まだ見ぬ明日へ 第110話 |
「考えたんだよ。二人に明日を迎えさせるにはどうすればいいのか。一番はコードの消滅だけど、これはどう足掻いても無理らしい。コードの数を減らす事も出来ないなら、どうすればいいか」 誰かに継承させるか? だが、この王はそれを望まない。 王が望まない限り、魔女もまた望まない。 「その結果、僕たちが出した答えが、これだよ」 スザクはそう言うと、自分の前髪を掻き上げた。 そこには、赤く輝くコードの紋章。 不老不死を示す赤い呪い。 「・・・なっ!」 スザクの額を凝視し、ルルーシュは驚きに息を呑んだ。 「神がいたあの遺跡でカレンが嚮主を抑えたんだけど、その直ぐ後に僕たちはコードを継承したんだ。そして、Cの世界でのやり取りを思い出した」 まあ、夢物語のような感覚だから、本当にあったことなのかは、今でも正直自信はないんだけどね。と話すスザクの額を呆然と見ている魔王の肩をポンポンと魔女が叩いた。 「驚くのはまだ早いぞ?そっちを見ろ」 C.C.が指さした方にはにこやかに笑う生徒会メンバー。 胸元を広げたミレイの左乳房。 シャーリーの右太もも。 リヴァルの右腕。 カレンのウエストの左側。 ニーナの背中。 彼らは文様の浮かび上がった部位を、王の眼前にさらけ出した。 「・・・」 その瞬間、魔王は完全に硬直した。 予想通りすぎる反応に、皆は安堵する。 2千年以上生きた彼だが、あまり変わっていないようだ。 「・・・そうなるだろうな。私も思考が完全に停止したからな」 ははははは、と渇いた笑いをこぼしながら、C.C.は言った。 「ロイドとセシルにラクシャータ、ジェレミアとアーニャ、咲世子にカグヤも持ってるぞ。ああ、当然だが、ロロとマオもだ」 15人。 私たちを入れて17人だな。 「15人・・・だと?まて、その人数は!」 C.C.が示した数字に、ルルーシュのフリーズが解けた。 15 その数字は、二人にとって重要な意味を持っていた。 C.C.は今までの表情から一変し、慈愛に満ちた優しい笑顔で告げた。 「更に残念なお知らせだ。私たちが長年探し集め、眠らせていた我らが同胞は、今回の件で全員天寿を全うした」 今頃、Cの世界にいるよ。 コード能力者の末路。 確かにこの体は死からも回復する不老不死の体だが、このコードは心までは癒してはくれない。C.C.が自分の中に管理者である自分を作り出しているように、人であった頃の記憶封じ生きていたように、長い時を生きるには人の心は弱すぎた。 地獄のような苦しみによって、あるいは生きていながら体が自由にならない状況に陥って・・・死んだと判断され地の底深くに、あるいは自然災害で生き埋めになったり、海底深くに沈み浮きあがれなかったり、破壊できないほど強固な容器に押し籠められたり。要因は様々だが、そのような状態に陥った場合、確実に精神は壊れる。 心を病み、正気を失えばコードは正常に発動しなくなる。 ギアスを授けることもできない、ただ生きるだけの肉の塊。 病んだ精神を抱え、永劫の地獄をさまよう同胞。 彼らを見つけ出し、黄昏の間の奥深くで安らかな眠りを与えていた。 それが、15人。 「神の遊戯の目的は、あの時代を再現し、あの時代と同じ人物を誕生させること。お前が愛した者たちを、お前の周りに集めること。そして、永劫を共に生きたいと願った者にコードを継承させること・・・だそうだ」 神の命を断とうする愚か者を無力化した時点で、黄昏の間にいたものがコードを継承する仕組みだったそうだ。なにせともに行きたいと願ったものは多い。だが、彼ら全員を継承者にするほどのコードはない。だから、あの場にたどり着けた者に再優先で権利が与えられる。 自ら動くことも出来ないコードが眠る、あの黄昏の間に。 ああ、まだP.P.のコードは残っているから、このままだと後一人増えるかもな。 「・・・意味が・・・解らないんだが」 今の話から、なぜ不老不死にという結論が出るんだ。 「ルルーシュとC.C.さんって何処か似てるでしょ」 思考とか言動とか。 世界に対する物の見方とか。 彼らの話が事実なら、この状況の元凶であるミレイは、明るく笑いながら言った。 「俺がこのピザ女とか!?」 あり得ないと言いたげに睨みつけるが、ミレイは平然と受け流した。 「だから、スパイスを混ぜることにしたのよ。二人きりの閉じた世界で生きるより、私たちと面白おかしく生きましょう!」 ルルちゃんを混ぜないと、お祭りも盛り上がらないのよ。 ただ静かにひっそりと息を殺し時を重ねるのではなく。 愛する者たちと共に、永劫の時でも楽しい人生だと感じられる未来を。 魔王と魔女が遠い昔に失った、明日という日を生きるために。 それが、神(わたしたち)の選んだ未来。 その未来を、明日を作り出すために。 平穏な世界を最悪の兵器を用いて消し去り ほぼ全ての生命を根絶やしにし Cの世界に記録された皇歴1年をダウンロードし 生命を 世界を再構築した。 神だからこそできる、世界のリセット。 世界の、初期化。 そこまでして人類は、この優しい王に明日を贈りたかったのだ。 自らの命をかけ、人類に明日を与えたこの王に。 永遠の命となっても、人々の明日を願い、神を敵に回してでも人々の未来を取り戻そうとした魔王に。 二人が明日を迎えて、始めてわたしたちも本当の明日を迎えられるのだと。 ルルーシュが神に幾度と無く囚われたのは、ルルーシュの行動を抑制するための苦肉の策。そうでもしなければ、何度もリセットしなおさなければならなかった。ルルーシュが人々に異常なほど愛されていたのは、Cの世界の住人が、優しい王を愛していたから。Cの世界での記憶と、Cの世界の影響がもたらした結果。 あの後、響主は言った。 「神よ!その命を終えたいと願うならば、我々を救え!!」 その言葉に、神は反応した。 やはり神は我々と変わることを望んでいるのだと、嚮主は笑みを浮かべたが、そんなことを望んでいないことを知っている者たちは、道化の姿に哀れみの視線を向けた。 彼らは地獄に落ちていた者達。 死んでもなお、自分たちの考えを変えること無く、生まれ変わったなら今度こそ願いを叶えると言い続けていた。 彼らを地の底から出したのは、この場を整えるため。 彼らから向けられる眼差しに言い知れぬ不安を感じたその直後、響主・皇帝・皇妃は姿を消した。 神がペンドラゴンの玉座へと移動させたのだ。 あの場から逃れることに安堵したのは一瞬。 だが、そこにはシュナイゼルがいた。 エリア11を制圧しているはずの、シュナイゼルが。 「ようやくお戻りですか。残念ですが父上、ゲームは終わりました」 ロイヤルスマイルを浮かべた第二皇子は、突然姿を表した3人に驚き戸惑っている兵士達に、皇帝・皇妃・響主を捕えるよう命じた。 神が選んだ場所は敵の只中。 それは神が死を否定しているという事を示していた。 「な・・・何だこれは、シュナイゼル!!」 「わかりませんか?クーデターですよ、父上。貴方に王たる資格は無い」 皇帝がここを離れてすぐ、シュナイゼルはクーデターを起こしていた。 あとは皇帝を手中に収めれば終わり。 秘密裏にそこまで事を運んでいた。 捕縛された皇帝を見下ろした後、優雅に玉座に座り宣言した。 「皆、良く聞きなさい。今この時より私が、ブリタニア皇帝だ」 この瞬間、99代皇帝シュナイゼル・エル・ブリタニアが誕生した。 「というわけで、今後どのような政策をすすめるべきかな?ああ、植民地政策は廃止したからね。貴族制度も廃止する予定だよ」 気がつけば、シュナイゼルまでこの部屋に来ていた。 新皇帝として就任したばかりのシュナイゼルが。 「シュナイゼル・・・」 「兄上、と呼びなさいルルーシュ」 昔のようにね。 その言葉で、魔王は再び思考を止めた。 「・・・おい腹黒皇子。お前、いつ記憶が戻ったんだ?」 この男は黄昏の間にいなかったし、第一今回クーデターを仕掛けたのだから、記憶が戻ったのはそれなりに前のはずだな? その問に、シュナイゼルは満足気に頷いた。 「以前、ユーフェミアの件でスザクを尋ねた時にね。驚いたよ、私の最愛の弟がそこにいたのだから」 魔王が凍っていなければ、誰が最愛だとわめいた所だろうが、残念ながら完璧に凍結中だ。凍り過ぎて呼吸が停止しかけているが、まあ死なないだろう。呼吸がおかしくなっているその背をさすりながら、C.C.はシュナイゼルを睨みつけた。 「ああ、魔女殿。P.P.のコードは私がもらいますので、そのままにしておいてください」 さっさとブリタニアの改革を行い、やる事を終わらせた時には、帝位をクロヴィスに譲りますので、その時まで保管していて下さい。 「後ろから操る気満々だな。さすが腹黒皇子だ」 「そんな事は無い、クロヴィスはいい王になる。兄上や姉上よりずっとね」 ああ、ユーフェミアは論外だからね。今のナナリーはユーフェミアそっくりだから、こちらも論外だよ。 C.C.はそんな胡散臭い笑みを浮かべたシュナイゼルを睨みながら、さてどうしようかと考えた。 はっきり言ってうざい連中が多すぎる。 ロイド・セシル・ジェレミア・アーニャ・ラクシャータ・咲世子は連れて行ってもいい。 特に咲世子はピザのためにも欲しい。 ルルーシュは口うるさいが、咲世子はきっと笑顔で作ってくれるだろう。 当然ロロとマオもだ。 100歩譲って生徒会メンバーもいいだろう。 だが、他は・・・いらない。 とくに横にいるくるくる頭がうざい。 次に腹黒皇子がうざい。 欲しい人員だけかっさらって逃げるか。 体力馬鹿と腹黒相手だとなかなか難しいが・・・・。 そこまで思考を巡らせて、C.C.は気がついた。 自分が、心の底から楽しげな笑みを浮かべた事に。 停滞していた心が揺れ動くのを感じる。 生きながらに死んでいた。 二人きりの変化の無い世界。 人と交わることの許されない異形の生物。 今までは二人だけだった化物がこれだけ増えたのだ。 嫌でも変化は起きる。 もしかしたら、まだまだ増えるのかもしれない。 「C.C.、君いい加減そこどいてよ、狭いから!」 背中をぐいぐいと押し、ソファから退かせようとする男を睨みつける。 今までは、全て終わるまでルルーシュに嫌われる訳にはいかないというCの世界からの指示で、その感情全てにブレーキが掛かっていたらしいが、目的を達した今、Cの世界からの制御はなくなり、我慢する必要も無くなったのだという。 ルルーシュは俺のものだ! そう無言のままにこちらの感情をぶつけてくる。 やはりくるくるはいらない。 「ならお前がどけろ。これは私のものだ、気安く触るな」 「断る。やっと再会できたんだから、これからは思う存分一緒に居るつもりだよ。あ、そうだ忘れてた。扇に君たちのことをどうやって忘れさせたかって話だけど、答えは君の絶対遵守のギアスでそういう命令をしたからだよね?じゃあ、当てた褒美に、君の唯一の騎士の座を返して貰おうかな」 いいよね、ルルーシュ? にっこり笑顔を向けるが、残念ながら魔王は未だフリーズ中だ。 周りの音など一切入ってない。 ああうざい。 非常にうざい。 やはり二人きりの方が良かったなと、C.C.は穏やかな笑みを浮かべながら嘆息した。 完結してから気づいたこと。 ナナリー出すの忘れてた。 きっとナナリーは再会した瞬間全てを思い出し、P.P.のコードをシュナイゼルと奪いあうと思います。 以上、ルルーシュ生存(V.V.コード引き継ぎ不老不死)、神(全人類の意志)による世界リセット後全員転生した再構成話でした。 こんな長い話にお付き合い下さりありがとうございます。 以下はここまで読んでくれたおまけ?として、どうでもいい最終設定。 本気でどうでもいい内容です。 ・どうしてルルーシュとC.C.が最後ゼロレク時の衣装だったか。 シナリオが完全に破綻したため、強制的にシナリオをゼロレクまですっ飛ばした。 ルルーシュが胸を撃たれて死亡したのも再現。 シャルルとマリアンヌがいたのも、神根島での再現。 あの場にはゼロスザクと悪逆皇帝が揃い、ゼロレク関係者も揃ってます。 ルルーシュとC.C.が来ることはわかってたため、カグヤ誘拐の時点でシナリオは切り替わってます。 ちなみに、スザクは悪逆皇帝唯一の騎士で親友という補正で、万が一あの場所にいなかったとしても、必ずコード継承する事になってました。 ・ギアスについて 所持しているギアスとは別系統のコードを手に入れると、ギアスは消滅しないという偽造設定。 ルルーシュはC.C.からギアスをもらいV.V.のコードを継承。 スザクはL.L.、ロロはV.V.、マオはC.C.からギアスをもらい、別系統のコードを継承したため、4人共ギアスを持ったまま不老不死に。 他のメンバーはギアス無しからのコード継承なのでギアスは使えません。 ・記憶について。 敵側記憶持ち→V.V.(ただし未来の予言だという致命的な勘違い) 再会時点での記憶持ち→・マオ・ロロ・ロイド・セシル・ラクシャータ・アーニャ 特定条件後の記憶持ち→・ジェレミア(改造後)・咲世子(特区宣言後)・シュナイゼル(チェスでの再会後) ロイドとセシルは最初から装置があるためマオは記憶に気づけず。 ジェレミアはキャンセラーを、咲世子は装置入手後だからこちらも気づけず。 マオが動いた時は既にシュナイゼルはブリタニア。 ラクシャータとアーニャも装置持ち。 あまり考えずに書いてるから、ミスってる場所あるかもしれませんけどね。 この話はC.C.出す予定も、転生もの、ましてや再構成ものになる予定はなく、普通にキャラを置き換えるだけだったのに、どうしてこうなったんだろうね。 マオがC.C.の名前を出した時点でおかしくなった気がする。 |