いのちのせんたく 第133話


現代人が住むには適さない環境下に突如放りだされ、慣れない環境に身を置き、日々の食べ物を手に入れることにすら困窮し、足手まといたちに振り回され、心身ともに疲労し、薄汚れてやつれ果てていた彼らを、運よく開拓しやすい土地を手に入れ、問題は多かったがそれでも三人で協力し、生きるために必要な最低限の環境を整えたこの場所に受け入れ、まずは無理のない範囲で作業を手伝ってもらいつつ彼らの体力回復を優先しよう。おそらくこちらが想定している以上に彼らは消耗しているに違いないと、家の建築工程を修正したのは昨日のことだ。

洞窟と竹の小屋があれば当面問題は無いから、陶磁器の作成の準備、畑の準備をして、後は明日。
体力バカのスザク がいれば、食材も不足することは無いだろう。
・・・そう思っていたのだが。
体力バカどもに気を使った俺がバカだった。
ルルーシュは心の底から呆れを、深いため息をついた。

「よし、次は素振り100回!」
「「「「はいっ!!」」」」

だってそうだろう?
この光景を見て、ああ、頑張っているなって誰が思う。

「朝比奈!腕で振ろうとするな、もっと腰を入れろ!」
「はいっ!!」

普通に考えれば、この状況を生き抜くために体力を温存し

「スザク君、雑になっているぞ!一振り一振りに神経を集中させろ!」
「はいっ!」

前回のような大雨が来たときに対処できるよう食材をあつめ、生き残る確率を少しでも上げる方が最優先 であって。

「カレン君、無理をするな。一度休憩しなさい」
「いえ、まだできます!」
「休憩することも修行だと思え」
「・・・っ、はい」

断じて体力作りは最優先事項ではない!!!
なんなんだこの状況は!!!

藤堂、朝比奈、千葉、スザク、カレンは何で早朝から体力を使い果たすようなことをしてるんだ!!馬鹿なのか!?それとも体力が有り余っているというアピールか???ああ、そうかそういうことか。ああわかったよ。お前らのような体力バカの体力と思考を甘く見ていたことを認めよう。明日からみていろよ。お前らの体力を根こそぎ奪うぐらいの作業量を割り当ててやろう。
ルルーシュは周りに人がいないからか、気が緩んでいたからか、ククククク、フハハハハハ・・・と、小さくではあるが笑い声を上げた。

千葉は途中で体力が尽きたのか先に休んでいて 、今カレンも休憩に入った。どうやら木陰に座っていた仙波も途中まで参加していたらしく息を切らしている。朝比奈など足元もおぼつかないぐらいふらついているが、休めといっても聞く耳持たずだ。スザクに対抗意識を持ったせいで、限界を超えてもまだできると言い張って聞かないらしい。藤堂もそれに気付いているのかもう休憩しろとは言わない。
体力を使い果たし、ダウンするまで好きにやらせるつもりなのだろう。揃いも揃って大馬鹿すぎる。体力使い果たすような訓練、サバイバル生活中にやるな。
明日はともかく、今。
体力バカな師弟、藤堂とスザク以外全員早朝から体力を使い果たしたこの状況どうしてくれようか。
うんざりと眺めているルルーシュの横に、起きてきたC.C.が座った。

「なんだ?朝から基礎訓練をすることにしたのか?お前にしては愚策だな」
「俺がこんな命令をするとでも?」
「いや?おまえのその不愉快そうなあきれ顔を見れば違うことぐらいわかるさ」

くつくつと笑うC.C.に、なら聞くなと返していると、遠くにセシルとラクシャータの姿が見えた。ラクシャータは寝乱れた服装のまま、まだ眠そうに大きな欠伸をし、セシルは最低限の身なりを整え、背筋を伸ばし歩いてくる。訓練と称して藤堂達が木の棒を振り回しているここは、洞窟からある程度離れているため、彼女たちにはこの元気な声は聞こえなかったらしい。つまり、静かに寝られたということだ。羨ましい。

「あらあら。みんな元気ね」

ニコニコと笑いながらいうセシルとは対象的に、ラクシャータは眉を寄せ、しばらくあたりを見回した後、パンパンと手を叩いた。
大きなその音に、藤堂たちも気付き視線を向けてくる。

「今日の訓練はここまで。余裕が出来たのが嬉しいのは解るけど、この後の作業に支障が出たら本末転倒でしょ」

ついつい楽しく て夢中になっていたらしい彼らは、はっとなり藤堂はばつの悪そうな顔をし頭を下げた。

「すまない」
「その体力は、ここでの作業に使うべきよ」

それ以前に、あれだけ疲労していた身体が回復したからといって、これだけの運動をしていいはずが無い。
だからドクターストップだ。

スポ根の世界に浸ってしまった面々は現実を思い出し、素直に従った。その時ようやくスザクはルルーシュの横にC.C.がいる事に気付き慌てて駆け寄ってきた。夢中になり過ぎてルルーシュが起きたことにも気づいていなかったのだ。

「ルルーシュ、おはよう」
「おはようスザク」
「なんだ、私に挨拶はなしか」
「・・・おはようC.C.」
「おはよう 、役に立たない騎士殿?」

私が敵なら、ルルーシュはどうなっていたかなぁ?
遊びに夢中で周りが見えなくなるなんて、騎士失格じゃないか?
にやりと笑うC.C.に、スザクは不愉快そうに眉を寄せた。

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