異世界冒険譚 第5話


~いろいろあって元の世界に戻ったその後~

「「ルルーシュ!!」」

クラブハウスで朝食をとっていると、学生服姿のスザクとカレンが駆け込んできた。
やっと元の世界に戻り、ナナリーと幸せなひとときを過ごしていたというのに。
いや待てカレン。病弱設定はどこにやったんだ?どこをどう見ても黒の騎士団の元気いっぱいな紅月カレンじゃないか?

「のんびり朝食食べてる場合じゃないわよ。ちょっとついてきて!」
「え、ええと、もしかして、カレンか?」

このバカが!学園ではおしとやかなお嬢様なんじゃなかったのか?ここにはナナリーも咲世子もいるんだぞ!俺も、お前の素は知らないはずだろうに!

「え?あ、そ、そうよ。あの、これ変かしら?イメチェンしようかと思って」

ようやく気づいたらしいカレンは、いつものお嬢様設定をはじめた。が、その努力はあっという間に壊される。

「今そんなことしても意味ないだろ。どうせこれから黒の騎士団のアジトに行くんだから」
「あ、それもそうね」

あっさり紅月に戻ったカレンは、スザクに同意した。
いいのかそれで・・・いやまて。

「黒の騎士団の、アジト、だと?」
「黒の騎士団って、テロリストの、ですよね?どうしてお兄様が?」

当然の疑問をナナリーが投げつけると、ああそうだったとスザクが言った。

「君の料理はゼロになんて負けないってことを証明しに行くんだ」
「だから、ルルーシュなんかよりゼロのほうが料理上手なのよ!いい加減認めなさいよ!」
「いや、ルルーシュのほうが絶対に上だ。君はルルーシュの料理食べたことないだろうけど、僕は何回も食べているからね」

こちらを置いてけぼりにして、喧々囂々と言い合いを始めた二人の後ろからひょっこり顔を出したのはC.C.で、その顔はニヤニヤと楽しげな笑みを浮かべていた。

「C.C.さんですか?」
「久しぶりだな、ナナリー。お前も来るか?」
「なっ!?」
「世話係の咲世子も一緒に来たらいい。なにせ、ルルーシュとゼロの料理対決だ。これをみないなんて、ありえないだろう?」

ゼロだ!ルルーシュだ!と言い合う二人に聞こえないようC.C.に耳打ちする。

「どういうことだ?」
「どうもこうもない。どっちの料理が上かであの二人はもめ続けているんだよ。扇や玉城たちも耳にして、ゼロの手料理を食べたいと、あちらでも大騒ぎだ」
「どうして止めなかった」
「どうして?止める必要があるのか?」
「おまえは・・・」
「どのみち、私が何を言っても止まらないよ、この二人は」

これだけの言い合いに発展した時点で、傍観以外に手がないことは否定できない。だが、カレンがテロリストだと暴露したり、ナナリーと咲世子の前でこんな話をするのは止められたはずだと睨みつけても、魔女は楽しげに目を細めただけだった。

「ちなみに、ピザ対決だ」
「お前が焚き付けたな」

C.C.は関係ないと思った俺が馬鹿だった。主犯はこいつだ。間違いない。
あの世界では材料も道具も用意できなかったから、ここで作れということか。

「ルルーシュ。君は僕が守るから大丈夫だよ」
「あのね。私たちはそこらへんのテロリストじゃないのよ。正義の味方なの。一般人に危害加えるわけ無いでしょ。ゼロだって許さないわ」

まあそれはそうだろうな。
ナナリーに危害を加えたらギアスをかけて地獄に落としてやる。

「じゃあいこう。咲世子さん、ナナリーをお願いします。お二人も僕が守りますから」
「スザクさん、本当に大丈夫なんですか?」
「もちろんだよ、ナナリー。ルルーシュの料理がゼロよりも美味しいことを、彼らにも理解してもらおう」
「はい。お兄様の料理は世界一ですから。ね、お兄様」
「当たり前だ!よし行くぞスザク!」

ここで引けばスザクとナナリーに恥をかかせることになる!ならば!ルルーシュがゼロよりも料理の腕が上だと証明してみせよう!

「くくくっ、さて、楽しみだな?」

ナナリーのお願いにころっと意見を変えたルルーシュの背中を見ながら魔女は笑った。

~END~

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