いのちのせんたく

第 181 話


「コーネリア皇女殿下とヴィレッタを警戒するのはわかるよ。とくにコーネリア皇女殿下は白兵戦でもかなりの手練だと聞いている。でも、黒の騎士団の三人は武術の心得でもあるの?」

相手が藤堂達だったらスザクも警戒しただろう。
だが相手は扇、玉城、南の三人だ。もともとは戦闘訓練の経験など無い民間人のテロリスト。コーネリアとヴィレッタ相手と比べたら制圧は簡単に思える。それにあちらにはユーフェミアのような非戦闘員もいないため、人質の問題もない。どう考えても負ける要素がなかった。
それは全員の意見が一致している。

「藤堂さんたちが行くと、僕たちと・・・ブリタニア軍人と行動するのではなく、自分たちのところに戻ってこいって話になるだろうし、それが原因で争いになるのが心配?」

スザクは、違うかな?と小首をかしげながらルルーシュに聞いた。

「そうだな。そして、こちらで動けるブリタニア軍人がお前しかいないことを悟られる恐れがある」

正確にはクロヴィスとセシルもいるがどちらも非戦闘員だ。
あくまでもこの場所がブリタニア軍人との共同拠点であり、武力では絶対に勝てないという前提があるから扇たちはこの場所に来ないのだ。それを覆される可能性はゼロではない。

「・・・なんだ。おまえたちはそんなことを心配してたのか」

C.C.は呆れたように言った。
どうしてここまで話が長引くのか理解できなかったがそういうことかと息を吐く。
そもそも、黒の拠点に向かう最適な人材が一人いるのだから、向かうなら藤堂ではなくその人物だろうに。

「コーネリアのもとには、藤堂・卜部・ラクシャータ・カレンで向かうのは賛成だ」

カレンの代わりにクロヴィスが行くのも面白そうだが。と魔女らしい笑みを口元に浮かべながら言った。

「卜部、あちらに行ったら例のブリタニア軍人と接触し、黒の騎士団の拠点の確認に加われないか訪ねてみるといい。おそらく了承するだろう」

その言葉で、卜部はその手があったと頷いた。

「軍人?ヴィレッタか?」

だがそれは、と、ルルーシュは眉を寄せた。
これは、ヴィレッタが女性だからというのではなく扇の関係を知っているからだ。二人の関係を考えれば、2つの拠点が結びつき、場合によっては扇たちがコーネリア達のところに向かいかねない。それは危険だ。仲間を殺すような男がいるメンバーを女性だらけの場所に活かせるわけには行かない。

「いや、ヴィレッタではない」

当たり前だろうとC.C.はきっぱりと否定した。
その様子に永田はハラハラとし、クロヴィスと卜部はC.C.の話を静かに聞いていた。5人目の幽霊の存在は、まだ皆に知らせてない。隠し通すことは不可能だから。いつ話すかの選択権は魔女に委ねていた。

「・・・誰だ?」

コーネリアを動かすはずがない。となれば、選択肢がない。

「今、この島には、私が確認しているだけで死者が5名いる」

ざわりと、あたりがざわめいた。作業をしながら話を聞いていた者たちの手も止まる。この拠点にはクロヴィス、卜部、永田。あちらにはユーフェミア。いま開示されている死者は4名。

「ダールトンが今、あちらにいる」

ざわざわとざわめきが大きくなった。
当然だ。
とんでもないカードを隠していたものだと、ルルーシュは思わずC.Cを睨みつけたが、魔女は不敵に笑うだけだった。

「・・・なるほどな。だから、あちらの拠点はもう大丈夫だと言ったのか」
「いや?確かにダールトンの加勢はあるが、コーネリアはダールトンの存在に気づいていないだろう。気付かれないように注意を払っているようだからな」

ありえない話にざわめきが大きくなる。
もしダールトンがいるのであれば、真っ先にコーネリアの前に現れ、コーネリアのために動くだろう。ダールトンとはそういう男だ。

「ダールトンも見ていたんだよ。私達がまだあの場所にいた頃のことも、全て。だから、ユーフェミアの失望も知っている」
「失望?」
「敬愛する姉が、あまりに無能で横暴だった姿を見ていたわけだからな」

実際にその姿を見ていた女性陣は頷いた。

「私も、お兄ちゃんがあんなだったらぶん殴ってるかも」

カレンは思わずつぶやいていた。
もともと扇グループはカレンの兄のグループだった。自慢の兄だった。その兄があんな態度を部下にとっていたら・・・と思うと、ユーフェミアに同情する気持ちさえ湧いてくる。

「ダールトンはユーフェミアの事も見ていたし、その努力も目の当たりにしていた。だから姉妹の邪魔をせず、陰ながら助けることを選んだ。その協力者となるヴィレッタには姿を見せたらしいが」
「・・・ダールトンは協力すると?」
「する。・・・今回の雨も予知したのはユーフェミアだ。そしてそれを私達に伝えに来たのはダールトンだった。すべてを今まで見ていたダールトンはこの拠点のこともすべて見ていた。だが、その話はあちらでは一切されていない」

信用する価値はあるとC.C.は言った。別に無条件で信じているわけではない。おそらくだが、裏切るような人間はここに選ばれないのだろう。だから、クロヴィスとユーフェミアが望めば、ダールトンは間違いなく協力する。

「・・・ならばダールトンの強力が得られた場合はダールトン・卜部・スザク・ラクシャータで黒の騎士団の拠点に向かうこととする」

信じる理由が弱すぎる。だが、C.C.が無条件で誰かを信じるとは考えにくい。信じるに値する何かがあるのか、この島とコードに関わりがあるのか。なんにせよ、ルルーシュはダールトンではなく、C.C.の判断を信じることにした。

「じゃあ今度こそ決定ね。各拠点でやるべきこと、交渉するならどうするかも含め、雨の間に話し合いましょう」

肩の荷が下りたようなスッキリとした表情でラクシャータがそういった。



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なにかあるたびに他の拠点気にする会話をしてる気がしたので、さっさと拠点確認に向かわせることにしました。
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