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「・・・焼けたな。・・・焼けたが・・・」 石窯を使い、どんぐり粉を練ってパンを焼いた。 そこまではいい。 昨日からその話はしていたし、石窯が出来れば焼きたいとは思ってた。 だからこうして焼いて、香ばしく焼きあがったものを見て、流石俺!完璧だ!と、言いたい。言いたいのだが。 「うわぁ。さすがルルーシュ!凄く美味しそうだよ!」 ふっくら焼きあがってるしいい匂い! 「本当だね。ルルーシュはパンも焼けるのか」 さすが私の弟だ! 「いやまて!違うだろう!!こんな作り方でふっくらとしたやわらかなパンは焼けないはずだ!!どうしてそんな風に焼けたんだ!!」 イースト菌やベーキングパウダーもないし発酵だってろくにしてなかったんだぞ!? 「ん~まあ、今更でしょ?」 「気にしたら負けだといったのはルルーシュじゃないのかい?」 「ああ言った!言ったが!!あの材料、あの作り方でこんなふうになるなんて!コレじゃ俺の予定していた昼食が作れないじゃないか!」 ルルーシュが怒っている方向が予想外過ぎて、スザクとクロヴィスは一瞬自分の耳を疑った。 「そっち!?ふっくら焼けたことが信じられないから文句言ってたんじゃないの!?」 「馬鹿か!今さらそんなこと気にするか!俺のイメージした通りに焼きあがらない事が問題なんだ!確かに最終的にはこのレベルのものを作りたかった。ああそうだ、ここまでのものを作る予定ではあった。だが!それは今じゃなかったんだ!!」 もっと膨らまず、冷めたら硬くてなり、食感も悪いだろうモノを予想していたんだ!そしてそれにあわせた昼食を予定していた!俺が予定してたのはこれじゃないんだ! ルルーシュは納得がいかないと文句を言い続けた。 スザクとクロヴィスとしては、最終的な目標が、手順はどうあれ完成したならいいじゃないか、美味しそうだからいいじゃないかと思うのだが、此処で口を出したら確実に機嫌を損ね、回復に時間がかかってしまう。 だが、このままだとせっかく美味しそうに焼きあがったパンを食べ損ねる可能性もあるなと、クロヴィスはコホンと咳払いをした後口を開いた。 「ルルーシュ、君の気持ちはわかった。では、このパンは今日は使わないのかな?」 「使いますよ。使うに決まっているじゃないですか。・・・仕方ない、予定変更だ。このパンは朝食に使って昼は麺にします」 その後、素晴らしく美味しい朝食が用意された。 香ばしく焼けたベーコンエッグを口にしてスザクは美味しいと満面の笑みを浮かべた。 「あれ?でもこれってベーコンだよね?」 「ウサギ肉のベーコンだ。ウサギ肉は量が多いから、ハムも作った。そちらは昼食に出すつもりだ」 「ハムも作ったのかい?ルルーシュはなんでも作れるんだね」 ベーコンと卵、山菜の入ったスープを美味しそうに口にしながら、こういう加工食品は専門の道具と技術が必要だと思っていたよ。と口にした。 「この程度なら家庭で作る人も多いですし、俺にも作れはしますが、臭み消しの香料などが足りませんからね。味の保証はしませんよ?」 なにせナナリーの体にいいだろうと、この類いの加工品やパン、ジャムなどは自作していた。ゼロを始めてからは殆ど作らなくなったが、その経験がこんなところで生きるとは思わなかった。 「いや、十分美味しいよ。私はこんなに美味しいベーコンは初めて食べた」 本心からだと分る笑みを乗せ、クロヴィスがそういうので、ルルーシュは若干照れながら、大げさですね。と苦笑した。 「兄さん、石窯はどうですか?焼き物は作れそうですか?」 「今日幾つか試し焼き用の器を作って、明後日試し焼きをしてみるつもりだよ」 乾かす時間も必要だからね。 「薪はまだ半乾きでしたが、明後日なら問題なく使えますよ。でも、もう少し薪集めたほうがいいのかな?」 「そうだね。あの量でも足りるが、もう少しあってもいいかな」 今までのような本職の人間が作った釜ではないため、予想より薪を使うかもしれない。 「なら俺も一緒に行こう。切って欲しい木があるんだ」 「そう?なら行こうか。なんかルルーシュと探索って久しぶりだな」 「雨が降っていたからな」 あの大雨でどれだけ森が荒れたかは想像したくはないな。 「なら気おつけて行っておいで。私は洞窟前の作業場にいるから、何かやっておくことはあるかい?」 「いえ、今は特にありませんから、制作に集中してください」 「そうかい?じゃあ、粘土に集中しようかな」 粘土を捏ねるのは久しぶりだと、クロヴィスは楽しそうな笑顔を向けたので、ルルーシュとスザクも釣られて笑みを乗せた。 |