黒猫の見る夢 第14話 |
「・・・C.C.」 「煩い、黙れ。もう全て暴露してしまった。お前が何を言っても、もう遅い」 「遅いじゃないだろうが!!言っていい事と悪い事があるぞ!しかもあの話」 大半が嘘じゃないか!! 作戦行動を取りながら、通信機を通し演説を終え、ホッとした時、突然C.C.は暴走し、全世界に放送されている電波に乗せて色々と暴露してくれたのだ。 しかも止めようと電話をかけると、煩い黙れと一方的に切られ、電源も落とされてしまった。内心怒りを抱きながらも、どうにか作戦を終え、ようやくゼロの部屋で合流できたのだ。被っていたゼロの仮面を脱ぎ捨て、ルルーシュはソファーに座り、その顔に怒りを乗せながら、目の前で平然とした顔でピザを頬張っているC.C.を睨みつけた。 「何を言っているんだ。ほぼ真実だろう。響団のデータをお前も見ただろう?ブリタニアの皇族は響団の実験のため何度もデータを取られ、ルルーシュとナナリーは遺伝子まで操作されていた。マリアンヌ暗殺時にナナリーは足も目も奪われたが、本当はその現場にナナリーは居なかったのに、偽装のために足と目を奪われた。理由も嘘ではない、力を強める可能性があるからだ。だが、開戦間近の日本に二人は送られ、死亡したとルルーシュが偽装し、ブリタニアから隠れて生きていた。ブラックリベリオンで二人とも連れ戻されたが、シャルルの力でルルーシュは身も心も完全に壊れた。ジェレミアは実験体とされ、一時は会話も出来ないほどだった。瀕死のルルーシュを枢木スザクは献身的に看病し、一命を取り留めた。そして私がそれを奪い取った。ナナリーはお前自ら奪いに行った。なぜなら移動にCの世界を経由する事にしたからだ」 な?ほぼ真実だろう? 「嘘だとしたら、研究に積極的だったのはマリアンヌとV.V.で、マリアンヌの精神は生きていたという事だな。アーニャと言う娘にとり憑いて。・・・まあ、もういないが」 C.C.がギアス響団へ秘密裏に潜り込んだ時、ギアスキャンセラーと言う人工ギアスを手に入れたジェレミアがそこにいた。戦闘になるかと身構えたC.C.であったが、C.C.の目的とルルーシュがゼロとして戦う理由を知ったジェレミアは、ルルーシュを主とし、仕える事を望んだ。 そしてキャンセラーを使い、ルルーシュは人の姿へ戻る事が出来たのだ。 人の体で目を覚ましたのは人の心のルルーシュで、猫の心はそのまま人の心へ吸収された。そのため、猫であった頃の記憶も、感情も、ルルーシュは全て自分の物として受け入れていた。 ギアス響団の研究員とギアス能力者にルルーシュは、ギアスに関する全ての事を忘れるよう絶対遵守のギアスをかけ、そこにあった全てのデータを回収し、異変に気付いたのだろう、響団へ戻って来たV.V.をジェレミアとC.C.で押える事が出来た。ギアス響団関係者全員にギアスをかけた事で、ルルーシュのギアスは成長し、V.V.からコードを奪い取ることに成功したのだ。 再びゼロとして黒の騎士団に戻ったルルーシュは、咲世子の協力も得、あのブリタニアへの宣戦布告の放送時、ゼロとして咲世子とジェレミアを伴いCの世界を経由し、ブリタニアへ乗り込み、ナナリーを救出したのだが、それに気がついたマリアンヌがアーニャの体を乗っ取り襲いかかって来た。 だが、その場にいたジェレミアによって、マリアンヌのギアスが解除され、その魂も死を迎える事となったのだ。 救出されたばかりのナナリーは今、ゼロの居住エリアで咲世子と共にあの放送を見ている。ゼロ=ルルーシュと言う事はまだ伏せているため、ルルーシュがこうして既に回復している事は、まだ知らせていない。こうなればルルーシュとナナリーに対する同情も利用するしかないというC.C.の判断で、壊れたルルーシュはゼロの居住区内の別室に隔離されている事となっている。今ここにいるゼロ=ルルーシュと知っているのは、咲世子、ジェレミア、C.C.、カレンのみである。 「ルルーシュ様、あまりそう興奮されては体に障ります。まだ貴方様の体は衰弱しておりますゆえ」 スザクのおかげでどうにか歩き回れる程度には回復しているが、本来ならベッドで絶対安静していて欲しいほど弱っているのだ。作戦は成功し、ナナリーを取り戻せた今、ルルーシュには今すぐにでも床に入ってほしいとジェレミアは訴えていた。 「ああ、解っている。すまないなジェレミア。もう少し話をしたら休ませてもらうよ」 C.C.へ向けていた物とは違う、穏やかな口調でルルーシュはそう言った。 つまり、まだ休むつもりは無いと言う事かと、ジェレミアは眉尻を下げた。 その時、ゼロの携帯が鳴り響き、ルルーシュは外していた仮面を被ると、その電話に出た。 「どうしたカレン」 『ゼロ、カグヤ様達が枢木スザクの件でおり行って相談したい事があると訊ねてきています』 「枢木スザクの?」 『はい、先ほどの放送でスザクの目的が、ブリタニア内部へ入り込み、日本を取り戻す事だったと、C.C.が証言しました。そのため、このままブリタニアにいれば、ルルーシュ殿下とナナリー皇女殿下のように実験体とされてしまうと、すぐにでも救出するべきだという意見が出ているようです』 「枢木スザクの救出か。だが、こちらが動いた所で大人しく来るとは思えないが」 過去にその手を払われたルルーシュは、その事を思い出しながら口にした。 『そうですね。ですが、もしC.C.の言葉が真実なら、例えナイトオブワンとなっても、スザクの目的は果たせません。それを理解してくれれば、もしかしたら・・・』 「わかった。カレン、会議室の用意を頼む」 『解りました、ゼロ』 通信を切ると、心配そうなジェレミアと不敵に笑うC.C.を連れ、ルルーシュは部屋を後にした。 ブリタニアは今、国民によるデモが始まっていた。 到る所で始まったそのデモは、やがて内乱の切っ掛けとなるだろう。 C.C.の話した内容は嘘だとマスコミは報道し、鎮静化を図ってはいるが、沈黙を守っていた箱庭の番人、アッシュフォードが動き、ルルーシュとナナリーがブラックリベリオン後姿を消したのは真実だと伝えた。 そしてナナリーが皇族に戻っている事も、ルルーシュとナナリーが自らを死んだものとし、アッシュフォードが用意した偽の戸籍で生きていた事も、全て伝えたのだ。 ナナリーの目と足が不自由だと言う事もすぐに知られた事で、信憑性も増し、かつて最も高い人気を誇っていたマリアンヌ皇妃の死の真相も明かされた事で、国民感情は一気に反皇帝派へと傾いていた。 ブリタニアの士気は低下し、こちらの士気は上がっている。 ナナリーは既にこちらの手に戻っている。 スザクは、必ずこちら側に引き入れる。 そう、攻め込むのは今。 一度は畜生に身を落とし、死んだ身。 そして、今は死ぬ事の無い不死の身。 回復するかも解らないこの体を気にするだけ無駄な事。 無理をした所で今はもう何の問題は無い。 俺には成さねばならない事がある。 ブリタニアの崩壊と、妹のナナリーが幸せに暮らせる世界を作ること。 不死の魔女をその呪いから解放すること。 そして、この人の心に取り込まれてしまった、子猫の願いを叶えること。 あの猫の夢見た世界はもう二度と手には入らない。 その夢は俺が目覚めた事で、永遠に失われてしまったから。 それでも、短い間しか生きられなかったあの子が、少しでも安らかな眠りの中でいられるように。 あの子が愛したスザクに、穏やかで幸せな人生を歩ませること。 それが、身勝手な俺の行為で生み出され、そして消えてしまったあの子へのせめてもの。 そのためにもまず、ブリタニアの崩壊を。 全ては、それからだ。 ゼロは前を見据え、幹部が集められたその会議室へと足を踏み入れた。 |