王者は誰だ 第11話   

わなわなと震えながら、スザクのスタンプを見ていたミレイは、足早にC.C.の元へやってくると、C.C.のスタンプを確認し、カレンのスタンプも確認した。
ようやく呼吸の落ち着いてきたC.C.はニヤリと口角を上げると、勝ち誇った眼差しでスザクを見た。

「やはりそうか。その可能性に賭けてはいたが、まさか本当にそうだったとはな。・・・残念だな枢木スザク。私の、勝ちだ」

え?
私は思わずスザクを見ると、スザクの顔色が明らかに悪くなっていた。
何?どういう事?

『えー、訂正します!優勝は黒の騎士団C.C.、準優勝は同じく黒の騎士団紅月カレンです!』

楽しげに言うその内容に、地響きのような歓声と怒声が響き渡った。
え?え?どういう事?

「だから言っただろう、諦めるなと。可能性はゼロじゃないのだから、ちゃんとゴールはしておけ。スザクのゴールの後、いつまでたってもお前が呼ばれないから、焦ったぞ。まあ、スザクに気づかれる前にゴールで来たのだから、問題は無いが」

そう言いながら、私が持っていたペットボトルをひょいっと取り上げると、C.C.はその水もごくごくと喉を鳴らして飲んだ。

『C.C.さん、これ、気づいてたの?』

心底驚いたような表情で、ミレイはC.C.を見つめると、C.C.はにやりと笑った。

「第三関門、だろう?」
『・・・そう、第三関門。知ってたの?』
「可能性の問題だ。私が辿りついた時すでに、スザクは教師の横にいた。さて、あれは既に告白し、スタンプをもらった後か?それとも、前か?邪魔者の排除を優先させた可能性は?あれだけの行列だ、律儀に並んで告白した後と考えるより、告白前と考えられる。では、正気を取り戻した時、カレンとはかなり距離が離れている状況で、スザクは慌てることなく、その関門を自分はまだクリアしていない事に気づくだろうか?」
「え?それって!?アイツ、あの後スタンプ貰わないで追いかけてきたの!?」

私は慌ててミレイの手にあるスザクのプレートを覗きこんだ。
ホントだ、3のスタンプが・・・無い。
このスタンプは、10の枠内にスタンプを押すタイプではなく、1~9のスタンプが用意されていて、それを空いている場所に押す形のもので、押し忘れていても、解りにくいのだ。

「よくやったぞカレン、スザクをあそこまで凹ませたのはお前だろう?アレのおかげで勝てた」

そう言うと、C.C.は立ち上がり、勝ち誇った笑みをスザクに向けた。
眉根を寄せ、スザクはC.C.を睨みつける。

「下種な欲などに突き動かされた結果だな。愚かだよ、枢木スザク。・・・さて、ミレイ。優勝賞品であるルルーシュに望みを叶えてもらうぞ、いいな?」
『え?ええ。どんな内容かしら?生徒会の許可必要だからね?』
「問題無い。ルルーシュ、今すぐにピザを用意しろ!腹が減った!ピザだ、ピザを出せ!ピザ○ットで済ませるなよ!当然手作りだ!私の腹を満たす量を作れ、今すぐに!ああ、お前が作り終わるまではピザ○ットのピザを食べながら待ってやるから、新製品のLを2枚大至急注文しろ!さあ、生徒会の許可を出せカレン・シュタットフェルト!」
「え?ええ!私、生徒会役員カレン・シュタットフェルトが許可を出します!」

C.C.の勢いにのまれたカレンは、その場で<生徒会の許可>を下した。




体育祭翌日の夜、黒の騎士団のアジトには、仮面を外したルルーシュがそこに居た。
ここに居るのはルルーシュの正体を知ってしまった幹部だけなので、服装も黒のスラックスに白のシャツとエプロンと言う、一見彼がゼロだとは解らない格好だ。
昨日用意しただけでは足りないと強請るC.C.と、ルルーシュに料理を教えてもらおうと思っていたカレンの要望で、開き直ったルルーシュは、アジトでカレンに日本の料理を教えながらC.C.のピザを焼き、当日自分を守ろうと、危険を顧みず動いてくれた騎士団員をねぎらう為夕食の用意もしていたのだ。
ルルーシュの容姿に関しては、頬を染め、ちらちら目で追う者もいるが、カレンとC.C.、藤堂とラクシャータががっちりガードしているので、下手な事を言い出す者は居なかった。
ようやく食事の用意が整い、全員がテーブルに着くと、C.C.はパクリと至高のピザを口にしながら、どうしてあの内容で俺の身が危険なんだ、と未だ全く解っていないルルーシュに説明を始めた。

「つまりだ、ニーナは男性恐怖症だろう?だから、男共は自分の願いを叶えさせるためにニーナに立ち会いをさせ、軽く脅せば簡単にOKが貰える事を知っている。言質さえ取って録音すれば、もう変更は利かないし、時すでに遅し、だ。許可を出したニーナは、仕方がなかったのよ。とか、あんな内容にしたミレイちゃんが悪い。とか何とか言って私は悪くない、と逃げて終わりだ。ルルーシュがどんな目にあっても、自分に責任は無いと言い続けるだろうさ。自分がひどい目に会うのは嫌だが、他人がどんな目に会おうと、どんな思いをしようと関係ない。その原因が自分でも、責任は他人にあると言い切るのがあの女だろ?ホテルジャック事件のときに押収したカメラにも、日本人相手にイレブンと言って煽る姿が残っていたしな。ユーフェミアが皇女だと名乗りを上げ、その身を危険に晒した原因が自分の発言だなんて微塵も考えていないだろうさ。スザクとカレンは生徒会役員だから、自分で許可を出して終わりだ。だから、どんな願いでも必ず許可が下りることになる。あれが、<私達の許可>や<私の許可>といった、ミレイや複数人が許可を出す事を前提にしていたら問題なかったかもしれん。特にミレイが絡めば、下手な内容は即却下だからな。あとは、皆の前で願いを言う事も必須だ。あいつらは人前で言えない、とか、ゆっくり考えたいので後で、と言ってルルーシュとニーナと自分3人になれる状況を作り、願いを言うつもりだっただろうしな」
「だからといってどうして俺が危険なんだ。・・・まあ、いい。それより、スザクが危険だと言う理由はなんだ?俺がゼロだと気付いたわけではないんだろう?」
「その点は大丈夫だルルーシュ君。スザク君は全く気付いていなかった」
「完全にゼロを狙ってではなく、ルルーシュを狙ってたもの」

ルルーシュの問いに、藤堂とカレンが答えると、なら余計に意味が解らないとルルーシュは眉間にしわを寄せた。

「まあ、気にするな。あんな事、ミレイは二度とやらないだろうし、アレの危険性を生徒会だけではなく、ここに居る者も知ったんだ。それだけで私は十分さ」

不満げなルルーシュと、それでいいのかしら?と、眉根を寄せるカレン。
これはこれからも大変ねと、苦笑いのラクシャータと、同意する藤堂。
こんな美味い飯は久々だと、会話など聞かず夢中になって食事を進め、大皿に山のように乗っている鶏の唐揚げを奪い合う幹部。




ふむ、とC.C.はピザを頬張りながらその様子を見ていた。
しかし、なんだろうなこの状況。
カレンが黒の騎士団だと言う事をあれだけ言ったのに、普通に学園に通うし、当たり前のように周りに受け入れられているようだ。
スザク個人と学園内で堂々とルルーシュの奪い合いはしていても、ブリタニア軍が動く様子は無い。 ルルーシュも騎士団にこんな風に受け入れられている上に、ブリタニアの連中は誰もルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと結びつけていない。
気にする私がおかしいのだろうか?と、ルルーシュへ視線を送ると、お前の言いたい事は解っている、と言いたげにルルーシュは視線を返してきた。
まあそうか。昨日あの後、ありえない、ありえないだろうと、私の話を聞き、尚且つ体育祭の映像を見ながら、青い顔で呟いていたのだ。
今朝、徹夜をしたルルーシュは目の下にクマを作りながら断言した。


間違っているのは俺じゃない!世界の方だ!と。


ああ、間違っていない、お前は何も間違っていないぞルルーシュ。私もそう思うぞ。
原因は解らんが、影響を受けていないのがコードを持つ私とギアスを持つルルーシュだけと言う所は気になる。
だが、考えるだけ無駄だ。ならばこの状況、今後利用するべきだろう。

やはりお前だけは私の・・・いや、何があっても私だけは、お前の傍に居るからな。安心しろルルーシュ。
C.C.は決心を新たに、ピザを齧った。



皇帝も出して皇帝優勝
シャルル「今日からお前が新たな皇帝だ」
ルルーシュ「断る!」
そして規模を大きくした黒の騎士団VSブリタニアのルルーシュ争奪戦。
そんなのも考えていたけど、皇帝出すタイミングが全然なかった。
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10話