|
ダールトンの話を聞いて、クロヴィス、卜部、永田は深い溜め息をついた。 コーネリアの拠点はユーフェミアが加わることでどうなるか未知数ではあったが、肉体労働がヴィレッタに重くのしかかってしまっている以外特に大きな問題はないように思えた。これは今後ダールトンが加わることで改善されるし、ダールトンは3拠点の地理も把握しているので、何かあったら三人を連れてここまで来ることも可能になる。 力仕事のできる者が圧倒的に不足していたコーネリアたちの拠点もこれで安定するだろう。中継基地が完成した後はクロヴィスや卜部、永田たちがこっそりダールトンと連絡をとりあうことも楽になる。 コーネリアから隠れて行動するのは大変だが、幸い彼女の行動範囲は限られているので、川の下流や海の近くなら十分隠れ住める。食料も豊富でサバイバル知識はルルーシュの拠点を見て得たものも多いので、生きるのに困ることもない。生活に必要な寝袋なども発見し、隠してからここに来ている。 ダールトンの参加でコーネリアたちへの不安は解消された。 これは、大きな収穫ではあるが。 「やはり問題になるのは、扇のようだね」 クロヴィスは、やれやれと首を振った。 一番最初に実体化したクロヴィスは、扇たちがどんな行動をとっているのか藤堂たちとユーフェミアや卜部、永田から聞いている情報だけで判断するしかなかったが、ダールトンの話で想像以上に状態は悪いと判断した。 食料と水が豊富なこの島なら、男が三人いれば十分に生存が可能だ。 永田のおかげもあり、玉城たちの心構えも変化し、不安要素はかなり解消されたため、そういう意味ではコーネリアの拠点同様不安はかなり減っていた。 ここで問題になるのはひとつだけ。 あちらで三人頑張ってくれればいいが、もしこちらに来た時どうなるか。 「中継基地が完成したら、ルルーシュたちは扇の拠点に向かう予定だったが、現状では危険だな」 卜部は頭が痛いと言いたげに、額の手を当てていた。話を聞いた永田は顔が真っ青だった。扇がそこまで追い詰められているとは・・・いや、自分を殺したのは追い詰められた結果だとは思うが、永田が消えて不安要素が無くなったのだから、落ち着いたと思っていたのだ。 だが、罪悪感からか精神が追い詰められているようだった。 「幸いと言えるのは、扇は玉城と南を疑っていないことだが、それもいつ崩れるかわからないと考えたほうがいいだろうね」 楽観視したいところだが、起きてはならない犯罪がすでに起きた以上また次が起きる可能性は高い。自分以外が偽物だったら。そんな疑心暗鬼に駆られたら最後殺し合いだ。そういう意味ではまだかろうじて一番起きてはいけない状態は避けられた。・・・今のところは。あの拠点を見ているものは他にも居たはずだが、扇の行動を見た以上あの拠点に手助けに現れることはないだろう。 「・・・つまりだ。扇は自分がやったことがたとえ死者相手だとしても犯罪だと理解していて、玉城たちに知られたらまずいという判断はまだできていたということか」 静かに話を聞いていたC.C.が、流石にそこまで厚顔無恥ではなかったかと天を仰ぎ見た。できれば、厚顔無恥であってほしかった。普通に考えれば、扇のやったことは黒の騎士団への、仲間への裏切りだ。敵である女性を匿い、肉体関係を持った。そしてその女性に殺害されかけたのに、犯人のことを黙秘し、そのまま放置した。ブラックリベリオンで指揮系統が崩壊したのはルルーシュだけの責任ではない。扇もその一旦であるにも関わらず、すべての責任をゼロに押し付けた。C.C.はヴィレッタと扇の反応でそれらの流れに気づいていたが、知らないものからすればハニートラップに引っかかった間抜けだし、内部情報をどこまで敵に話したのかわからない。今もつながっているとすればそれはブリタニアのスパイだということになる。黒の騎士団の幹部。副司令の地位にいるものがブリタニアと通じているのだ。ルルーシュがブリタニアの皇子だと知られれば黒の騎士団が崩壊しかねないとルルーシュは言うが、ブリタニアのスパイがNo2だと知られても崩壊しかねないとC.C.は考えていた。 扇は知られたときに自分がどうなるのか。裏切り者として処罰されることを恐れ・・・和を乱さないためだとかなんだとか言い訳あったとしても、結局は保身に走り、すべてを見ていた永田から情報が漏れるのを恐れ殺害した。 もし厚顔無恥なら「俺たちは愛し合っていた。情報は何も漏らしていない。それは見ていたなら知っているはずだ」と、変な自信を持っていただろうに。まわりがそれに対してどう思おうとそれが事実だし、自分はブリタニアと戦う、千草は関係ないとでも言うだろう。まるでロミオとジュリエットのように、周りには認められなくてもこれは純愛なのだと胸を張って言うかもしれない。 それはそれで問題だが、少なくても永田を殺害する道は選ばなかっただろう。 さて、どうすべきか。 死者4名とC.C.は、深い溜め息をついた。 |