いのちのせんたく 第172話


「悩んでも仕方がない。情報はすべてルルーシュに渡し、あいつの判断に任せたほうがいい」

周りが無言になって5分ほど経っただろうか。C.C.はルルーシュに丸投げすることを提案した。そもそも裏でコソコソ動いたところでルルーシュは気づく。あいつの裏をかける人間はここにはいない。下手をすれば勘のいいスザクにも気づかれる危険がある。ならば、扇が永田殺しの犯人だと気づいている・・・扇がヴィレッタに何をしたか知ってる面々でもあるが、彼らとも情報を共有し、最悪を想定し対処するべきだ。
C.C.と死者4人は殺されても蘇生する可能性が高い。C.C.に関してはその場で蘇生してしまうからいろいろとまずいが、それでも生き返れる。だから最悪盾になることは出来るが、それは本当に最終手段とすべきことだ。
そうならないよう対処するには今いる面々だけではなく、ルルーシュや藤堂、ラクシャータにも情報を共有し、より良い案を探るほうがいい。

「そうだね。あの子に負担ばかりかけるが、隠すことで別の問題が起きるのは遠慮したいものだ。・・・そもそも、私達は最後まで共にいれらる保証もないからね」

なにせ普通であれば交流ができないはずの死者だ。どうして今ここに居るかなどわからないし、いつ消えるかもわからない。そうなればC.C.しか情報を知るものがいなくなる。女性陣はC.C.を信頼しているが、男性の中には・・・特にスザクはC.C.を信頼していない。スザクと四聖剣を抑えるためにも、藤堂というカードは有効に使うべきだ。

「それで、ユーフェミアからの伝言とはなんだ?」

卜部がダールトンに、そんな話をしていただろうとたずねた。

「ああ、それなんだが、近い内にまた雨が降る可能性が高いそうだ」
「それは本当か?」

予想外の情報に、あたりはざわめいた。
この島で雨が降ったのは今まで1度きり。
しかも洪水と言っていいレベルの大雨だった。

「雨量がどのぐらいかは不明だが、警戒はしたほうがいい」
「道具類も回収し、洞窟に避難するべきだな」

保存食は充分あるが、野菜類など洞窟に蓄えて置く必要もある。
釜戸と中継地点用の資材も養生し、出来る限りリセットされないように手を打たなければ。

「雨が降ると事前にわかった以上、この拠点は問題ない。姉上たちのことは頼む」
「イエス・ユアハイネス」
「問題は・・・やはり扇たちか」

どうしたものか。

「一応、また雨が降った時の事を考えて、道具は常に洞窟内に片付け、薪も用意し、芋のように保存のきくものは洞窟内の木箱に蓄えるように言っておいたが・・・」

永田がいなくなった後どこまでやってるか。卜部は、おそらくほぼゼロだろうなと予想した。前も水と食料なし、そのうえ雨風をしのげる場所もない状態で耐え抜いたのだから、道具を失わなければどうにかなるだろうが・・・

「・・・やっぱり、俺、戻ります」

今まで静かにしていた永田が、意を決したように言った。
馬鹿か?と呆れためを全員が向ける。

「ダールトンの話が聞こえていなかったのかね?ようやく扇が落ち着いてきたところにお前が行けばどうなるか。想像ができないほど馬鹿ではないだろう?」

あの拠点に向かうことを許すわけにはいかないとクロヴィスは言った。永田は全て知っているから口封じをしたのに、永田の死体が消えた。そこでまた現れたらまた殺されるだけだ。いや、もっとひどいことが起きるかもしれない。

「だけど、あの大雨がきたら次は無事でいられるかわからないだろ!」

自分を殺した・・・まあ、すでに死者・幽霊とはいえ殺されたことに変わりはないのに、それでも心配なのか。人が良すぎるとクロヴィスは額を抑え、卜部はそれは認められない、みなが危険になると叱りつけた。当然ダールトンも同じ意見だ。おかしくなった扇がコーネリアたちのところに行かないとは限らない。この島の空間が歪み奇妙な形で接続され、ときには何かしらの作用で場所が転移されるのであれば、狂人となった扇が突如現れ皇女たちに危害を加える可能性は十分ありえるのだ。
それはこの拠点も同じ。
カレンたちを危険に晒すことになる。

「私が見た限り、玉城と南が動くようになっていた。お前たちに言われたことをゆっくりだがやり始めている。心配なのはわかるが余計な手出しはしないことだ」

少し前まで見ていた側のダールトンが言うと、永田は言葉を飲み込んだ。ダールトンも今すぐコーネリアのもとに馳せ参じたいはずだ。皇女である二人がこんな原始的な環境で泥に塗れ汗を流しているなんて、本来あってはならないこと。全て自分がやると請け負い、二人を少しでもいい環境で、優雅に過ごせるよう出来る限りのことをしたいが、それを抑えているのだ。
死者ではあるがユーフェミアは確実に成長している。
そして彼女は、コーネリアをより良い為政者とすべく、彼女なりに考え奔走している。再会したこの奇跡に感謝し、愛する姉に何かを残したいと思っているのだ。その思いを踏みにじることは出来ない。
だから静かに見守ることを選んだ。
永田もダールトンと同じく、今は見守る時なのだ。

「では、私はコーネリア様とユーフェミア様の元へ戻ります」

話べきことは全て話し終えたと、ダールトンはクロヴィスに一礼した後この場を立ち去った。

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