いのちのせんたく 第149話


「C.C.が!?実験ってなんだよ!」

予想外の内容と人物に三人は永田に詰め寄らん勢いで身を乗り出した。

「彼女はブリタニア・・・いや、クロヴィスの研究機関に捕まってて、さっきも言ったが、人体実験だ。俺がトラックを爆破する少し前にゼロが現れて、彼女をカプセルから救い出した。その時からC.C.はゼロの協力者だ」
「人体実験・・・あのC.C.が・・・」
「そんな非人道的なことまでやっていたのか、ブリタニアは!」
「くっそ!あいつそんなこと一言も・・・!」

三人は怒りを露わにし、同時にC.Cに同情した。
あのいけ好かない態度も、人を小馬鹿にした態度も、元を正せば人体実験のせいで人を信じられなくなったからかもしれない。自分を救出したゼロ以外、信用もしていないのだろう。感情が見えない表情をしていることが多いのもそのせいか。

「人体実験をしていたことを知られないために必死になって奪い返そうとしたんだ。そして、いまも彼女を狙っている」
「そうなのか!?」
「ああ。ブラックリベリオンでゼロが処刑された話があっただろう?」

見ていた永田は死後のことをよく知っていた。
それが扇に不信感を抱かせているのだが、永田は気にせず話し続けた。

「もうわかっていると思うが、処刑はされなかった。でも、ゼロが捕まったのは事実だ」
「そうなのか!?」

ざわり、と三人は鳥肌が立った。
では、どうして処刑されず、今も自由に動き回っているんだ?

「ゼロは記憶を消されたんだ。そしてブリタニアの軍師になってた」
「記憶を、消す?そんなことが・・・」
「何言ってんだ扇!人体実験するような奴らだぞ!人を操る薬とかあってもおかしくねーだろ!」

ギアスの事を言えないため、永田は玉城のその案に乗ることにした。使用者が限定されているだけで、薬もギアスも似たようなものだ。

「細かいことは解らないが、そんなところだ。カレンや卜部さんたちはゼロがどこにいるか突き止め、救出作戦を決行した。その舞台がバベル・タワーだ。実験体だったC.C.がゼロを正気に戻す方法を知っていて、C.C.と再会したゼロは全てを思い出し、再び黒の騎士団を結成した」
「バベル・タワーにゼロがいたのか」
「いや、別の場所だ。ただその日にゼロがバベル・タワーに行く事を突き止めた。ブリタニアはC.C.を捕縛するため、ゼロを餌と呼び自由に泳がせていたんだ」
「ゼロが餌!?くっそ、ブリタニアめふざけやがって!!」
「じゃあ、ゼロがブラックリベリオンで戦線離脱したのは?」
「あの時、ゼロは戦場を覆せるほどの力のあるKMFに狙われていた。それをガウェインにひきつけ、ゼロを避難させたC.C.が自決覚悟でそのKMFを海底深くまで沈めて倒した。だが、ゼロの前に今度は枢木スザクが現れた。そして、捕縛されたんだ」
「そうか!そうだったのか!ほらみろ!ゼロは俺たちを見捨てたわけじゃなかったんだ!勝つために、やばいやつを相手にしてたんだよ!」
「そうだったのか・・・」

ほらみろ!ほらみろ!とテンションを上げた玉城と、疑ったことを恥じた南は予想通りの反応だったが、扇は顔を引き締めていた。妹を助けに・・・なんて言えばまた反感を買うだろうから色々隠しはしたが、大まかな内容はあっているはずだ。これでゼロが裏切っていたという疑いは払拭できると思ったが、何か間違えていただろうか?と永田は考えたが思いつくものは何もなかった。
永田は、失念していたのだ。
扇があの日、誰に撃たれたのか。
本物か偽物かは解らないが、この永田はいろいろな情報を持っているのは確実だった。そして、ブラックリベリオンでのゼロの行動にまで言及した。それらを見ていたのだと言う・・・ならば、自分撃った女性がブリタニアの軍人でその軍人と自分が男女の関係にあったことも、知っているのかもしれない。
彼女は悪くない。
自分は、黒の騎士団の情報を流していない。
たまたま、ブリタニア軍人と黒の騎士団の副司令という立場だっただけだ。
自分は黒の騎士団を裏切ってなど居ない。
だが、それを知られれば、あらぬ疑いをかけられることになる。
自分は潔白だ。
確かに裏切るような真似はした。ゼロの正体を知る彼女を救うことで、その仮面の下を知りたいと考えたからだ。だが、彼女は知らなかった。だから今も自分はゼロが誰かは知らない。記憶をなくした彼女に、自分が黒の騎士団だと言っていないのだから、彼女だってこちらから情報を得てはいない。
ただ、愛し合っていただけだ。
敵を好きになってはいけないのだろうか。
ブリタニアを好きになったわけではない、彼女を好きになったのだ。
でも、それを知られるわけにはいかない。
偽物のせいで、この場を荒らされる訳にはいかない。
扇は冷たい目で永田を見据えていた。

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