夢の終わりに

第 8 話


「なあルルーシュ、おじさん疲れた」

俺はもう限界と言わんばかりにぐったりと、車いすの背もたれに寄りかかりながら呻いた。疲れる、疲れた。

「なあリヴァル。若輩者の俺も疲れたんだが」

車椅子に押し込まれて、座っているだけじゃん、らくじゃんと言いたいが、その顔は本気で疲労している事が見えて、人波の中にいるだけでも疲れるよなぁ、あー限界か―限界だよねー俺も限界と白旗を振った。
そして、未だ元気にはしゃいでいるもう一人に視線を向ける。

「どうしたの二人とも、見てよ凄いね!うわー僕にもできるかなぁ!?」

まるで幼い子供のように目をキラキラさせている姿に、おい、見飽きたって言ってたよな?俺の聞き間違いじゃないよな?飽きてるんならもう帰ろう!?と思うのだが、とてもではないが見飽きているとは思えない様子で口に出す事が出来なかった。
子供だ、子供がいる。
童顔でふわふわした見た目のせいか、あれ?こいつ小中学生なんじゃないかと一瞬錯覚してしまうが、どう考えても自分より身長もあるし、筋肉もある成人超えたいい大人だ。

「楽しそうだな、スザクは」

呆れたような口ぶりだが、その表情は嬉しそうにみえた。
まあ、気分としては小さい息子や弟を連れて歩いているってのが一番近いから、疲れてきついが、嫌な疲れではないし、あーそんなに楽しいなら思う存分楽しめ!おじさんももうちょっと頑張るからな。と、ちょっとだけ思ってしまう。ちょっとだけな。

「ほんと、よくテンション持つなって俺は感心してる」
「全くだ。スザクはこの手のものは見飽きていたはずだが、どうやら違ったようだ」
「あ、知ってたんだ」

スザクが言うはず無いよな?こいつの情報網どうなってんだよ?

「先ほどの芸人たちから少しな。前一緒に演じた時も、周りを見て回ったりせずに終わったらさっさと帰っていたと言っていた。以前と違い、とても楽しそうだとも」

年不相応なほど落ち着いているイメージだったのに、今のスザクは反対に幼く見えて、でも20代前半なんてこれが普通だよなと、男たちは笑っていた。きっと友達と一緒だからだともいっていた。

「以前と違って、楽しいか。そういえば、スザクと初めて会った時も、あいつつまらなそうな顔してたもんな」
「そうなのか?」
「愛想笑いは上手かったけど、俺の目はごまかせないぜ?」
「お前の観察眼もなかなかだな、先ほど女に騙されかけたとは思えない」
「褒められている気がしないんですが?しかも何よ、騙されかけたって」

何の話だよ、と不貞腐れて言うと、ルルーシュはきょとんと眼を見開いてこちらを見た。こういう顔すると、あー10代だな、子供だなって思う。

「おまえ、まだ気づいていないのか?お前に助けを求めてきた女、お金を落としてなんかいないし、あの後警察にも行っていないぞ?お前から金を巻き上げるために、哀れな女を演じていた詐欺師だよ」
「え?えええ?」

なにそれ?何の話ですか??え?あの、さっきのあの彼女が詐欺師で、俺、金を取られかけてた!?え?まじですか?うわー世の中信じられねー!!でも、ルルーシュがそんな風に言うという事はそれが事実だからだ。こいつは無駄に人を貶める発言はしないし、今この場で嘘を吐く理由なんて全くない。あー俺騙された。くやしー!

「なになに?何の話?」

パフォーマンスを見終えたスザクがにこにこと尋ねてきた。
頼む、それが事実なら言わないでくれルルーシュ。
親切な俺かっこいいエピソードとして今夜酒を飲みながらスザクに自慢しようと思ってたけど、これ話したら呆れられるパターンだったんじゃないだろうか?きっとそうだ、そうに違いない。うわー恥をかくとこだった!

「リヴァルがまた女に騙された話をしていた所だ」
「え?またなの?リヴァル、もうちょっと人を見る目を養ったらしいよ?」
「ひどっ!お前ら酷くないか!?」

また?俺はそんなに頻繁に騙されてたか?いやそんなはずはないぞ!?ないよな?無いと言ってくれたのむ。

「俺は事実を言っただけだ」
「僕は君が心配なんだよ、リヴァル。君は人が良すぎて騙されやすぎる」

ああそうだろうそうだろう。腹黒の二人に比べれば俺なんか、純真無垢で穢れを知らない乙女レベルの騙され安さだろうさ!

「まあ、それがリヴァルのいい点でもあるんだが」
「馬鹿にされてるようにしか聞こえません!!」
「褒めてるんだよ」
「うんうん、リヴァルはそのままでいいよ。・・・でも、もう少しだけ騙されないようにはしてほしいけどね」

君の事が心配だからさ。と、年下二人に同情の視線を向けられた。
おかしいなぁ、絶対おかしいって。
俺、ふたりよりず~~~っとず~~~っと年上なのに、むしろ俺がこの世界での最年長だと思うのに、何この世間知らずの手のかかるおっさん扱い。冗談きついよ。世間の荒波のもまれ、苦労に苦労を重ねて生きてるんだから、二人よりずっといろんな経験あるのに。あー納得できない!でも、そうやって心配してくれるのもまた気分がいいから、俺は「わかった、わかった。もっと警戒するようにするって」と笑って言った。

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