閃光のように 第3話 |
KMFを奪いました。 どうやってかって? KMFに銃を向けられたのでギアスを発動。 傾国の美少女降臨。 良からぬ事を考えた男がコックピットから姿を現した! 男は美少女に瞬殺された! という事だ。 「なんだ、上を着るのか?」 「あ、あ、あっ当たり前だ!!こんな、は、はしたない!!」 KMFの座席に座り、顔を真っ赤にさせながら慌ててシャツのボタンを留めているのは私の共犯者。 ちなみに男だ。 先ほどの傾国の美少女でもある。 こいつに発現したギアスはなぜか性別が変わるというもので、ギアス発動中は男から女に代わるのだ。 しかも巨乳。 KMFを奪いたいというので、私が策を授けた。 馬鹿な男をたぶらかすには、悔しい事だが私よりも豊満な胸を持つこいつが適任だと、制服の上を脱がせ、一人荒れ果てた道に立たせてみたのだが、効果は抜群だった。 銃口を向けられ、一瞬怯えた演技をさせた後、なんと一つ一つゆっくりとシャツのボタンをはずさせたのだ! シャツのボタンはすべて外すのではなく、胸の所にある一つだけ止めた恰好だ。 胸の谷間がばっちり見える巨乳。しかもノーブラで、その体型より少し大きな男物の服を着、シャツのボタンは一つだけという事はもちろんへそ出し。自らそんな恰好をしているくせに、手は震え、羞恥で顔を赤く染め、胸元を気にしもじもじしている傾国の美少女で釣れない男はほぼ居ないだろう。 お前本当に男なのか?と私でさえ疑ってしまったのだから、ルルーシュに殴り飛ばされた軍人はこいつが男だとは夢にも思うまい。 恐ろしい素材を発掘してしまったものだ。 シャルルが見たら即嫁にするだろうな。 息子だとは思わないだろうし、なによりマリアンヌ似。 あいつの好みドストライクだ。 だが残念ながらこの男は私が貰うと決めた。 男でも女でも美人に変わりはないし、何より面白い。 数百年生きると楽しいという感情が鈍ってしまうのだが、この男といると心の底から笑えるのだ。 こんな気持ちもまた数百年ぶりだった。 だからシャルルたちを裏切って本気でこいつに協力し、あわよくばV.V.からコードを奪ってこいつに渡し、その後私の嫁にしようと思うぐらい気にいってしまったのだ。 おかげで死にたいという欲求は現在お休み中だ。 あー楽しい。 こんなに楽しいのに死ぬなんてもったいないだろう。 腹を抱えて忍び笑いを漏らす私を気にも留めず、ルルーシュは制服の上もきっちり着込むと、ようやく一息ついた。 わたわたと動いていた男がようやく静かになったので、私も体を動かした。 この狭いコックピットは本来一人乗りだ。だから私は座席の後ろの狭いスペースに身を置いているのだが、正直狭くてこの体制はきつい。 だから上半身を前に乗り出す形に変えた。 この体制では丁度私の胸がルルーシュの頭部に当たる。 私の長い髪がルルーシュの体に落ちる。 正確にいえば、わざと胸を押しつけている。 なにせこの程度の接触で耳まで赤くさせた男が可愛くて可愛くて仕方がないからだ。 ああ、面白い。 そんな状態だというのに、この男はしっかりとテロリストをいいように扱い、目的を淡々とこなしていった。 時折私の胸の存在を忘れて作業に没頭するのでぐいぐい押しつける。顔は真っ赤で照れている事は解るのだが、表情には一切出ない。 そんなこんなで作業の邪魔をしつつ傍観していると、いつの間にやら敵勢力を一掃することに成功したらしく、画面にはLOSTの文字一斉に点灯した。 この男、見た目だけではなく頭の中身も一級品らしい。 天は二物を与えずというが、こいつに関しては通じないらしいな。 そしてその後KMFを降り、お色気作戦を駆使しつつ敵の大将・・・この男にとっては腹違いの兄であるクロヴィスの元までたどり着いた。 扉の向こうにいる総督に停戦命令を出させる。 そして、母の暗殺に関する情報を手に入れる。 この男はそのために行くのだと言った。 「ならばさっさと行くぞ」 私はそう言いながらルルーシュの服に手をかけた。 突然の事に驚き硬直した男はハッと我に返ると顔を真っ赤にし、私の手を抑えにかかる。 「なななななっ、いっ、行けるわけ無いだろう!離せ!脱がせるな!!」 「何を言う。こんな無粋な一等兵の制服よりも、露出した美少女がお願いした方が聞き入れられるに決まっているだろう。さあ脱げ。ああ、安心しろ、お前の貞操は私が守ってやるからな」 私の物だから誰かに奪われる真似はしないさ。 「ふ、ふざけけるな!何で兄相手にそんな作戦を取らなければならないんだ!だ、大体お前、破廉恥だぞ!」 顔を真っ赤にし、はだけた衣服を両手でかき集めて肌を隠そうとする男をみて、ますます私は楽しくなってくる。 こいつは美人だが、こういう姿は可愛らしいな。 うんうん、まさに私好み。 「破廉恥か。お前若いくせにそんな言葉を普通に使うとは、流石私の見込んだ男だ」 そう言うなり私は上を諦めベルトに手をかけた。 「ええい黙れ!いいから手を止めろ!」 「・・・という経緯があってだな」 銃で脅して停戦させ、ブリタニア人イレブン問わずに救助するように命令を出したクロヴィスに、私は私の背後で座り込み、すすり泣いている人物について説明した。 ちょっとあの後やり過ぎたらしく、思春期の少年の心に軽いトラウマを植え付けてしまったようだ。 今後楽しむためにも反省しておこう。 おかげで泣きやまないわ、帰ると言ってきかないわでここまで引きずってくるのも大変だったのだ。 「・・・一つ聞いてもいいかな、コードRの実験体」 銃口を向けられたままだというのに、クロヴィスは今にも立ち上がりそうな姿勢で私に聞いてきた。 「私の事はC.C.と呼べ」 「ではC.C.。その、今の話から推測するに、彼は私の弟、ルルーシュなのかね?」 困惑した表情でクロヴィスが確認してきたので、私は頷いた。 「正真正銘お前の腹違いの生意気な弟ルルーシュだ。運良く、というよりも頭が良かったことが幸いし、マリアンヌを殺した犯人の手もかいくぐり、ここまですくすくと成長してくれた」 C.C.が肯定した途端、クロヴィスは勢いよく立ちあがると、銃を持つC.C.などもう眼中にないと、C.C.を押しのけ暗がりで小さくなっているルルーシュに駆け寄った。 「ルルーシュ!!」 すすり泣くその背に手をかけ、名前を呼んだ。 「・・・兄さん・・ぐすぐす」 こちらに背を向けて座り込んでいた学生服の少年がハンカチで口元を押さえ、はらはらと涙を流しながら顔を向けた。 その姿に、クロヴィスの心はものの見事に撃ち抜かれ、瞬く間に超ブラコンへと姿を変えた。 ブリタニアの皇族は美形揃いではあるが、ルルーシュのそれは群を抜いている。 美形を見なれたクロヴィスでさえ、弟だというのに胸が高鳴ったのは仕方のない事だ。 艶やかな黒髪に至高の紫を宿した瞳、透き通るような白い肌。 そしてマリアンヌ后妃の面影を強く残したこの容姿! これはまちがいなくルルーシュ! 他人の空似やクロヴィスを懐柔させるために整形をして潜入したスパイという可能性は兄の本能という物で華麗に乗り越えた。 そして、あの時守れなかったルルーシュとナナリーは私が守らねば!!という使命感に燃えた。 「ルルーシュ、可哀そうに。もう大丈夫だ。私がお前を守ろう!」 クロヴィスは完全に凹んで我を忘れて泣いているルルーシュを抱きしめた。 「兄さん・・・ありがとうございます。ですが、ブリタニアには俺たちを殺そうとする者が・・・ぐすぐす」 「彼女の話を信じるなら、父上も関わっているようだね。当然か。足が不自由で目も見えないナナリーと、お前の二人をこの国に留学させ、帰国させることも無く開戦させたのだから、そう言う意図を持っていたのだろうね」 今まではルルーシュとナナリーが死んだ原因は日本人にせいに違いないと考えていたクロヴィスだったが、あっという間に考えを改めた。 最愛の弟、ルルーシュの言う事が嘘のはずがない! 超ブラコンは完全に盲目になっていた。 「ああ、クロヴィス。お前の所の親衛隊と放置したKMFのパイロットやその他もろもろの一般兵の事なんだが・・・あいつらは皆、ルルーシュを襲おうとしていたんだ」 忘れていたという様にC.C.は言った。 声は淡々としたものだったが、この状況が楽しすぎて、魔女の笑みとは到底思えないような、にやにやと緩みきった笑みを口に浮かべていた。 「それは本当かい!?ルルーシュ、どうなんだい?」 軍にも宮廷にもその手の話はあった。確かにこれだけ美しい容姿だ。手を出そうとする者がいても何もおかしくは無い。 クロヴィスはさっと顔を青ざめ、嗚咽を漏らすルルーシュが答えるのを辛抱強く待った。 「親衛隊は・・・ぐすっ、俺を守ろうとした親友を撃ちました。そして俺も殺そうと・・・C.C.が庇ってくれなければ俺も死んでいました」 「な・・・なんだと!?」 自分の部下が行った事に、クロヴィスは思わず怒鳴り声を上げた。 扉の向こうでようやく異変に気付いた者たちがロックのかかった扉を開けようとしており、クロヴィスを呼ぶ声も聞こえ始めたのだが、クロヴィスは「煩い!今は大事な話をしているんだ!誰も中には入ってくるな!!」と、怒鳴りつけ「イエスユアハイネス」という返事っと共に静かになった。 これで当分は邪魔者も入ってこないだろう。 「ルルーシュ、どうして親衛隊がお前を殺そうとしたんだい?」 既にシンジュクゲットーせん滅作戦の事は頭から飛んでしまったのか、真剣な表情で質問した。 お前のせいだろうこの鳥頭がと、C.C.は表情にこそ出さないが、内心笑い転げていた。 「俺を、テロリストに仕立て上げ、ぐすっ、全ての罪を押し付けるつもりだったんです・・・ぐすぐす」 ハンカチを握りしめ、ルルーシュは俯きながらそう言った。 ぽたぽたと滴り落ちる滴と相まって、美しい絵画のようにも見えるから恐ろしい。 実はクロヴィスはさっきから創作意欲を掻き立てられまくりなのだが、愛する異母弟の一大事と、その気持ちを押し殺していた。 落ち着いたらルルーシュとナナリーをモデルに絵を描こうと心に誓っている。 「それだけじゃないぞ?ルルーシュは見ての通りの美少年だからな、私を撃った後あいつらはルルーシュの美しさに気づいたんだ。下卑た笑みを浮かべ、野獣の目でこいつの体をなめまわすように見て、じりじりとこいつを壁際まで追い詰めていたんだぞ」 いろいろと脚色しながらC.C.はさも忌々しいと言いたげな表情でそう呟いた。 口元は笑いがこらえきれず歪んでいるのだが、クロヴィスは気づかなかった。 「ほ、本当なのかいルルーシュ」 無事だったのかい!? 何て事をあの馬鹿どもは!! 「ぐす、ぐす、よく覚えていません。ただ壁際に追い詰められて、このままでは危険だと思って、それで・・・」 「火事場の馬鹿力という奴だ。運よくそいつらは銃を仕舞い、ベルトに手をかけていたからな、蘇生した私と共にどうにか気絶させることに成功し逃げ出した。だがその後もお前の兵士達はこいつを見るなり目の色を変えて襲ってきてな」 それはギアスで女になっている上にきわどい格好をさせたりしたからだが、襲われかけたのは嘘では無い。 C.C.の言葉でその時の事をまざまざと思い出したルルーシュは再び眦に涙をためた。 くっ、女性というだけであれほど周りが危険になるなんて! 男は皆狼とはこういう事か! ああ、ナナリーごめんよ。 俺の認識が甘かった。 愛らしいお前の周りは狼だらけに違いない!! お前を守るためにはもっと警戒しなければ。 ついそんな思考に浸ってしまったルルーシュが否定しなかったことで、それを真実だと受け止めたクロヴィスは、そいつら全員地獄を見せてやると烈火のごとき怒りを燃え上がらせていた。 「兄さん。ブリタニアという国がある限り、俺とナナリーは父上たちに狙われ続けます・・・母が、庶民だったというだけの理由で・・・っ」 目を真っ赤にはらせ、悔しさを滲ませ呟いたその言葉に、クロヴィスは息をのんだ。 「俺は、こんな世界認めない。たとえどんな血筋であれ、暗殺される心配のない平和な世界を作りたい。ナナリーが差別されること無く、幸せに生きられる世界が欲しい」 「ルルーシュ・・・」 「俺は、ブリタニアの敵です、兄さん。俺は必ずブリタニアを・・・ぶっ壊す!」 強い意志を宿したその言葉に、超ブラコンと化したクロヴィスは真剣な顔で頷き、魔女はその二人に背を向けながら笑いをこらえていた。 |