王者は誰だ 第1話   

『レディ~ス ア~ンド ジェントルマン!アッシュフォード学園体育祭にようこそ!
今日は快晴、絶好の運動日和よ!みんな今日は張り切っていきましょう!』

元気いっぱいに、マイクを片手に話をするのは、生徒会長ミレイ・アッシュフォード。
演台の上には生徒会役員である、シャーリー、リヴァル、カレン、スザク、ニーナ。そして副会長のルルーシュ。他のメンバーは運動しやすい体操着を着ているのに、ルルーシュだけは白のスーツを身に纏い、豪華な椅子に座っていた。
それだけ見れば、絵本から飛び出してきた王子様がそこに座っている図、なのだが、そんな素敵な物ではない。
全身白の衣服を身に纏った麗しの姫・・・じゃない王子様は、その椅子に革のベルトで両手足と体を縛り付けられていた。
何故か首には黒の首輪が付いており、首輪の前には大きな金色の鈴。そして、その首輪からは長い銀の鎖が伸びていて、その鎖の先をミレイが当然と言う顔で持っていた。
そんな状態のルルーシュはと言うと、頭を項垂れているので表情は見えないが、縛られているこの状況で、身動き一つしないのはおかしい。明らかに意識がない。
生徒会のメンバーは、それをちらちら横目で見てはいるが、その説明をする気配は今の所なかった。
だが、この現状の意味を、ルルーシュを除く生徒会役員だけは知っていた。
普段黒い服を着ることの多いルルーシュの、白いスーツ姿と縛られている姿と言う有り得ないこの状況に、あちらこちらから黄色い声や野太い声が上がっていて、カレンは内心穏やかではなかった。
カレン・シュタットフェルト。またの名を紅月カレン。日本最大のレジスタンスグループ、黒の騎士団親衛隊の零番隊隊長にしてエースパイロットである。
そんな彼女が、まるで崇めるかのように心酔し、付き従い、守っている存在が居る。

黒の騎士団の総司令官ゼロ。

そして、そのゼロの正体が、今ここで縛られ、意識をなくしている副会長、ルルーシュ・ランペルージなのである。
些細なことから、ゼロの正体がルルーシュだと知ったカレンは、C.C.と共に学園内でも主にスザクからルルーシュを守っていたのだが、今日は無理かもしれない。
ごめん、ルルーシュ。でも私、頑張るから。病弱設定を捨て、ゼロ、貴方を守ります!!だって、今日は!

『今日の体育祭はいつもとは違うわよ~!クラス対抗ではなく、なんと個人戦!しかも学園の生徒以外の参加もOK!!このアッシュフォード学園敷地内を使ったサバイバル☆レースを行います! 知力、体力、時の運!全てにおいて秀でた者が頂点に立つのよ!そして!優勝した方にはなんと!我が校の誇る、麗しの生徒会副会長ルルーシュ・ランぺルージに、1回だけ貴方の願いを叶えてもらえる超豪華特典付き!! 早い話が優勝賞品はルルーシュよ!』

その言葉に、黄色い悲鳴と野太い声が辺りに響き渡り、地面が揺れるほどだった。

『あー、でも、内容は生徒会の許可が必要って制限は付くけど、手編みのマフラーを作ってもらうも良し、ルルちゃんの絶品手料理を満喫するもよし、な~んとデートも有よ!』

おおー!!という声が再び辺りに響き渡る。地面だけではなく、校舎が揺れている気がするのは、気のせいだろうか。
こんな大声が響いていても、ルルーシュが目を覚ます気配は無い。やっぱり薬を盛ったのかしら?そう言えば、誰が着換えさせたの?まさかスザクじゃないわよね?
学園内外に、隠れ親衛隊やファンを大量生産しているルルーシュが賞品と言う事で、皆の目が欲を宿しギラギラと輝き始めていた。
ルルーシュの人気は凄まじい。男女関係なく引き付けるその美貌は、学園の生徒の大半を虜にするほど。
ゼロを始めてから陰りや憂い、神秘性が増してしまい、その人気はうなぎのぼりだ。
当の本人は、全くその事に気が付いていない超鈍感人間な所も、人気を高める要因だったりする。
カレンは、自分の横に立ち、にこにこと、人のよさそうな笑顔を振りまいているスザクへと、ちらりと目を向けた。
顔は笑っているが、目は完全に獣だ。ルルーシュを手に入れようとする者たちへの嫉妬と独占欲が滲み出ている。
その嫉妬と独占欲が、学園内でルルーシュを守る剣となってはいたのだが。やはり、こういう機会を逃す男ではないか。今日は親友の仮面を捨てて動くようだ。
いつもは穏やかそうなその瞳は、今は完全に欲に駆られた獣の色。はっきり言って怖い。でも、私負けないんだから!
カレンがぐっと握りこぶしを作り、そう決心したその時、雲ひとつない青い空に体育祭の開催を告げる花火が打ち上がった。
HTML表
2話