いのちのせんたく 第151話


昼食を終え、少し昼寝をすると河原に寝転がった玉城と南を残し、扇は永田を連れて森へと入った。このあたりのことは幽霊だった時に見ていたという永田に、何がどこで取れるか教えてほしいと頼んだのだ。
永田は扇の頼みに、やっとやる気が出たんだと喜び、採取したものを入れるためのリュックを背負い、まずは保存のし易い根菜の場所へと案内した。

「小さくてもいいから拠点近くに畑を作るんだ。ここは肥沃な土地だから肥料はいらない。種も簡単に手に入るし成長も早い。手近な所に作っておけば、こんな手間を掛けて探し回る必要もなくなるだろ?」
「・・・たしかにそうだな」

大根や人参といった野菜をいくつか採取したあと、野生のウリがある場所にたどり着いた。仙波達が見落とした素材。いや、必要だと判断しなかった素材だが、ルルーシュ達の拠点では重要な素材だった。

「ウリは食べられるし、素材としても・・・」
「なあ、永田」

説明している途中で、扇は話を切った。
その表情はどこか陰鬱で、永田は訝しげに眉を寄せ口を閉ざした。

「俺は、黒の騎士団を裏切ったわけじゃないんだ」
「・・・?ああ、そうだな?」

突然の告白に、永田は眉を寄せた。

「・・・そうだな?・・・本当に、そう思っているのか?」
「何が言いたいんだ、おまえは」
「わからないと言うつもりか?それとも、俺のいない場所で玉城と南に吹き込むつもりか?俺が、黒の騎士団を裏切っていると、嘘を吹き込むつもりか?」
「だから、何の話だ!?どうしたんだおまえは!」
「本当にわからないのか?なら、やはりおまえは永田のふりをし他偽物だ。死んだあと俺達を見ていたという嘘を吹き込んで、俺達をどうするつもりだったんだ?」
「落ち着け扇」

おかしい、異常と言ってもいいぐらいに扇は興奮していた。
なんだ?何を言っているんだ?
永田は困惑するしか無かった。何の話なのかちゃんと内容を話してくれればいいのに、こんな言い方では見当もつかない。俺は幽霊かもしれないが、超能力者ではないのだ。人の頭の中で考えていることなどわかるはずがない。
なんだ?何かヤバイもの、幻覚を見せるようなものでも拾い食いしたのか?

「俺は落ち着いている!」

どこがだよ、と言いたいが、火に油を注ぎかねない。
扇はこんなふうに感情をぶつけてくるタイプだっただろうか?
この島で生活する扇は、普段の扇とは明らかに違った。精神が不安定すぎるし、疑心暗鬼になりやすい。玉城と南は元に戻ったようだが、扇は明らかに悪化している。
藤堂たちと違い屋外生活には慣れていない。戦争後も、なんだかんだ言ってそれなりの部屋で一人暮らししていたのだ。ブラックリベリオンの頃は、いい部屋に移っていた。だから、この環境に馴染めず精神が不安定なのかもしれない。

「おまえが何の話をしているのかわからない。落ち着いて、わかるように言ってくれ」
「しらばっくれるな。千草のことだ!」

千草?誰のことだ?と考えすぐに気づいた。

「ああ、あのブリタニア軍人のヴィレッタ・ヌウの事か」

千草のことは誰にも話していないのに、永田があっさりとブリタニア軍人だと言ったことで、扇の中の何かがぷつりと切れた。


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うつ伏せのまま川を流れてくる人は姿かたちから明らかに男性だった。

「スザクくん!」
「はいっ!」

師弟は即座に道着を脱ぎ川に飛び込んでいた。

「あの服装は・・・まさか」

卜部が我が目を疑っている間に、二人は流れてきた人物にたどり着き、川岸へと運んできた。その顔を見て、確信する。

「永田だ」
「永田?さっき話しに出てた、扇たちのところにいるはずの?」

引き上げられた男性を診ていたラクシャータが尋ねると、卜部は「そうだ」と答えた。だが、どうしてここに、しかもなぜ川から流れてきたのだろう?

「どうだ、助かりそうか?」
「心停止しているわ。呼吸もない。人工呼吸と心臓マッサージ、やってみましょう。朝比奈、手伝って」

藤堂とスザクは今脱いだ道着を着ているところだ。となれば、朝比奈が適任だろうと、ラクシャータがマッサージを、人工呼吸は朝比奈がおもなったが蘇生はしなかった。

「なんでこんなことに・・・川で溺れたのか?」

サバイバル生活中なのだ、何かの拍子で命を失うことはあり得る
釣りの最中に足を滑らせたのかもしれない。
重苦しい空気の中、最初に口を開いたのはルルーシュだった。

「悲しいことだが、時間は戻らない。これを教訓に、同じ過ちを犯さないようにしよう。・・・墓を、作らなければな」

幸い、一度死んだ人間だった。という言葉は口にはしなかった。
すでに息をし、存在している以上、死者も生者も関係ないのだから。

「・・・待ってルルーシュ、お墓は後よ。卜部、あんたあっちに戻らない方がいいわ。これ、事故じゃないもの」

ラクシャータの固い言葉に、周りを囲んでいた皆が一斉にラクシャータを見た。

「どういうことだ?」
「これを見て」

ラクシャータの示した場所を見て皆が息を呑んだ。
永田の首に、明らかに人の手だとわかる跡があったのだ。



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平和すぎたので・・・
やらかしてもらいました・・・
あと、ミステリー読みたいです・・・

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