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「来たわねC.C.」 あの頃と変わらない姿で彼女は言った。 マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア。 かつて第98代皇帝シャルル・ジ・ブリタニアの騎士、ナイトオブラウンズ、ナイトオブシックスとして戦場に身を置き、シャルルの思想に共感の意を示した事でシャルルとV.V.に同士として認められ、シャルルの妻、第6皇妃となった女性。人の心を渡るギアスを持ち、死の直前にそれが発動。マリアンヌ暗殺現場に居合わせたアーニャの心に潜み生き伸びたが、神の意思…いや、息子の願いの力で消え去った。 人の心を渡り歩けるならば、それもまた永遠の命といえただろう。 宿主を次々変えていけば死ぬことはないのだから。 だから私は僅かではあるが彼女に気を許していたのだと今なら解る。 「何の用だ? 急いで来いなんて、何かあったのか?」 教団の司祭と同じく大きなフードで顔を隠しながらやって来た私をマリアンヌは別室へ招き入れた。教団のものたちはそこまでは付いてこない。マリアンヌ相手に警戒する必要が無いからだ。 だからあっさりと、私たちは二人きりになった。 今ではアンティークと呼ばれる調度品で整えられた部屋の中央には、お茶の席が用意されていた。なんだ?またシャルルの愚痴か?痴話げんかに私を巻き込まないでくれ、今はそれどころじゃないんだからな。私は今自分が置かれている状況を把握したいんだ。 これが夢でないならば、時間が巻き戻った事になる。 あるいは、よく似た別の世界か。 まったく知らない道の場所。 落ち着かない。 数百年住み続けた古巣を追い出されたような気持ちだ。 「あのねC.C.、相談に乗ってほしい事があるの」 暖かな紅茶を含みながらマリアンヌは言った。 人生相談にせよ、夫婦の問題にせよ、子育てにせよ、答えられる物には限界がある。特に子供関係はC.C.も多くの経験を積んだとはいえ、自分の腹を痛めた事はないのだから、経験者以上の答えは出せない。 「なんだ?」 「ルルーシュの事なの」 「…お前の息子がどうしたんだ?」 「親の私が言うのもなんだけど、あの子は私に似て頭がいいわ」 お前が想像する以上に賢く育つぞ?と思いながら相槌を打つ。 「このまま順調に育てば、あの優等生よりも賢くなると思うの」 マリアンヌの言う優等生はシュナイゼルの事だ。 皆が望む事を望むままに叶え、誰からも親しまれ高い評価を得ている第二皇子。人は理想をシュナイゼルに求め、シュナイゼルはそれを叶え続けている。そんな生き方をマリアンヌは否定し、嫌っていた。 「なるほどな、良かったじゃないか」 将来、シュナイゼルは宰相となる。 もしマリアンヌが死なず、ルルーシュが国に残ればシュナイゼル以上の地位を得ることが可能かもしれない、ということだ。まあ、あのキツネがそう簡単に弟に負けるとは思わないが。 「…そうね、良かったわ。将来の事を考えても、才能がある方がいいもの」 マリアンヌは一瞬言い淀みながらそう言った。 「…傀儡は賢くない方が都合がいいか?」 言いながら、私は自分の言葉に傷ついていた。 あいつを傀儡などと言いたくはないが、今この時代の私にとって、いや私たちにとってルルーシュは道具だった。私はこの呪いを押し付けるための生贄として。マリアンヌは新たな神を生み出す剣としてルルーシュを見ていた。 見ていたはずだった。 だが、マリアンヌは、私の発言に驚き、その後再び何か考えたあと息を吐いた。おかしな反応だった。 「マリアンヌ?」 「いえ、そうね、傀儡。ごめんなさいC.C.、何でもないわ」 「何でもないようには見えないが?」 「C.C.、その話はいいわ。今は私の話を聞いてほしいの」 ぴしり、と話を止められた。 自分の思い通りに事を進めたい彼女らしい反応だ。 もしかしたら、子供たちと暮らすうちに人並みに母性が目覚めたのかもしれない。ここはそういう世界なのかもしれない。そうであってほしいと思うが、彼女の本質は変わらないだろう。一時的な気まぐれの可能性のほうが高い。私は結末を知っている。これから先の未来で彼女に言われる言葉を知っている。期待をするだけ無駄だ。 ああ、未来を知っている事がこれほどつまらないとは。 不老不死の身で生きるのもつまらないが、これはそれ以上だ。 だが、未来を知るという事は未来を変えられるという事でもある。 よし、今回はルルーシュとナナリーを日本で保護しよう。 ついでにあのくるくる頭もだ。 あの三人が年老いて死ぬまで見守ると今決めた。 戦争に参加させるつもりはない。 人並みの幸せでいい。 あいつらは世界平和の為に命をかけた。 生き残った者は生き地獄を味わった。 あんな生き方をまたする必要無い。 三人が笑って暮らす未来があってもいいじゃないか。 神が私を過去に戻したとしても、その目的などどうでもいい。 私は、私の好きに生きる。 「あの子、作家としての才能もあるのかもしれないの」 「……………悪いが聞き取れなかった。もう一度言ってくれないか?」 「ルルーシュには物語を作る才能があると思うのよ」 だめだ、聞き直しても同じような事を言ってくる。 なんだ? 何の話だ? いや、別に物語を作る才能ぐらいあるぞアイツは?英雄ゼロなんていう虚像を作り出したぐらいだからな??いや、だからそれが何なんだ? 物語を作る才能と私に何の関係がある? 日々馬鹿にしている芸術家肌のクロヴィスと同種になってほしくないからどうにかしたいという話か?それにしては妙だぞ? あのマリアンヌらしからぬ言葉に、C.C.は困惑していた。 |