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「病気や怪我になった時点で、何だった?ルルーシュ」 「・・・」 「僕は何度も言ったよね、無理はするなって。もしかして、聞こえてなかったか?」 「・・・」 「君は昨日の夜、何してた?」 「・・・」 「僕とクロさんが眠った後、君は何処で何してたんだ?」 「・・・」 「左腕は使わないよう言ったと思うけど?それでなくても、痣だって多少薄くなった程度で、まだ残ってるんだよ?」 「・・・」 「いつも奥に寝る君が、珍しく入り口で寝たいって言うから許したけど、まさか夜中に抜け出すためだとは思わなかった」 「・・・」 「で、夜目の効かない君が、いくら満月で明るいとはいえ、夜中に抜け出して何してたんだ?」 「・・・」 「明け方になるまで気が付かなかった僕も悪いけど、勝手に抜け出したりするからこういうことになるんだ」 「・・・」 「あー、スザク。気持ちはわかるが、今はルルーシュを休ませるほうが先じゃないのかな」 洞窟の入口付近、朝日が入り明るくなってきた場所に、ルルーシュは横になっていた。 ルルーシュの横には胡座をかき、腕を組み、眉を寄せ完全に説教モードに入っているスザク。平然とした顔はしているが、明らかに顔が青白くなっていて、横に寝かされているルルーシュ。無言のルルーシュと、説教モードのスザクをオロオロと見ているクロヴィス。 「俺は大丈夫だと言っているだろう、お前は心配しすぎだ」 「そんな青い顔で何言ってるんだ。いいか?今の君には解らなくても、疲労が溜まりすぎて、体に限界が来てるんだ。復調するまで・・・いや、僕がいいと言うまで休むこと。食事も僕とクロさんでどうにかするから心配しなくていい」 「大丈夫だと言っているだろう」 「駄目だって言ってるだろ。黙って言う事を聞け、ルルーシュ。それとも本当に折ろうか?」 完全に据わった眼で見下ろしてくるスザクの言葉に、クロヴィスは真っ青な顔でルルーシュを庇うように覆いかぶさった。 「お、折る!?何を折る気だスザク!これ以上ルルーシュを傷つけてどうする!?」 「毎日何度も無理するなって言ってるのに、ルルーシュは動きすぎる」 「分かった、分かったから折るのは無しだ!いいね、ルルーシュ。今日は寝てなさい。いいね?返事は?」 じっと睨みつけてくるスザクと、泣きそうな情けない顔で見つめてくるクロヴィス。 「別に、疲れてないんだが」 「病気のせいで気づいてないだけだ。いいか、君の体は過労で限界なんだ。無理をしてこれ以上体が悪くなったらどうするんだ?動けないお前の看病をしながら、俺とクロさん二人で生き延びろと?ふざけてるのか?」 「スザク、これだけ言えばルルーシュも大人しく寝ててくれる。だから、もういいだろう?」 怒気を込めたスザクの言葉に、クロヴィスはもういいだろうと、スザクを止めた。 口を一文字に結び、不機嫌そうにルルーシュを見下ろしていたスザクは、クロヴィスのその言葉に、あからさまに大きなため息を付いた。 「水はここにあるから、できるだけ水分は取ること。あー、こうなるとトイレを離れた所に作ったのが仇になるよな。でもまあ、その辺ですればいいか。クロさん、今日は出来るだけルルーシュのそばに居てもらえますか?」 「ああ、わかっている。この洞窟の外で、木を削っているよ」 スザクは立ち上がると、そう言いながら外へ出た。 クロヴィスもその後に続き、洞窟の入口の上に纏めて紐で縛っていた簾を下ろすと、ルルーシュの居る場所は、僅かな光は隙間から入るが、薄暗くなり、風も遮られた。 この分では何を言ってもスザクもクロヴィスも休めと言って聞かないだろうと、ルルーシュは今は諦めることにした。 顔が青いと言っていたか。ここ最近まともに眠れていない事で貧血気味なのかもしれない。目を閉じるだけでも多少は良くなるだろうか。痛みも、疲れも、眠気も、何も感じていないのに、横になるのはおかしな気分だ。食事の用意ぐらいしか自分にはできることがないのに、それをするなと言われてしまったら、本当に役立たずとしか言い様がないな。 眠れないだろうと考えていたルルーシュだったが、目を閉じてわずか数秒後には、まるで電池が切れたかのように、意識が途切れ、深い眠りについた。 洞窟の外には、竹の棒で枠を作り、簾で囲って作った日陰が有り、その日陰の下にクロヴィスの作業場が作られていた。 竹を組んで作った椅子と、作業用のテーブルも置かれている。これらの家具はクロヴィスが作業しやすいようにと、ルルーシュが試行錯誤しながら作ったものだった。 いろいろな種類の木材が竹を組んで作った箱のなかにあり、作りかけの箸とフォーク、スプーンが籠に入っている。 クロヴィスは疲れたように、竹の椅子に座ると、釜戸に火をつけているスザクを見た。 「さて、朝食の用意をしなければね」 「そうですね、ルルーシュ何か食べれるかな。それでなくても食が細いのに、昨日もあまり食べてなかったですよね。動きもいつもより鈍かったし、今思えば昨日のうちに気づけたはずだったんだ」 そう言いながら、暗い顔でうつむくスザクに、クロヴィスは近づき、肩をポンと叩いた。 「私も解らなかった。だからあまり自分を責めてはいけないよ。それにしても、ルルーシュの食事か。たくさんは食べられないだろうから、少量で栄養価の高いものがいいんだろうね」 「そうですね・・・う~ん、卵は使うべきだとは思うんです。僕なら肉が欲しくなるけど、ルルーシュは無理ですよね。今あるので何が作れるのかな」 今までルルーシュが工夫しながら色々作ってくれていたので忘れがちだが、今はサバイバル生活中なのだ。今ある食材で病人が口にできるものがあるのだろうか? 洞窟の外に保管されている保存食の籠と箱の中を覗きながら、クロヴィスは顎に手を当て、何が作れるか考え始めた。 「干し肉干し魚、燻製、ドングリ、栗、胡桃、じゃがいも、大根、人参、きゅうり、りんご。材料は沢山あるのだが、・・・自分で作ったことなどないから、何も思いつかないね」 「僕もです。お米があれば、卵と塩でおかゆを作るぐらいしか思いつかないです。この林檎は酸っぱいからこのままだと食べにくいでしょうし。ルルーシュなら何か考えつくんでしょうが」 「そうか、ルルーシュに聞けばいい。横になりながらでも話はできるだろう?」 クロヴィスはいいアイディアだろう?と明るく笑いながら洞窟の簾をめくったが、すぐに簾を元通りおろした。苦笑しながら、スザクの方へ戻ってくると、小声で話し始めた。 「やはり疲れていたんだね、ぐっすり寝ているから起こすのはやめておこう。となるとルルーシュの朝食は、とりあえず要らないね。お昼までになにか考えよう。朝食で色々試してみてもいいかもしれないね」 いい考えだと楽しそうに笑うクロヴィスを見ていると、ネガティブになっていた思考が晴れていく気がして、スザクも釣られて笑っていた。 「いい加減臭いんだよ!川で体を洗って、その服も洗えよ!」 「ああ?何が臭いってんだ?だいたい着替えもないのに洗ったりしたら風邪引くだろ!?」 「温かいんだし、焚き火があるから大丈夫だよ!大体、そんな汚い状態でいるほうが病気になるだろ!いいから近寄るなよ!鼻が曲がる!」 この場所にきてから一度も着ている服を洗うこと無く、最初の数日以外川に入ることもなくなった玉城の匂いに耐えかねて、朝比奈は声を荒らげてそう言った。だが、玉城は臭いと言われたことは心外だと、朝比奈との距離を詰めながら反論してくる。歯も磨かず、髭も剃らず、体も洗わず、服も洗わない。不衛生で悪臭もひどいその姿に、仙波も思わず眉を寄せ、距離をとった。排泄に関しても、特定の場所でとか、穴をほってと何度言っても聞かず、所構わず彼らはするので、その匂いも酷いものだった。 扇と南も似たような状況ではあるが、まだ玉城よりは体を洗うし、服もたまに洗っているため、玉城ほど酷くはない。木の枝で歯を磨くことにもだいぶ慣れてきていた。 玉城も自分の状態に気がついているが、朝比奈に文句を言われるのが気に入らないと、半ば意地になっているところもあるようだ。朝比奈が玉城達に腹を立てているのはそれだけではない、やはり長期戦となるのだから、河原での生活をやめ、あの洞窟を拠点にすると藤堂が決断し、荷物を移動しようとした時、河原に居なければ火を目印に救助が来れないし、自分たちだけに火の番をさせるつもりかと玉城は食って掛かり、火の番をしたいのであれば今まで通り交代すればいいだけで、河原で全員が就寝する必要はないと、藤堂が説明したことにも腹を立てた玉城は扇、南とともに、洞窟内に汚物をまき散らし、使用できないようにしてしまった。野生の動物が出た時のことを考えれば、全員一緒に河原にいるべきなんだと、ニヤニヤ笑いながら言う彼らに、この状況下で精神的に病んでしまったのかもしれないと、藤堂は今後起こりうる最悪の事態を想定し、新たな拠点探しを始めていた。 なにせ、水は生きる上で必要なものだ。川の下流へ移動すれば、彼らが何を流すかわからないし、同じ川である以上着いて来るだけだ。上流への移動も同じこと。ならば別の水源を見つけ、彼らに気付かれないよう、その場所へ移動するしかない。川を下れば海はあるが、海へ行っても、彼らも着いて来るだろう。 長くここにいるわけではない、誰かが助けてくれると他力本願な彼らは、自分たちだけという状況にでもならない限り、藤堂達に頼りきり、なにもしないだろう。この環境でストレスが溜まるんだと威張り散らし、喧嘩を売る以外何もしていないに等しいのだ。このままでは共倒れは避けられない 早くしなければ。藤堂は焦る気持ちを抑えながら、今日何処を探索するべきか考えていた。 ・ルルーシュ・ *夜中徘徊していた。 *体調はかなり悪い。(自分の体調不良に気づけない) *左腕と痣はまだ治っていない。 →スザクへのウザい度が若干上がった。 ・スザク・ *かなり怒っている。 *かなり心配している。 →ルルーシュへの友情度が回復した。 →ルルーシュへの過保護度が上がった。 →クロヴィスへの信頼度が上がった。 ・クロヴィス・ *二人を心配している。 →ルルーシュへの過保護度が上がった。 →スザクへの保護者度が上がった。 騎士団組は不衛生すぎて病気になりそうだ。 とりあえずルルーシュを行動不能にしました。 これでやっとスザルルクロ組も苦労すると思う。最低でも食事面で困るはず。 でも、手は出さなくても口を出したらあまり変わらないかな? |