いのちのせんたく 第12話

「あっ、コーヒーだ」
「意外と飲めるものだな」

鍬を手に入れたので、雑草処理のついでにたんぽぽを掘り起こし、たんぽぽコーヒーを作ってみた。たんぽぽの根を洗い、天日で乾燥させ、焙煎後石で叩いて磨り潰し、医療用のガーゼを使用し入れる。
若干粉っぽいが、ガーゼ以上に目が細かく、衛生的な物が無いので、それは仕方がない。素人が、ろくな道具もなく作って、これだけコーヒーらしい味なのだから、ちゃんと入れることができれば、もっと味が良くなるはずだが。

「今あるものではこれが限界か。やはり石臼のような粉末を作る道具がほしいな」
「これだけでも十分だと思うけど?」

まさかこんなサバイバル生活で、コーヒーが飲めるなんて思っても居なかったスザクは、素直にそう言うが、ルルーシュは納得できないという顔でコーヒーを啜った。

「どうせなら美味しいものが飲みたいだろう?さすがに毎回手で擦り潰すのは疲れるから、何か代用できるものがあればいいんだが」

だが食後の一杯は、どんな味でも飲めるというだけで気分も変わるな。
ドングリでも作れるらしいから、次はドングリで試すか。

「で、今日はどうする?」
「鶏を捕獲する」

今朝、スザクが鶏が群れで生息している場所を発見したらしく、食材にと首を切り落とされた鶏が一羽ルルーシュの目の前に置かれていた。
この状態の鶏を見たのは初めてで、最初は気味が悪かったが、食材だと思えば気味悪さが半減するのだから不思議だ。

「まずは鶏が逃げ出さないよう、あそこの高台にある草地の一部を柵で囲む。その後鶏を探し、捕獲後柵の中へ離す。雌鳥がいれば卵が手に入るようになるからな」

卵があれば栄養面だけではなく、料理のレパートリーも増える。ぜひ手に入れたい食材だ。もちろん、鶏肉もだが。
羽毛は何かに使えるだろうか?一応洗浄し、袋にでも入れて保管しておくか。

「柵は竹でいいよね?じゃあ、柵作りと鶏捕獲は僕がやる」
「お前一人に任せられるか。まずお前は手頃な竹を取ってきて、あそこに集めてくれ。鶏を捌き終わったら、俺も行くからな」

昨日作成した燻製器に、今朝スザクが取ってきた魚と、昨夜捌いて塩水に漬けておいたカエルを入れ、燻煙しながら今日の予定を立てた。





「おい見ろ!芋だ!さつまいも!!」

朝比奈と仙波が泥だらけになりながら掘り起こし、運んできた芋を見て、玉城は喜びの声を上げた。

「食べたいなら自分たちで掘ってきなよ。芋ぐらいなら自力で掘れるよね?」

全身泥だらけの、疲れきった顔の朝比奈が、玉城に文句を言った。
着ていた上着に泥だらけのさつまいもを包んで持ってきたので、もちろん衣服も泥だらけだ。

「固いこと言うなよ、それだけあるなら俺達にも食わせろって」
「働かざるもの食うべからずって言葉知ってる?」
「うっせーな、ケチケチすんなよ」
「ケチケチしてるとか、そういう問題じゃない。少しは自分たちで食べるものぐらい、自分たちで手に入れろって言ってるんだよ」

朝比奈と玉城が言い合いをしている間に、仙波は芋を川で洗い、焚き火で焼き始めた。泥だらけの衣服を川の水で洗い、体もついでに洗う。水で洗い流す程度だが、それでも少しは気分が変わるなと、仙波は青空を見上げながら洗った衣服を絞った。
扇も玉城も南も、最初の数日だけ魚を取ろうと川へ入ったが、その後は用意されて当たり前、と言わんばかりの言動で何もしなくなった。はじめの頃は扇も、申し訳ないという態度を取っていたが、今は玉城と朝比奈の口論を横目に、焚き火に近づき芋の様子をうかがっている。
こんな人間が、黒の騎士団のナンバー2と幹部だとは、とても思えない。このような人間を近くにおいたゼロは、無能な人間でさえ使いこなせるほどの指導者だということか。あるいは、人を選ぶ能力が劣っているのか。・・・単に運が無いのかもしれないが。
どちらにせよ、我々の手には余ると、仙波は深く深く嘆息した。





「ちょっとぉ、あんたたち、少しは片付けたらどうなの?虫湧いてるわよぉ?」

ラクシャータは、川で水浴びをし、戻ってくると、その光景に眉をひそめた。
コーネリアたちブリタニア側と、黒の騎士団で一応別れて行動はしているが、拠点は一緒である。いくらラクシャータが衛生面を考え、ごみ処理と清掃をしても、自分以外がこれでは意味が無い。このままでは間違いなく病気が蔓延する。どうにか対策を考えたいのだが、言うことを聞こうとしない。
それでも何度も話しあい説教した甲斐があり、カレンとC.C.は自分の出したゴミの処分もするようになった。だが、未だにコーネリアとヴィレッタは、騎士団の人間の言うことなど聞けるかと、わざとゴミをその辺に捨てる始末だ。
それに煽られた千葉も、我々がすることではない、ブリタニア人にやらせるべきだと言って片付けない。
川での水浴びすら、寒いだの何だのと理由をつけてなかなかしてくれない。お湯を沸かせと言われても正直無理だし、シャンプーや石鹸を用意しろと言われてもこれも無理な話だった。
ハエがたかり、うじの湧いた食べかすに、何度目かわからないため息を付いた。何で私がこんなに世話を焼かなければいけないのだろう。本当に嫌になる。せめて洞窟から離れた場所に捨ててくれないだろうか。言うだけ無駄だということはこの数日で嫌というほど学んだが、やはり腹は立つ。

「カレ~ン、掃除するわよぉ」
「え、はい。ラクシャータさん」

一緒に水浴びに行っていたカレンが、ゴミを捨てる穴を掘るため、シャベルを取りに洞窟の奥へ姿を消した。同じく水浴びをしていたC.C.は、やれやれと言いながら、木の枝をまとめて作った箒を取りに行った。
カレンは私が言って、ちゃんと見ていれば動いてくれる。C.C.は私達が動けば、めんどくさがりながらも手伝ってくれる。
千葉は基本的にヴィレッタたちと言い合いばかりであまり聞いてくれない。
今も河原でヴィレッタと口論中だ。いい加減話をするだけ無駄だと気づけばいいのに。
ヴィレッタは、ここで皇女にいい姿を見せ、後々褒章をもらおうという下心が見え見えで、皇女の世話は私がするのだと、セシルをも邪険に扱っていた。ブリタニア側で唯一話ができるのはセシルぐらいだが、動こうとするとコーネリアが、あんなものは騎士団の連中にやらせればいいと言うので、セシルは動けない。なにせ皇女の命令だ、逆らえるはずはない。
裏でこっそり話はしているが、私達の居ない場所でもセシルは相当苦労しているようだった。
なんとかコーネリアとヴィレッタから離れて、別の場所に行けないかしら。あの二人が居なければ、体力のあるカレンと千葉、何故か野草関係に強いC.C.、そして技術面で私とセシル。これだけのメンツだ。食材の豊富なこの場所なら難なく生き残れる自信はある。
ラクシャータはシャベルで穴を掘っているカレンを見ながら、どうに出来ないかと、深くため息を付いた。








スザルル組は鶏を飼い始めた。
スザルル組は燻製を作れるようになった。
スザルル組はたんぽぽコーヒーを飲めるようになった。


騎士団組はさつまいもの群生地を見つけた。
騎士団組はどんどん険悪になっていく。
藤堂は扇たちと顔を合わせたくないのか探索にばかり出ている。


ラクシャータは病気になる前にどうにか行動を起こしたいと考えている。
女性組の衛生面はラクシャータがぎりぎり保っていたが、そろそろ限界だ。


ラクシャータに限界が来て、説教をかましたおかげでスザクが見た光景よりは多少ましになったけど、まだ汚いです。

私の中のイメージでコーネリア&ヴィレッタはサバイバル無理。
C.C.は長年の経験があるので、難なくこなす。
千葉も木の根も食べる苦しい時代を生きてたので問題なし。
ラクシャータ、セシルは素材と肉体派の協力者さえいればどうにか生存可能。
カレンは知識は足りないが、体力面でカバーできる。
そんな感じです。
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