いのちのせんたく 第156話


「話はわかったが、今すぐ戻ることには賛同できない。今戻れば犯人が混乱し何をするかわからず危険だ。あちらの陣営で永田を殺害した人物の頭を冷やしす時間が必要だろう。おそらく、襲ったのは1人で、残る2人は今回の件を知らないはず。平常心を保った人間が二人いればしばらくは問題なく過ごせるはずだ」

話を聞き終えたルルーシュは、二人を止めた。

「でも、俺たちは死ぬわけじゃないし」
「たとえ不老不死でも駄目だ。それに、こちらにも予定がある」
(なにかあるのか?」

卜部の問にルルーシュは頷いた。

「一つは釜戸周辺の改修で、永田に指揮を取ってもらいたい。そしてもう一つは、第2拠点への物資の移動だ」
「第2拠点?どこそれ?」

僕知らないよ?と、スザクが言った。

「これから作る。みんなの話を聞く限り3つの拠点の中間点にあるという場所は新たな理想的だ。寝泊まりできる空間を作り、保存食も置いておけば、万が一この拠点の戻れなくても、数日過ごすことが出来る」

急に天気が変わりこの拠点に戻れなくても、第2拠点に避難できれば生存率も上がる。何より第2拠点を中心に行動できれば探索範囲も広がる。

「なるほどな、となれば残る問題は水か」

納得納得と、ぶどうを口にしながらC.C.が言った。
保存食は今までの経験から沢山用意することは可能だ。
なんなら毎日誰かがこの拠点から第2拠点まで食料を運んでもいい。

「そう、水が最大の問題なんだ。井戸を掘る事も考えたが、おそらく掘っても出てくるのは海水だろう。理想は水樽だが、今は隙間なく木を組む技術が足りない」

水筒で最低限の水を運ぶことは可能だが、その量は限られいる。
拠点としてある程度の生活をするなら、多くの生活用水が必要なのだ。

「とはいえ、生活水問題はまだ後の話だ。現段階では移動の中継点として利用できるだけでも十分だろう。一夜の宿があるだけで気持ちも楽になる」

なにせ結構な距離を歩くのだ。今までは休める場所がないから強行軍で往復していたが、あの場所で休めるのなら、無理のないペースで植物などを採取しながら移動することも出来る様になるだろう。

「でもさ、あの場所に拠点って危険じゃなか?」

扇たちもヴィレッタもあの場所を知っているから鉢合わせする可能性もある。最悪この拠点を知られるかもしれない。

「たしかに、第2拠点に誰かが来る可能性は否定しない。だが今は、それぞれが生きるのに必死になっているはずじゃないか?」

数時間の距離への移動にはそれなりの準備が必要だ。だが、今までの話から察するに、どちらもその域に達していない。だからこそ、今のうちに歩を進め、探索範囲を広げるべきだ。特に卜部の言う何かを調べに行く際は、C.C.を連れ、自分が行くべきだとルルーシュは考えていた。中継地点を作り、休み休み行く前提で計画するのだから文句は言わせない。

「なるほど、ではこの家は今日中に形にしてしまおう。卜部、朝比奈」
「「はい!」」

藤堂は卜部と朝比奈を連れ、作業に戻った。骨組みはすでに終わっており、千葉とカレン、仙波はこの間も床材張り作業を続けていたのでだいぶ形になっていた。これから壁を作り、階段、2階の床と作っていく。

「スザク、おまえも行け」
「え!?あー、でも・・・あ、ルルーシュも行こう!現場監督は現場にいなきゃ!」
「わかったから引っ張るな。兄さんたちは釜戸周辺の改装予定を立ててください」

家は今日明日中に完成させ、塩田の方も終わらせなければ。
畑の拡張、罠の追加設置にとやることは他にもあるのだ。

「わかった。ここは任せてくれたまえ」
「お願いします」

早く早くとスザクに手をひかれながらルルーシュはその場を後にした。

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