いのちのせんたく 第113話


「C.C.が暗くなる前に戻らないなんて珍しいわね」

あの食いしん坊が夕食時に何してるのかしら?と、カレンは眉を寄せた。
暗くなれば月の明かりしか無いため森の中など真っ暗闇だ。そんな場所を手探りで歩くのは自殺行為に等しく、だからこそC.C.も夜中歩き回る事は殆ど無かった。
ルルーシュ達の拠点は道が綺麗に整備され歩きやすいが、暗さは変わらない。
C.C.なら大丈夫だろうとは思いながらも、皆心配していた。


そんなC.C.はというと、あっさりと藤堂達が見つけていた。
彼女の姿は海岸にあり、一人静かに水平線に沈む太陽を見つめていた。空は綺麗なオレンジ色に染まり、今日という日の終わりを告げていた。
何をするでもなくじっと佇むC.C.の姿に、やっぱりサボってたんじゃないかと朝比奈は文句を言ったが、藤堂は気にすることなくC.C.に近づいた。
砂を踏む音と背後から近づく光源そして燃える木の臭いにC.C.は顔だけこちらに向け、藤堂達の姿を確認するとC.C.は再び沈む太陽を静かに見つめた。

「何か用か?」
「君を探しに来た。夕食が出来ている」

C.C.の隣に立ち、同じように夕陽を見つめながら言った。

「ああ、夕食だったな。すまないな考え事をしていた」
「何か問題があったのか?」

一応、この場所では藤堂は仙波に次ぐ年長者になる。まだ若いC.C.達の不安や悩みなど出来るだけ耳に入れて対処せねばと思い尋ねた。

「問題しかないが、なあ藤堂。お前あれが何に見える」
「あれというと、あの夕陽の事かな?」

この先に見えるのは広大な海と沈む太陽だけしか無い。

「そう、あの夕陽の事だ。お前は何も感じないか?」
「何も、というのは?」
「なあ藤堂、私は不思議なんだよ。この島の存在が」

それはC.C.だけではなく皆が思っている事だ。それを改めて口にする意味が解らないと、朝比奈は不愉快そうに眉を寄せ、千葉はどんな意味があるのだろうと夕陽を見つめた。以前なら朝比奈と同じように不快感を露わにしただろう。だが、C.C.は考えなしに行動しないと理解した今、何か理由があるのだと考えるようになっていた。
藤堂は、おそらく最年少だろうC.C.は不安なのだと判断し、穏やかな声で言った。

「確かに不思議な島だ。季節感もそうだが、いくら採取してもすぐに成長する姿は異常と言ってもいいだろう」

だがこの技術があれば、食糧難に苦しむ国がどれだけ救われるか。
そんな甘い考えの藤堂にC.C.は笑った。

「この島の植生や生態系が異常なのは今更な話だ。気づいていたか?ここの植物は同じ種類が集まり成長している。確かに同じ植物は群生する性質があるが、ここは異常だ。ルルーシュのように種を採取し、別の場所へ植えた場合はそこで成長するようだが、人の手が加わらなければ、決まったエリアの外で生育する事は無い」
「・・・どういう事だ?」

やはり気づいていなかったかと、C.C.は右手を前に突き出した。

「こう、仕切りがあるんだよ。この手より右には大量の紫蘇が生えていたとする。だが。この手より左には1枚たりとも生えていない。その境界線は本当に綺麗な直線だ。自然ではありえない気味の悪い光景だよ。目に見えない、触れない仕切りがあると考えていいだろう」

藤堂は冗談かと一瞬思ったが、調べればすぐわかるような嘘をつくとも思えなかった。もしそれが事実なら、自分の認識以上にここはおかしな場所だという事になる。

「だが、私が気にしているのはそこじゃない。この、太陽だ」
「太陽?」
「私はお前たちの拠点は知らないが、今朝までいた場所はよく知っている。なあ千葉、お前もあの場所の事はよく知っているな?」
「ああ、知っているが?」
「なら、ここから見ておかしいと思わないか?あれが。お前は夜、救援を待つためにと、海岸でたき火をし夜を明かした事もあったはずだな?」

そんな事もあったなと考えながら、既に見えなくなった太陽の方角をみつめ、違和感を感じ眉を寄せた。

「・・・え・・・?これは、おかしく、ないか?いや、おかしい」
「だろう?おかしいんだ」

千葉が焦ったように言うと、C.C.はクツクツと笑った。

「何がおかしいんだ?」
「太陽です、いえ、太陽そのものではなく、太陽が沈む方角がおかしいんです」

困惑しながら言う千葉の様子に、藤堂は眉を寄せ暗くなった海を見つめた。

「ねえ千葉、何言ってるの?疲れておかしくなってない?」
「おかしくなどなっていない。私たちの拠点でも、海のあの辺りに太陽が沈んでいた。方角から考えてもあり得ない!」
「え?」
「・・・そうか、そう言う事か」

藤堂は険しい表情になり、ようやく事態を理解したようだった。

「そうだ。そう言う事だよ藤堂。私たちは6時間かけてここに移動してきた。島の別の場所に拠点を置きここではない場所に居た。だが、太陽は同じ方向に同じように沈んでいる。植生や生態系よりもずっと異常だろう?」

植生も生態系も人の手でそう作られたのだと説明することは容易いが、太陽を操作することなど人の手では不可能なのだから。
言われてみて、確かにそうだと藤堂は頷いた。
冷や汗が、流れる。
自分たちの拠点でも、海岸にたき火を作り夜通し見張りをした事もある。その時も太陽はこの方角に同じように沈んでいた。だが、ここはあの拠点ではない。まったく違う海岸なのに、太陽は同じ方角に同じように沈んでいくのだ。
この海岸でこの方角に沈むならば、自分たちの拠点では水平線ではなく、島の右手側に太陽が落ちなければ話が合わない。

「地形で言うなら、藤堂たちは左、私たちは右に拠点があるはずだ。私たちの拠点もそうだが、海岸は左右に岸壁があり、あちら側が見れないようになっている。もしかしたらその崖の向こうにお前たちの拠点があるかもしれないし、他の海岸が間に入り、ずっと行った先にあるかもしれない。それは実際にあそこを上り見てみない事には解らないが、この海岸をぐるりと回っても、それぞれの拠点には行きつけるだろう。そして恐らく、どの海岸でも同じように太陽は沈む」

3つの海岸でその結論が出たのなら、他も同じと考えていいだろう。

「新しい松明を貸せ」

言われて、朝比奈は新しい松明を袋から出し、かなり短くなってしまった藤堂のたいまつから火を貰う。そしてそれをC.C.に渡した。

「植生の話をするなら、このあたりの植物も私たちの拠点とは違う。いくつかは同じ物もあるが、各エリアではわざと違う植物を植えているようにも思える」

理由は解らないが。と言った後、たいまつの炎で辺りを見回した。その姿は何かを探しているようにも見えた。

「植物の配置や岩や崖、そのほかもろもろの配置を変えても解るほど、私たちの拠点は作りが同じだ。自然でここまで同じになるはずはないから、誰かの意思でこのような島が作られたと見ていいだろうな」
「誰かの意思・・・人工の島という事か」
「人の手か、神の手かは私には解らないが・・・やはりいないか」
「いない?誰かを探していたのか?」
「ユーフェミアを探していた」
「ユーフェミア?だがここは三人だと」

クロヴィスがいるのだから他の死者がいてもおかしくはないが。

「クロヴィスは肉体があるが、ユーフェミアは幽霊だそうだ。少し話を聞きたかったが、見つからないなら仕方がないな」

ルルーシュとユーフェミアを接触させるわけにはいかないから、離れた場所でと思ったが、前回もそうだが今回もその姿を見つけられなかった。コードを持つ者でも見る事は出来ないのか、ふらふらと徘徊していてここに居ないだけなのか。
まあいい、これ以上長いすればルルーシュの病に悪い。
あいつはああ見えて心配性だからな。

「あまり深く考えるな藤堂。手に入れた情報をルルーシュに渡せば、あいつが勝手に考えて何かしらの結論を出すだろう」

人には得手不得手がある。
頭を使い情報を解析するのはルルーシュの得意分野だ。
C.C.はたいまつを藤堂に渡すと、燃え尽きかけているたいまつを藤堂の手から取り、砂に埋めて火を消した。

*******

変化に乏しい上にまったりしすぎなので適当に設定を追加。
完結しない前提だから、どんなトンデモ設定やフラグを入れても大丈夫(フラグ)



島のイメージ図的な何か。

          ↑
 
ネリ拠点←  合流地点   →扇拠点

          ↓
      スザルルクロ拠点



上にも斜めにも爆弾仕掛ける余地があるから、ジェレミアたちゼロレク組や生徒会組がでてきてもおかしくない!(フラグ)

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