いのちのせんたく 第124話


軽く畑仕事を終え、海へとやって来た面々は思い思いの作業を行っていた。基本的にはスザクを中心とした採取班と、ルルーシュを中心とした製作班に分かれて忙しく動き回っている。ただ一人、浜辺に寝転がりごろごろしているC.C.を除いて。
あちらの拠点で嫌な思いをしてきた朝比奈・仙波は、働かざる者食うべからずなのだから、やはり働いてもらわねばならない。だが相手は女性だからここは千葉に頼もうと思ったのだが、千葉を含む女性陣は「C.C.はあれでいい」としか言わない。
この拠点のトップであるルルーシュも「あれは放っておいていい。何かあれば勝手にやるだろう」というので結局彼女は誰にも何も言われることなく惰眠を貪っていた。
採取班は男女で分かれ、男たちは裸になり海に潜って海産物を、女性たちは海岸で採取できるものをテキパキと集めていった。

「あーもう、うらやましい!私も泳ぎたいっ!!」

砂浜にいたカレンは立ち上ると、離れた波間に見える男たちに文句を言った。
ここに来た時に衣類は増えたが、残念なことに水着は入っていなかった。ショートパンツとタンクトップで泳ぐ気満々だったのだが、水着と違い普通の衣類は水を吸って重くなり危険だとルルーシュからストップがかかった。
トップであるルルーシュが駄目だというのだから駄目。
ここにいるのが女性だけなら脱いで泳ぐのだが、それもできない。
あちらにいた時は2回ほど泳いだが、食料調達で眼をぎらぎらさせながら泳ぐのは心身共に激しく疲労し、道具も知識もないから得られる食料も少なく、効率が悪いとやめたのだが、ここならそこまで切迫していないから、海を楽しみながら採取できるのに。

「我儘を言うな紅月。それとも裸で泳ぐつもりか?」

砂浜でしゃがみっぱなしで背中が辛かったのか、千葉は立ち上ると体を伸ばした。

「まさか。大体、ルルーシュが許すわけ無いです」
「そうなのか?」
「どうして疑問形なんですか千葉さん」
「いや、普通男なら適当な理由をつけて、紅月の裸を見たがるだろう?」

確かに、ここにいるのがクラスの男子ばかりなら、泳ぎたいなら服を脱がなきゃ駄目だよ。自分たちは見ないから、女子だけで泳いだらどうかな?とか言いそうだ。そして草むらに隠れて覗き見するのだ。それで済むかどうかは別として、機会があるならそうなる様に仕向ける年頃だろう。
だが、それはルルーシュには当てはまらない。

「あー、それは大丈夫ですよ。私がここで脱いだら間違いなく止めに来て、こんな所で脱ぐなんてはしたない!って叱ると思いますよ」
「はしたない?」
「あいつ、女装したスザクがスカート巻くし上げたら、はしたないって叱ったんです」

リヴァルから聞いた話を思い出し、カレンは思わず噴き出しそうになった。

「そうなのか?」

というか、女装?一体どういう状況で?いや、学生なら何かの行事だろうかと、千葉は波間に見えるスザクを見た。可愛い顔をしているが、どこからどう見ても男だ。その男がスカートを巻くしあげた所でははしたないも何も無いと思うのだが。

「あいつはそういう奴なんですよ。だからあいつがここのトップでいる以上、女性が辱められるような事は起きません。むしろ必要以上に護ってくれますから安心です」
「だが、そういう事が気になる年頃だろう?」
「鉄壁の守りを固めた温泉の囲いを思いだしてくださいよ。どこかから覗けるんじゃないかって散々調べたけど、何処からも見えなかったでしょ?トイレだって男女別に作ってるし、ほんとこんな場所でよくやるわ」

カレンは自慢するかのように笑いながら言った。
そんな噂のルルーシュはと言えば、どうやら仙波と相性がいいらしく、よく二人で何やら話をしていた。今はラクシャータとセシルも加えた4人で話し合いをしている。きっと大事な話だから邪魔は出来ないし、彼らにはここを脱出する方法と生存するための方法を考えることに専念してもらうのが理想だろう。

「千葉さん、のんびりしてたらお昼になっちゃいますよ。皆がお腹いっぱいになるぐらい採りましょう」

カレンは、再びその場に腰を下ろし、千葉を促し手を動かし始めた。
手に持っていた太めの竹は、先端が斜めに切り取られ、鍬になる様加工されていた。それを使い砂を掘る。すると、ゴロゴロと形のいい貝が姿を現す。見慣れたアサリだけではなくハマグリや名前の解らない貝もあり、あとでルルーシュに食べられるのか確認しなければならない。
それにしても、まさかこんな島で潮干狩りが出来るとは。いや、むしろこの状況で潮干狩りをしない方がおかしいのだろうか?
夢中になって集めていたら、千葉とカレンが使っていた袋は沢山の貝でいっぱいになっていた。流石に取りすぎたかもしれない。これ以上はいらないと判断し、貝の採取は切り上げることにした。

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