華街で有り得ない話じゃない。

でも、俺とMは胡散臭いと思った。

何故なら、さっきの男達は、揃いも揃ってどっかのお店の制服着てたから(割烹着みたいの)。

仕事中に店ほっぽりだして女のコ追い掛け回すかあ? しかも大勢で。
もしくは仕事中でも無いのに、そんなもん着るかあ?

どう考えてもふに落ちない。

とか思ってたら、



「僕に任せてください!!」と床屋さん大暴走。



俺とM君「えええええ!?」

「僕に任せてください! 店に迷惑かけませんから!!」

目を輝かせ、更に突っ走る床屋さん。

その熱意に打たれ、ついに俺も面白そうだからゴーサインを出した。


しかし店の入り口付近には、まださっきの男たちが。
ギラギラと目を輝かせた床屋さんは(怖い)、トイレから女のコを逃がすことにした様子。
店のトイレには小さい窓が付いているが、鉄格子が付いている。
でもそんな障害は、女のコを守る責務を課せられたナイトには何の制止力にもならない様子。
何処からかドライバーを持ってきて、鉄格子を全部外し始めた。


何処まで行く気だ床屋さん。ダイジョウブなのか床屋さん。


どう? ダイジョウブですか、床屋さん?

「いやあ、あの潤んだ目に弱いんですよねえ(うっとり)


駄目だコイツ。


鉄格子との格闘の末、見事トイレから女のコを逃がした床屋さんは、御満悦の様子でレジに戻ってきた。


「いやあ、今度ケーキ持って御礼に来てくれるって!」なんつってご機嫌な様子。

俺が失敗したのだろうかと後悔の念に苛まれていると、外で異変。

店が忙しかったのもあり、上手く状況が掴めなかったのだけれど、どうやら女のコはあっさり捕まったらしい。

つうのも、店と周りの様子を図解説明するとこんな感じ。







そりゃ捕まるわな!




情報収集の為に、M君を店外に派遣。
M君が収集した情報をまとめると。
  • さっきのゴツイ系の男連中は、やはりお店の店員さんである

  • さっきの女のコは高い酒をかっぱらって逃げていたらしい
以上。

いや、怖いッスね。
まあM君からの又聞きなんで100%正しい事実かどうかは、今となっては確かめようも無いんですけど。

それにしても世の中いろんな人がいるものだなあ、と。


それを聞いた床屋さんは、しばらく呆然とした後、遠くを見つめて寂しそうに、


「いつもあの目に騙されるんですよね…」と一言。


ヨロヨロと力無い様子でトイレの鉄格子を直しに行った。


その悲しげな背中に対し、俺もM君も、かけられる言葉は何も無かった。

何も言えなくて…夏…
J−WARK…髭…
そんな気分。
(ゴメンなさいパクりました)


他人事ながら、床屋さんの将来に思い煩わざるを得ない、そんな出来事でした。

ちなみにこの馬鹿話は、次の日には何故かバイト全員が知っていました。誰だ!?(←オマエだ)


つうコトで、このオハナシはこれでオシマイ。


* 働いて働いて、そのあげく、愛することを忘れてしまうのである。 カミュ *


コゾウ共、働いてる場合じゃねえらしいぞ!
じゃね。