いのちのせんたく 第141話


ぎこぎこぎこと、自然とは言い難い音が森の中に響き渡り、人の叫び声の後ばさばさどすんと、地面に倒れ落ちる大きな音が響いた。そこには倒れた木があり、そのすぐ傍には大きなのこぎりを手にした藤堂とスザクがいた。
二人が手にしているのこぎりは二人挽のこぎりと呼ばれるもので、左右に取っ手が付いており、それぞれを手にした二人が息を合わせて使用するものだった。近くには数名息を切らし疲れ果てた姿で休憩しているが、この師弟はたった今作業を始めたかのように元気いっぱいだった。青い空と白い雲、涼やかなそよ風と木漏れ日のなかで、爽やかな笑顔で爽やかに汗を流す二人を冷ややかな目で見ている者がいた。

「なんなのよ、あの体力馬鹿師弟は・・・」

カレンは水を飲みながら呻くように言った。

「さすが藤堂さん」

スザクはともかく藤堂はすごいと感嘆の眼差しを送る朝比奈に、カレンは、あーそうですか、それはすごいですね。って盲目すぎるだろ!と突っ込みたかったが口にはしなかった。

「さて、次はどれにするか・・・」
「これはどうですか?藤堂さん」

額に浮いた汗をぬぐいながらスザクが言った。
指し示した先には手頃な木。
場所的にも切って問題ないだろう。
よし、と頷いた藤堂に待ったをかけたのはルルーシュだ。

「いや、もう十分だ。すでに切り倒した木を切りそろえ、河原まで運ばないといけない事を忘れるな」

想定以上の早さで伐採された木々を、これから河原に運ばなければならない。ここに放置し以前のような大雨が降れば流される恐れがあるからだ。
これらを使い建てる小屋を作る場所も、高い場所でなければならない。安全なのは洞窟前の平坦な場所か石窯のある岩場。利便性を考えれば洞窟前一択だ。焚き火と机、椅子類を置いている場所も空け、竹の小屋も移動させれば十分な広さがある。洞窟には裏口から行けるようにしたい。スザクの話では洞窟のあるあの崖の上は平坦らしい。洞窟前を1階とし、2階部分を作り洞窟上のなだらかな場所を利用し3階を作れば、3階建でも安定するし、階段をつければ見晴らしのいい場所にすぐ移動できる。何よりこれだけの人数が十分住める広さを手に入れられるだろう。 洞窟は緊急避難と冷暗所として使用する。
家の図面はほぼ完成しているので、どの長さが何本必要かはもう出ている。その長さに合わせたロープでサイズを合わせ、目印を付け切り分けていく。休んでいた面々が動きだしたので、藤堂は二人挽のこぎりを千葉と朝比奈に渡し、他ののこぎりを手に取り切断し始めた。
流石軍人。てきぱきと効率よく働く。作業に不平不満を言うこと無く、与えられた任務を黙々とこなす。藤堂の言うことはカレンとスザクもよく聞くので、藤堂に任せておけば何も問題はない。
皆の作業に満足し、ルルーシュもてきぱきと昼食の用意を始めた。
C.C.はその辺を徘徊し、食材になりそうなものを集めてきた。

「見ろルルーシュ」

C.C.が手にしていた物を投げてよこした。
何なんだ?と、手にしたそれは石に見えたが・・・

「まさか、これは!」
「なかなかいい発見だと思わないか?」
「よくやったC.C.。しかし、よく見つけたな」
「あの嵐の夜に雷がこの近くに落ちたらしい。焼けた跡があった」
「なるほど、雷か」
「ああ、今日は酒が飲みたい気分だ」

報酬に酒を飲ませろと言うので、仕方ない奴だと了承した。

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