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セシルには悪いが、ルルーシュ、ラクシャータ、卜部の三人は顔見知りだった。それもルルーシュ=ゼロだと知ってる三人だ。 ここにいる学生が、テロリストの首魁だと知らないのはセシル1人。 さてどう話を切り出すべきか。 そんな事を考えていた卜部だが、最初に動いたのはルルーシュだった。 「・・・あの、黒の騎士団の方、ということでしょうか?」 僅かに警戒と恐怖心をにじませた声と、表情でそう尋ねてきた。 うまいな、と卜部とラクシャータは表情を変えること無くルルーシュを見た。どこからどう見ても初対面のテロリストに警戒するただの学生にしか見えない。演技もそうだが、度胸が人並み外れている。 「・・・ああ、俺は四聖剣の1人で卜部という。ここでのことはある程度だが見ていた。クロヴィスやユーフェミアと同じモノだと言えばわかるか?」 「死者、ということでしょうか」 「そうだ」 卜部がすでに死んでいる事を知らなかったセシルは、驚き卜部を見た。 四聖剣が揃うのだから千葉たちも喜ぶだろうとしか考えてい無かったのだ。軽率だったと自分の言動を恥じ、表情を曇らせた。 「・・・この馬鹿はね、ゼロを守るために自爆したのよ」 「自爆を?」 腹立たしげなラクシャータの言葉を、セシルは悲しげに復唱した。 戦闘において、ブリタニアと日本ではやはり物量の差が大きい。少人数で最大の成果を出すために、自らの命を顧みない策を取らざるを得ない場合もあるのだろう。 「すまない、ラクシャータ」 「謝っても生き返らないわ」 「それはそうだが」 「ゼロの静止も聞かなかったって、カレンから聞いてるわ」 「だが、その甲斐があった。俺は、後悔はしていない」 そんなこと、顔を見ればわかるわ。とはいえなかった。 ルルーシュとしては内心複雑だったが、表情に出す訳にはいかない。あくまでも、そのエピソードを今はじめて聞いた一般人でなければならない。もしここにセシルがいなかったなら、あの時の命令無視による自爆に対する叱責と、命を救ってくれた礼をしたいところだ。慌てなくても、クロヴィスと同じ状態ならいずれ機会もあるだろう。 今大事なのは、藤堂と卜部を会わせることだ。卜部が幽霊のときにこの拠点のことを見ていたのなら、細かな説明をせずともこちらに話を合わせてくれるだろうが、正直不安があった。 「俺、藤堂さん達を呼んできます」 卜部は藤堂の部下なのだから、上司を呼んでくるのは自然な流れだろう。そしてこの中ではルルーシュが呼びに行くべきだ。いや、早くこの場からルルーシュが離れたほうがいい。 ルルーシュとラクシャータは問題ないが、卜部は結構うっかりなところがあるから、ボロを出す可能性が高い。あの時のようにゼロなんて呼ばれたら即アウト。だから早く離れ、藤堂を間に挟んだ方が安全で確実なのだ。 だが、そう思い通りには行かない。 背後から誰かが駆けて来る音が聞こえたと思った次の瞬間には、ルルーシュの目の前に見知った背中が現れた。自分を守るように立つのは、戯言とは言えこの場でルルーシュの騎士(仮)となったスザクだった。 |