いのちのせんたく 第148話


「そう言えば永田、おまえ、その、どうやって死んだんだ?」

温泉から上がった玉城は、作業をしていた永田に恐る恐る尋ねた。
先に温泉に入り、永田と一緒に川魚をさばいていた南と、嫌そうな顔でさばいた魚を洗っていた扇はハッとなり永田を見た。
最初に会ったときからずっと聞きたかったが、本人の死に関する内容だけに聞けずにいた。何より、本人ではなかった場合、適当なことをそれっぽく言われて終わるとわかっていたからだ。だが、今はこの永田は本物で、自分たちを助けるために来てくれたと考えている。聞いたところで永田が生き返るわけではないが、遺体の場所がわかれば埋葬が出来る。すでに埋葬されているならその場所を調べる手がかりになる。
もしかしたら生きていて、どこかに潜伏しているのでは?怪我をしてどこかのゲットーで治療を受けているのでは?俺達が有名になりすぎて、合流できなくなった可能性はある。そうやって、永田の死から目を背けていたところはあった。
扇は、仲間なんだから生きていたら必ず連絡が来る。来ないということは、そういうことなんだと言っていたが、そう簡単に諦められることじゃなかった。ナオトにしてもそうだ。死んだと確定するまで生きていると信じたい。そう思っていた。
だが、永田はこの場所に現れ、自分は死者だと言った。
永田本人が、自分の死を知らせたのだから、信じるしかない。
扇は偽物だと喚くが、俺達しか知らないことをこの永田は知りすぎている。それに卜部のこともある。卜部の死は、カレンとゼロ、C.C.が断言しているのだから疑いようがない。このへんな島は恐山みたいな場所で、いい幽霊が出てくるのかもしれない。そう思うことにした。
そこまで考えれば気になるのはあの日のことだ。
カレンの話では毒ガスを積んだトラックを走らせて逃げたはずだが、その後の消息は不明。ゼロが枢木スザク救出のときにあのカプセスを使ったが、永田の話は出なかったし、あれは資料を見て作った偽物だと後で聞いた。中には目くらましの煙が入っていただけで、毒ガスは入っていなかったらしい。
だからあれは、永田が持っていたものではない。
永田と毒ガスは、どこに行ったのか。
それが知りたかった。

「ああ、カレンと別行動を取った時、ブリタニアのKMFに正面から撃たれたんだ」

そう言いながら、打たれた場所を指差すと、玉城と南は痛そうに顔を歪め、扇は適当なことをといいたげに目を細めた。

「なんとか地下鉄跡に逃げ込んだんだが、車が立ち往生して動けなくなった。出血もひどくて身動きが取れなくなって・・・扇が見つけてくれるかもと、期待はしたんだが、先にブリタニア軍に見つかったんだ」
「ブリタニアに!?じゃあおまえ、奴らに殺されたのか!?」
「いや、あのトラックには念のため爆弾を仕掛けていただろ?」

苦笑しながら永田は言った。
それだけで、馬鹿な玉城だって理解する。

「そ、そうか。じゃあそれで毒ガスもパーか」

はははは、せっかく盗み出したのにな!と、無理やり明るく言おうとして失敗した。表情は硬いし、声も硬い。あの日、永田がミスしたからだと、永田のせいにし、馬鹿にした。でもその時にはすでに、永田は死んでいたのだ。

「その話なんだが・・・あれは、毒ガスじゃなかった」
「は!?」
「なんだって?」
「本当なのか、永田」

毒ガスだと信じて盗み出したものが毒ガスじゃなかった。
そんなはずはない。

「だが、カレンもあれは毒ガスだって」
「毒ガスだからあれだけ必死に追ってきたんだと俺も思った。でも、違った。死んでから、あれに何が入っていたのか知ったんだ」

死んでから。
幽霊になって、見ていたということか。

「あれに入っていたのは人間だ。人体実験の被検体。C.C.を知っているだろう?彼女が閉じ込められていたんだ」

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