いのちのせんたく

第 178 話


「食事は順番にとってくれ」

家の中も洞窟の前のスペースも回収した道具や食料で溢れてしまっているため、今までのように全員一斉に食べることはできない。
だから食べれるものから食べてくれとルルーシュが言うと、若者が先に食べろと仙波が口を挟んだ。若者のほうが食べるのが早いからだというが、片付けをし終えた後のんびり食べながら晩酌をしたいという意図もあるのだろう。
腹を減らしていた若者は仙波の提案に賛同し大喜びで席についた。

「あーもーお腹すいた」
「カレン、行儀が悪いぞ」
「ルルーシュママー!大盛りでお願い」

まるで母親のように注意するルルーシュに、カレンはふざけながら言った。今度の大雨は何事もなく乗り越えたいカレンたちは全力で動いていたのでクタクタに疲れているのが誰の目にも明らかだった。ルルーシュは言われるまま大盛りにした皿をカレンの前におくと、カレンは大喜びし早速料理を口に運んだ。

「僕も手伝うよ」
「いやいい。それよりさっさと食べて周りを片付けてくれ。このままじゃ寝る場所もない」

箱や入れ物にできるだけまとめていたが、あたりは物で溢れている。洞窟内も荷物だらけで家は2階のスペースにも今は物が置かれている。屋上・・・崖の上にもいくらかおかれいている状態だ。雨や嵐が崖の上にどれだけの影響を与えるかわからない以上、屋上には物を置いてはおけない。すべての資材を洞窟か家に収め、さらには全員が眠れるようにしなければ。

「・・・わかった。でも、無理はしないでね」
「わかっている。ほら、お前の分だ」
「わぁ、おいしそう!いただきます」

スザクはカレンの隣に座ると料理を口に運んだ。

「ごちそうさま。仙波さん、交代します」

カレンより先に戻ってきて食事をしていた朝比奈が食器を片付けながら仙波に声をかけた。仙波は道具類をまとめ、今すぐ使わないものを紐で縛ってまとめると、洞窟へと運んでいるところだった。
洞窟の天井は高い。薪などは崩れないよう山積みにしているが、できるだけ床のスペースを開けたいので、長くて丈夫な竹を天井部分につっかえ棒の要領で張り巡らし、軽くてあまり使わないものをまとめてそこに収納していたのだ。
荷物を置くのも下ろすのも大変だし、それなりの重さのものを担ぎ上げ、高さのある箱などを足場にしなければならないため、仙波は軽く息が上がっていた。いくつか収納は作っていたが、大雨に備えてこの洞窟の高さを活かせる収納を作る余裕がなかったことが悔やまれる。

「いや、私は最後でいい」

やりかけで放置するのも、途中から朝比奈に渡すのも悪手に思えた仙波は、朝比奈に収穫した魚介類の処理をするよう指示を出した。これらの生物は燻製にするため、はやくに下処理をしたほうがいいだろう。燻製器を並べる場所も確保しなければいけないと、仙波は作業を続けた。

「すごい量ですね・・・」

大きなかごを抱え、息を切らせながら坂を登っていたセシルが、どこに置けばいいのかしら?とあたりを見回した。洞窟前のスペースは食材や道具が溢れていて、新たな荷物を置く場所がないのだ。その後ろを歩いていたラクシャータは抱えていたカゴを地面に置くとあたりを見回した。

「そうねぇ・・・スザク!雨の時、あのあたりも水に沈んだのかしら?」

ラクシャータは食事をしていたスザクに声をかけた。

「・・・いえ、あの辺りは大丈夫でした。トイレも使えましたので」

ラクシャータが示した場所は、トイレへと続く道だった。

「そうよね。前回使えなくなってたなら移動してるわよね」

ルルーシュが一度水没したところにトイレを設置したままにするとは考えにくい。予想通りあのへんは大丈夫かとラクシャータは再び荷物を持ち上げた。

「じゃあコレはあちらに置くわね」
「あ、僕が運ぶので、そのままでいいですよ」

そう言いながらスザクは慌ててご飯をかきこんだ。

「ちゃんと噛んで食べろ。まだ雨は降ってないんだから、慌てるな」

合間合間に魚の下処理をしているルルーシュが叱りつけた。

「う、ごめん。もぐもぐ・・・」
「ラクシャータ、セシル。二人も食事をとってくれ。坂の中腹まで沈まなかったから荷物はそこに置いたままで大丈夫だ」

二人が運んできたのはあちこちで採掘した鉱石だった。その多くは岩場に置かれているが、雨の間に色々やりたいことがあるからと、必要な分だけ運んできたのだ。それ以外にも土器用の粘土や薪以外の加工しやすい木材もある程度坂の下まで運ばれていた。
食材や薪も大事だが、雨の日に全員がここに集まるのだからその間にやれる作業用の道具を集めておくのも大事なことだった。

「野菜類も多いわよね。どうするのこれ?さすがに傷むわよね・・・・漬物とかにする?」

食事を終え、ラクシャータと席をかわったカレンが、あちこちに置かれていた野菜類をまとめながら言った。栽培しているものをすべて収穫したわけではない。畑にしているあの場所も、前回の水難を逃れているから、前回同様の雨量ならトイレ方面から遠回りすれば畑にも行くことができるからだ。雨がやんだあとのことも考えて、収穫量は調整している。とはいえ前回の倍の日数持つ程度の量を確保したため、なにせ量が多い。人数も多いから仕方がないのだが。

「漬物にするのもたしかに手だが、大根などの根菜は洞窟内に吊るしておくのはどうだ?」

もともと漬物は樽で作っているが、予備の樽はないから量産は難しいいし、そもそも塩がたくさん必要になるから良策とは言えない。それなら涼しい洞窟の奥に吊るしたほうがいいと、仙波が作業の手止めずに言った。

「事前に野菜類は干してておくべきだったな」

干した野菜で代表的なのは切り干し大根だが、きゅうりや人参などの野菜も乾燥させておくことで日持ちがする。ただ、密封できる容器がない以上湿気てしまうため積極的には作っていなかった。きのこ類を干して保存しているのだから、今からでも干せるものは干すべきだろう。

「燻製にすればいいじゃない。燻製にしたあと漬物にしたりもするのよ」

小さい頃お土産で食べたことがあるのよねとカレンが言った。
燻製にすることで水分を飛ばし雑菌を殺し保存するのは昔からの保存方法だ。水分が飛べば飛ぶほど食べにくくはなるが日持ちがする

「野菜を燻製にだと・・・?」

信じられないことを聞いたと言いたげにルルーシュは眉を寄せた。

「あら、それならナスやきゅうりとか美味しそうね」

チーズだって燻製にすると美味しい。野菜も燻製にすれば酒のつまみになるかもしれない。

「・・・先に言っておくが、燻製にすると風味が独特になる。野菜によってはまずくなるから、大根と芋ぐらいでやめておけ」

仙波が眉を寄せながら言った。もしかしたら過去に挑戦した経験があるのかもしれない。
野菜の燻製。どんなものなのかルルーシュは興味を持ったが、ルルーシュ以上にセシルが興味を示し、試してみたいと選んでいた茄子と胡瓜は燻製には悪手で、食材の無駄になるためやらないでほしいという仙波の視線にルルーシュが気づき、ここでちゃんと指示を出さないとまずいなと口を開いた。
「今回は大根で試してみるか」

カレンの言う燻製の漬物は大根だろう。そのままで食べられないならつけてしまえばいいと考えたのだ。

「では1本燻製用に準備をしておこう」

仙波がホッとした顔で頷いた。
食事を終えたスザクがセシルとラクシャータが持ってきた鉱石をトイレ方面の高台に運んでいる間に藤堂・千葉・卜部が戻ってきた。三人は木材などが流れないように最終確認をして戻ってきたところだった。
作業をするにも食べるにもますます手狭になってきた。

「カレン、先に風呂に入ってこないか?」

いつの間にか戻ってきていたC.C.が野菜をまとめているカレンに声をかけた。

「そうね。今夜振り始めたら次いつお風呂に入れるかわからないものね。・・・ルルーシュ!私達温泉行ってくるから」
「ああ。暗いから松明を忘れるな」
「はいはい」
「まだ河原の焚き火が消えてないし、あいつらもいるからいらないんじゃないか?」

C.C.が指差した先には焚き火そばにいる永田とクロヴィスが見えた。
なにやら熱く話をしているようなので、おそらく陶器の話だろう。

「・・・二人に食事をするよう声をかけてくれ」

あそこで雑談しているということは、岩場の養生を終えたということだろう。
台風でも来ない限り窯は壊れないだろうから、あちらの資材の多くは窯の中に入れ石で入り口を塞いで雨風から守る手はずになっている。

「はーい」
「私は後で食べるから、ちゃんと残しておけよ」

そう言いながら二人は着替えを持って温泉に向かった。



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久々に書いたけど、ルルーシュ拠点人多すぎ・・・
これで全員だろうか・・・・(不安)
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