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青い海、白い砂浜、そして雲一つない青空。 まさに南の楽園と言えるその景色の中に、一つの人影があった。 それは、この景色にあまりにも不釣り合いな騎士服に身を包んだ男。 世界最大の国、神聖ブリタニア帝国、その皇帝の騎士の一人、ナイトオブセブン枢木スザク。 ナンバーズでありながら帝国最高位の騎士となった彼は、全ナンバーズの希望でありながらも売国奴と軽蔑される難しい立場にあった。 そんな彼が護衛のためでもないのに、海岸に立ち尽くしているというのは本来ありえない光景。 そして、当のスザクも、このあり得ない状態に驚き、立ち尽くしていた。 海岸に、砂浜?何で僕はこんな場所に!? 僕はエリア11政庁でナナリーの元へ向かうため廊下を歩いていたはず。 まさか白昼夢?いや、今までそんな経験したことはない。 足元の砂の感触も、磯の香りも、太陽の日差しも、この風も、全て現実だ。 まさかこれもギアスなのか!?一体誰の? 僕はこの場所を再確認するため、辺りを見回した。 背後にある原生林へふと目を向けた時、木々の間に何か影が動くのが見えた。 誰か居るのか?敵か?僕をここに連れてきた者かもしれない。 その影に警戒しながら近づこうと思ったその時、その影は砂浜に足を踏み入れた。 きょろきょろと辺りを伺いながら浜辺を歩くその姿に、僕は思わず息を呑んだ。 それは黒い学生服に身を包んだ、かつての友人。 なんで、彼が、ルルーシュがここに? 呆然とその姿を追っていると、こちらに気がついたのか、僕の方へ歩いてきた。 といっても、彼の足だ。 まだ黒い点にしか見えない距離だ、ここに来るまでに10分は掛かりそうな気がする。 彼が居るということは黒の騎士団が関係している可能性はある。 僕は、周囲への警戒を解くことなく彼に向かって歩き出した。 数分後、僕たちは再会した。 「まさかスザクと会えるとは思わなかったよ」 彼はいつも通りの友人の顔でニッコリと笑いかけてきた。 「僕もまさかこんな場所でルルーシュに会えるなんて思わなかったよ」 警戒していることを悟られないよう、会えて嬉しいというように、にこりと笑いかける。 心にもない笑顔を浮かべることに慣れてしまったのも、彼との学生生活が原因だ。 僕を裏切り、騙しながら友人の仮面をかぶっていたルルーシュ。 その彼を騙すために、今度は僕が嘘をつき、友達の仮面をかぶっている。 「なあ、スザク。お前はここがどんな場所か知っているのか?」 不安を滲ませながら辺りを見回すその姿に、恐怖や焦りは見られない。 やはりこれは彼が仕組んだものなのか? 「僕にもわからない。気が付いたらここにいたんだ」 君が大人しくナナリーと共に学園にいてくれたら、君がゼロにならなければ。 僕は昔のまま、君を疑うことなく、友達として笑っていられたのに。 「お前もか。俺も気がついたら向こうの海岸にいたんだ」 君はこんな事でも僕に嘘をつくのか? 「あれ?でも君、あっちの森にいなかった?」 その僕の言葉に彼は驚きの顔を向けた。やはり疚しい事があるのか? 「確かに森にもいたが、お前、こんな遠くから見えたのか?」 「へ?」 その顔に見えるのは純粋な驚きと、疑いの眼差し。 「いや、いくらお前が人並み外れているといっても、それは流石に無いだろ」 「何言ってるんだよルルーシュ、あのぐらいの距離なら見えるだろ?君だってすぐわかったよ?」 「見えるわけ無いだろう!!俺は黒い点にしか見えなかったぞ!!」 「え?君、僕だってわかっててこっちに来たんじゃないの?」 一瞬言葉に詰まり、数瞬考えたあと、彼が肩にかけていた鞄を開けた。 「俺は、これで確認をしたんだ」 鞄から出てきたのは双眼鏡 「君、そんなの持ち歩いて何してんの?」 「今日はロロと放課後、バードウオッチングに行く約束をしていたんだ」 ロロ、何やってるんだ。ルルーシュの監視役なのに、学生生活楽しみ過ぎじゃないか? 「海岸からはこの場所がわかるものがなかったからな。植物を見れば何かわかるかと思って、そこの森に入ったんだが。突然、赤く海岸が光ったんだ。 その光った場所を双眼鏡で確認したら、そのラウンズのマントが見えたんだ。その色はお前のだからな。わかりやすかったよ」 居たのがお前でよかった、と彼はニッコリと笑った。 |