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「まず、扇とコーネリアの拠点ですが、様子を見に行く必要はありません」 「必要がない?」 クロヴィス、藤堂、ラクシャータ、ルルーシュ、スザクはお茶を飲みながら卜部の話に耳を傾けていた。朝比奈と千葉、カレンは木材運びを。仙波は釜戸の火を見ているためここにはいない。 卜部との会話は藤堂とラクシャータがし、この拠点のトップであるルルーシュが立会い、スザクはそのルルーシュの護衛として付き添う事になった。 クロヴィスは卜部の指名だ。 「扇たちのところには、永田という元扇グループの者がいます」 「永田?」 「ああ、確かそんな名前のメンバーがいたって言ってたわね」 藤堂には馴染みのない名前だったが、ラクシャータは聞いたことがあった。 「確かシンジュク事変で行方不明になったとか。・・・死んでたのね」 「シンジュク事変というと、扇達が毒ガスを盗んだというあれか」 「はい。扇たちは自分の話は全く聞きませんが、永田の話はある程度聞き入れます。今は永田がこの島での生き方を教えていますが、中佐が様子を見に行けば、また頼ろうとするでしょう」 扇達を見捨てず、定期的に様子を見る前提で藤堂達はここに受け入れられた。だから木材運びが終わり、ある程度の目処が立ったらも出立するつもりでいた。卜部の言う通り、藤堂が顔を出せば、自分たちは辛い思いをしている、助けろと訴えてくるだろう。 「そしてコーネリアの拠点には、ユーフェミアが行っています」 「ユフィが!?」 「・・・」 スザクは驚き声を上げた。ルルーシュたちも驚きを隠せないが、ただ1人クロヴィスだけは冷静に話を聞いていた。 「兄さん、知っていたんですか?」 「お姉様のところに行ってきます。と、言っていたからね」 そうだった。 ここに居たユーフェミアの幽霊とクロヴィスは普通に会話ができたのだ。どこかの段階で二人きりで話をし、その情報を手に入れていたのだろう。何故隠していたんだ?と皆が訝しんだ時、スザクが立ち上がった。 「ユフィ・・・ユーフェミア様が・・・!」 「待ちなさいスザク」 クロヴィスは冷静な声でスザクを制した。 動揺の隠せない表情のまま、スザクはクロヴィスを見た。 「ここにユーフェミアが居たことは前から知っていたはずだが、何をそんなに慌てている?」 わかっていて聞いている。 それがわかる声と、視線だった。 「今の話だと、ユーフェミア様も身体を得たということですよね」 「だから、なんなのかね?あの子の騎士として、あの子の元に戻るつもりかな?」 クロヴィスは、わずかに非難を込め言った。 図星なのだろう、スザクの表情が騎士のそれに変わっていた。 それを見て、卜部はやはり枢木スザクは信用に値しないと判断し、藤堂たちもスザクの危うさにここでようやく気がつく。 ルルーシュは、表情こそ変えないが、内心酷くショックを受けていた。 やはり、スザクはユフィのためならルルーシュを簡単に捨て、裏切れるのだと実感した。失われた主が目に見えない不確定な存在ではなく、目で見て、声を聞いて、触れ合える存在として戻ってきたのだ。代用品の主など、もう必要ないのだろう。 国を裏切り、親友を裏切り、その地位を手に入れた男だ。 仮初の仲間も、仮初の主も、簡単に踏み台にし、利用するなどわけもない。 さて、どうするべきか。表面上変わっては見えないが、 ルルーシュがイレギュラーに、いや、スザクに弱いことはよく知っているクロヴィスと卜部は、思考を停止させているだろうルルーシュをちらりと見、小さく息を吐いた。 |