本当と嘘と 第14話

「結局、ルルーシュの端末も、僕の携帯も壊れていなかったってこと?」
「そうなるな。ルルーシュのはともかく、お前が自分の表示も壊れていると思っていたのは意外だったよ」

蓬莱島のゼロの私室で、スザクとC.C.はルルーシュ手作りの昼食に舌鼓を打ちながら、今もスザクの手にある携帯に備わっている機能の話をしていた。
この二人は基本的に犬猿の仲で、互いを避ける傾向があるのだが、ルルーシュに関わる話題だけは気が合うらしく、こうして二人きりになった時は大抵ルルーシュが絡む話題となっていた。
話題の中心であるルルーシュはナナリーのリハビリの為、護衛の咲世子とロロとともにラクシャータの元へ行っていて、ここにはいない。どうやらラクシャータの治療でナナリーの足に回復の兆しが見え、ここ数日ルルーシュはそちらにかかりきりだった。
スザクとナナリーに関しては、黒の騎士団員の中には敵対心をむき出しにしているものも居るので、基本的にゼロの私室で寝起きを共にしていたが、さすがにこの人数では寝床にも困るからと、近いうちにゼロの邸宅を作り、そちらに咲世子・C.C.・ロロも連れて移動する予定だ。

「だって、僕はルルーシュを売った事でラウンズになったわけだし、ルルーシュの監視の最高責任者で、ナナリーの暗殺を命じられていたんだよ。ルルーシュに恨まれておかしくない状況だから、ルルーシュの表示が(*´v`*)だなんて、間違いだとしか思えないじゃないか」

流石のスザクも、ルルーシュが嬉しそうにスザク専用の団服のデザインを考え「スザクは黒より白が似合うんだが、どうすればいいんだ」と真剣に悩み「なんだ枢木スザクは黒は似合わないのか」というC.C.の挑発に「スザクはどんな色も似合うに決まっているだろう!」と反論し黒い衣装を楽しげに、しかもルルーシュ自らミシンを引っ張りだし、全て手作りで制作している姿を見てしまった以上(*´v`*)が正しい表示だと疑う余地はなくなった。
その様子を思い出したスザクの顔が、だらし無く緩んだため、ルルーシュ手作りのピザを口にしたC.C.は、呆れたようにスザクを見た。

「幼かった頃のお前はあの兄妹に心の底から好かれていたからな。今のお前がどんな行動を取ろうと、あの二人のお前に対する好感度は常に上限いっぱいまで上がったままだ。そうだな、あの機械が測定できる好感度が100までなら、あの二人がお前に向ける好感度は100を軽く超えて200とか行くんじゃないか?だから多少下がったところで表示は変わらないし、時間が経てばスザクなら仕方がないかと、許してしまい元に戻る。まあ、ナナリーが絡めばルルーシュの好感度は一気に下るだろうから、一時的に(*´v`*)ではなくなることもあるだろうが、あくまでも一時的だ。だから私としてはあの二人が今でも(*´v`*)なのは当然だろうなとしか言えない。あの兄妹は歪んでいるから、お前に対する執着は異常だ。再びお前を手に入れた今、あの二人はお前を簡単には手放さないぞ?いいのかお前は」
「ん?いいよ?僕も、もう手放す気はないし。要するに、ルルーシュとナナリーは僕の物だってことでしょ?」

かなり重い話をしたつもりなのだが、この男はさも当然のように受け入れ、そう言い切った。
ユーフェミアの件で蟠りは多少あるようだが、そもそもの原因は皇帝で、V.V.が皇帝側の人間な上にマリアンヌ暗殺の主犯だと知ったことで、ユーフェミアの乱心は皇帝のギアスかV.V.の仕業かもしれないという結論に達したらしく、以前のような恨みを込めた視線でルルーシュを見ることはなくなった。むしろルルーシュの端末が今この場にあれば、スザクの表示は間違いなく(*´v`*)に変わっているだろう。
そういえば、執着はルルーシュとナナリーよりスザクのほうが上だったなと、C.C.は予定外にやって来たこの邪魔者を排除するのは難しいかと嘆息した。ルルーシュとナナリーは二人きりで世界が完結している所があるが、その世界に唯一混ざれるのがスザクだ。今の発言からも分るように、逃げられなくなったのはルルーシュとナナリーかもしれないが、まあ、あの二人もそれが当然と受け入れそうだ。奪われ続けたせいなのだろうか?本当にこの三人の互いへの執着は恐ろしい。
嘘のない世界を否定したスザクは、私の予想をはるかに超えるほどあっさりと、こちら側に寝返った。
まあ、あの端末のおかげで、ブリタニア内は未だ内部分裂が起きており、端末の回収と、携帯から機能の削除が行われているという。だが一度知ってしまった他人の心と、それを簡単に、しかも自分だけ知るという甘美な誘惑に囚われてしまった者も多いらしく、なかなか事態は収束しないようだ。スザクのように、嘘のない世界に恐怖し、皇帝の考えには賛同できないと黒の騎士団に入団した元ブリタニア軍人も多いようだ。そんな中に元ナイトオブラウンズのジノとアーニャもいるし、ギアスキャンセラーというものを身につけたジェレミアも居る。
これは私しか知らない情報だが、ギアスキャンセラーの性能を知るためと、皇帝のギアスが掛けられたものが混ざっている可能性も考え、ジェレミアはキャンセラーをほとんどの騎士団員に掛けた。そのためアーニャに掛けられたシャルルとマリアンヌのギアスが解け、マリアンヌの心は消滅した。カレンのギアスも解けたが、スザクはルルーシュに頼んで、ギアスは解除しなかった。
ルルーシュは解除したいとスザクを説得していたが、あの危険な状況でさえスザクを生かそうとしたルルーシュの願いを消したくないと拒み、その結果ルルーシュが折れたのだ。呪いだと言っていたくせに、寝返った途端に願いと言い切り、ルルーシュがくれた物を奪うなら許さないとジェレミアに言ったその欲深さに、C.C.は呆れて物も言えなかった。
ナナリーに掛けられたシャルルのギアスが解けたことで、ナナリーの記憶と視力が戻ったことにルルーシュは涙を流して喜んでいたし、スザクがV.V.を知っていたことで、マリアンヌ殺害犯がV.V.だと解ったのはこの時だ。
ブリタニアが内部分裂している今が好機と、黒の騎士団だけではなく、各国も動きだした。シャルルの天下も、もしかしたらそう長くはないかもなと思いながら、ルルーシュとナナリーが自分を溺愛し、執着していることを喜んでいる、一見まともそうに見えるが歪みきった男を見つめ、まあ、ルルーシュとナナリーが幸せになれるなら別にいいかと、既に冷めたピザを口に入れた。



その後、混乱しきったブリタニアを収める新たな皇帝として、鬼籍に入っていたルルーシュが指名され、それもまた黒の騎士団VSブリタニアの戦いの火種となった。
シャルルとV.V.の幽閉と、コード無効化の研究、ブリタニアの貴族階級の廃止、エリアの開放などルルーシュの望みをすべて叶えることを前提に、第99代皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが即位し、ナイトオブゼロとして枢木スザク、ナイトオブワンにC.C.、ナイトオブツーにジェレミア・ゴットバルト、ナイトオブファイブにロロ・ランペルージ、ナイトオブエイトに紅月カレン、ナイトオブイレブンに篠崎咲世子が就任し、後の世でブリタニア黄金期と呼ばれる時代が訪れたという。

13話