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目が覚めたら、知らないような知っているような、何処かで見た事があるような天井が見えた。素材がむき出しの質素で、どこか粗い作りの木製の天井。 寝起きのせいか目がかすみ、頭が呆けている。どこで見たのか思い出せない。 「気がついた?」 女性の声が、すぐそばで聞こえた。 「・・・っディアナ!?」 そこには、以前知り合った女性が心配そうな顔でこちらを覗き込んでいた。 ディアナ王女。 以前彼女を守ろうとする意志に召喚され、異世界に紛れ込んだことを思い出す。 どうにか元の世界に戻り、そして、全てを終わらせたはずなのだが・・・。 「無理はしないで。召喚後から今までずっと眠っていたんだから」 こんなこと今までなかったとディアナは不安そうだった。 「召喚後・・・?」 「理由はわからないけど、今回はサーヴァントとしてあなたを召喚してしまったの・・・ごめんなさい、また巻き込んでしまった」 「気にしなくていい。君のせいではない」 サーヴァント。つまり彼女の召喚魔として、この世界に。 話を聞けば、どうやら蜃気楼とともに召喚されたようだ。 何者かの意志で呼び出されたのが前回で、今回はディアナの集めた石で召喚されたわけか。笑えない事態だ。 「それにしても、ゼロ。あなたその格好・・・」 言われて、気づく。 今の自分のその姿に。 ああ、そうだったなと思い出す。 「ディアナ王女。今の私はゼロではありません」 「え?」 「ゼロは次なるものへ受け継がれました」 「ゼロを、継承した?」 「私はもう、正義の味方ではいられないから」 あのときは黒い衣装をまとい、仮面をかぶって顔を隠していた。だが。 「私は悪逆皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。魔王と呼ばれた、悪の皇帝だ」 「ルルーシュが、魔王?悪?」 あの世界ではもう全ての役目を終えたこの身だが、彼女には恩がある。彼女を守る何者かが、俺の力を必要だと考え呼び出したのならば、今しばらく付き合おう。彼女を苦しめるこの世界を壊し、平和な世界を作るために。 「そう。魔王だから、世界を壊し、世界を作る。俺に出来るのはそれだけだ」 「えと、よくわからないけど、協力してくれるということでいいの?」 「ああ、もちろんだ。さて、俺は何をすればいい?」 蜃気楼があるなら戦える。 今この世界の戦況はどうなっているのだろう。 「それなら、その、お昼ご飯を作ってもらえるかしら?」 「・・・お昼・・・」 「ルルーシュのご飯は美味しいから、みんな起きるのを待ってたのよ」 体が辛いかもしれないけど、いい?と控えめに聞いてくる。 いいだろう、世界の掌握のまえに、皆の胃袋を掌握してやろう。 「よし、では厨房はどこだ」 「私も手伝います」 こうして、元悪逆皇帝ルルーシュの異世界冒険譚は再び始まったのである。 ~完~ |