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ナオトはテーブルの上に並べられた夕食を、親の敵とでも言うように眉間に深いシワを寄せ、顔をしかめながら勢い良くガツガツと口にしていた。 折角の母の料理だというのに、あれでちゃんと味はわかるのだろうか。 そう思いつつ、カレンもまたやけ食いだと言わんばかりに、大好きな母の料理を口にしていた。 「何なんだあれは!何でもかんでもギアスギアスギアスって、バカの一つ覚えのように連呼して、自分たちに不利なことや戦死者が出れば全部ルルーシュのせいって!戦争してたんだろあいつ!」 ナオトは不愉快そうに文句を言い続けていた。 先にカレンの話を聞いていた。 自分の犯した罪を後悔し、涙を流しながら話したカレン。 自分の犯した罪を隠し、他人に罪を着せ話した扇。 どちらを信じればいいのか考えるまでもなかった。 扇の話を聞いてよかったと思えることは一つ。 カレンの話しが真実だと確信できたことだ。 未来の扇が首相となり行った政治も全て聞いていた。 「だから言ったでしょお兄ちゃん。確かにルルーシュは悪逆皇帝として全ての悪の象徴になったけど、アイツの性格考えればあの悪事こそが嘘なのよ。弱肉強食を否定し、弱者を救うのがルルーシュなの。アイツは大嘘憑きだもの、きっと他の誰かの悪事を自分がやったかのように偽造したんだとおもう。そしてその悪事をした張本人は別の理由をつけて反逆罪で処罰したってところでしょ。善良な国民を反逆罪で処分って結構あったから、多分あれがそうだと思う。・・・アイツが死んだ後、まるで元から決まっていたかのように一気に世界は復興していったの。ナナリーちゃんが言ってた。ルルーシュの執務室に、今後起こるだろう問題に関する対応策が書かれた書類が大量に置かれていたんだって。ブリタニアだけじゃなく、他国のものも。勿論日本のものもね。超合集国に保管されていたコピー見せてもらったけど、扇さん、それをしっかり利用してた」 カレンの言葉に、ナオトはますます眉間にしわを寄せ、話の半分も解っていないだろう母は、それでも困ったように眉を寄せた。 「しっかり遺産は使っておきながら、不都合が起きれば全てルルーシュのせいにするのよ。扇さんも最初はそうじゃなかったんだけどね。ルルーシュのためにも日本を平和で豊かな国にするって言ってたのに、たった10年であそこまで変わっちゃったの」 そう、たった10年で変わったのはスザクだけではない、扇もだった。 あのルルーシュの行動を見て、黒の騎士団に残る資格はないと、藤堂、千葉、玉城、南、杉山は黒の騎士団から脱退した。ラクシャータとカレンもそれを望んだが、二人は世界最高の第8世代KMF紅蓮聖天八極式の製作者とパイロットだったため、抜けることを許されなかった。星刻も総司令の座を降りようとしたのだが、総司令の座につけるほどの人材が他にいないと判断され許されることはなかった。 だが、扇だけは自らの意志で黒の騎士団の副司令の座に居座った。 しかし、日本の復興のために日本の指導者にという話が舞い込むと、超合集国の承諾を得る前に副司令の座を降り、日本の新たな首相として立った。 ほとんど事後報告と言っていいほどの早さだったため、カグヤも呆れてしまい、このような礼儀にかける男は必要ないとあっさり承認された。 南と杉山は扇に説得され秘書のような形で政界へ足を踏み入れた。驚いたのはあれだけ日本のトップに立つと口にしていた玉城だけは、扇の申し出に自分には無理だと断った事だ。 「で、カレンはどうしたらいいと思う?」 「決まってるわ。扇さんたちとは組まないでお兄ちゃん。ルルーシュは探すけど、居場所は教えちゃ駄目。ナナリーちゃんのことがあるから、ルルーシュは逃げ切れない。ルルーシュ言ってた。自分達は皇帝に捨てられたんだって。日本で死ぬことで、それを開戦の理由にし、宣戦布告するのが目的だったんだって。だから取引にはならないわ」 反対に、それを理由に軍を送り込むことはあり得る。 ルルーシュとナナリーの生死は関係ない。 皇族を誘拐し利用したという流れがあればそれだけでいいのだから。 「待ってくれカレン。皇帝は二人の父親だろう?親が子を開戦の切っ掛けにするために日本に送ったっていうのか?」 ナオトと母は驚いた顔でカレンを見た。カレンは不愉快そうに頷く。 「母親という最強の盾を失った子供は弱者になるの。弱者を虐げるのはあの皇帝のやり方でしょ?だからルルーシュは皇帝を許せなかったのよ。母親を暗殺した犯人も見つけず、障害を持つナナリーちゃんさえ日本に送ったから」 あり得ないだろうとナオトが顔をしかめた時、来客を告げるチャイムが鳴った。 |