異世界冒険譚 第6話


目が覚めたら、知らないような知っているような、何処かで見た事があるような天井が見えた。素材がむき出しの質素で、どこか粗い作りの木製の天井。
寝起きのせいか目がかすみ、頭が呆けている。どこで見たのか思い出せない。

「気がついた?」

女性の声が、すぐそばで聞こえた。

「・・・っディアナ!?」

そこには、以前知り合った女性が心配そうな顔でこちらを覗き込んでいた。
ディアナ王女。
以前彼女を守ろうとする意志に召喚され、異世界に紛れ込んだことを思い出す。
どうにか元の世界に戻り、そして、全てを終わらせたはずなのだが・・・。

「無理はしないで。召喚後から今までずっと眠っていたんだから」

こんなこと今までなかったとディアナは不安そうだった。

「召喚後・・・?」
「理由はわからないけど、今回はサーヴァントとしてあなたを召喚してしまったの・・・ごめんなさい、また巻き込んでしまった」
「気にしなくていい。君のせいではない」

サーヴァント。つまり彼女の召喚魔として、この世界に。
話を聞けば、どうやら蜃気楼とともに召喚されたようだ。
何者かの意志で呼び出されたのが前回で、今回はディアナの集めた石で召喚されたわけか。笑えない事態だ。

「それにしても、ゼロ。あなたその格好・・・」

言われて、気づく。
今の自分のその姿に。
ああ、そうだったなと思い出す。

「ディアナ王女。今の私はゼロではありません」
「え?」
「ゼロは次なるものへ受け継がれました」
「ゼロを、継承した?」
「私はもう、正義の味方ではいられないから」

あのときは黒い衣装をまとい、仮面をかぶって顔を隠していた。だが。

「私は悪逆皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。魔王と呼ばれた、悪の皇帝だ」
「ルルーシュが、魔王?悪?」

あの世界ではもう全ての役目を終えたこの身だが、彼女には恩がある。彼女を守る何者かが、俺の力を必要だと考え呼び出したのならば、今しばらく付き合おう。彼女を苦しめるこの世界を壊し、平和な世界を作るために。

「そう。魔王だから、世界を壊し、世界を作る。俺に出来るのはそれだけだ」
「えと、よくわからないけど、協力してくれるということでいいの?」
「ああ、もちろんだ。さて、俺は何をすればいい?」

蜃気楼があるなら戦える。
今この世界の戦況はどうなっているのだろう。

「それなら、その、お昼ご飯を作ってもらえるかしら?」
「・・・お昼・・・」
「ルルーシュのご飯は美味しいから、みんな起きるのを待ってたのよ」

体が辛いかもしれないけど、いい?と控えめに聞いてくる。
いいだろう、世界の掌握のまえに、皆の胃袋を掌握してやろう。

「よし、では厨房はどこだ」
「私も手伝います」

こうして、元悪逆皇帝ルルーシュの異世界冒険譚は再び始まったのである。

~完~

5話