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「つまり、ルルーシュの命令が最優先で、それに従えないなら此処には住めないよってことでいいのかな?」 C.C.の提案に、スザクは眉を寄せながらそう質問をした。 絶対に反対だと、その表情からわかる。 「そういうことだ。ルルーシュが手伝って欲しい、あれをして欲しい、これを運んでくれと言った時には従う。ただし、一から十まで全て聞けという話ではなく、先ほどのようにルルーシュが怪我をし、運んでいる最中降ろせと命じられても従う必要など無い。寧ろそういう命令は即却下していい。ああ、枢木とクロヴィスはこの話では対象外だ。あくまでもこれから来る私達の話だからな」 C.C.のその言葉にスザクはあからさまに安堵の息を吐いた。 先ほどのように。 それでは駄目なのだ。 「従えないものは従う必要はないが、あくまでもこの男を中心にここでは生活をする、という話だ。この男がやろうとしている事で手伝えることがあれば積極的に手を貸す事も加えておくか?」 どうせ一人で何でもしようとするからな。 スザクもクロヴィスも心当たりがありすぎて、それは是非加えて欲しいと口にした。 その反応に不満なのは当然ルルーシュ。 「待ってくれ。俺は唯の学生にすぎない。その俺がブリタニアの軍人や黒の騎士団がいる場所でトップに立つのは拙いだろう」 「いや、寧ろ唯の学生だからこそ君が上に立たなければならないだろう」 藤堂が神妙な顔でそう言った。 「我々黒の騎士団とブリタニア軍、何方かの人間が上に立てば必ず問題が起きる。かと言ってそれぞれからリーダーを出せば必ず対立し、この場所で争いが起きる。ならばブリタニア人ではあるが何方にも属していない君が上に立ち、所属に関係なく我々を扱うのが一番いい。それに君はブリタニア軍人であるスザクくんと、黒の騎士団である紅月とクラスメイトだったと聞いた。皆を納得させる理由にはなるだろう」 内容としてはかなり苦しいが、藤堂がそういえば四聖剣は従うだろうし、クロヴィスとスザクがそういえばセシルも従うだろう。 だから何も問題はないと藤堂は言った。 ルルーシュの指揮能力に関してはここに居る誰も疑っては居ない。 寧ろ誰よりもトップに向いている人材だ。 ゼロであるルルーシュが上にいる以上黒の騎士団のメンバーは日本人だからと粗雑に扱われることはないし、実兄クロヴィス、親友スザクが居るブリタニア軍側も勿論今までどおり生活できる。セシルは料理が殺人的ではあるが、それ以外問題のない温厚な性格だ。しかもラクシャータと古い友人だからこちらもどうにでもなる。 ルルーシュはまだ文句を言っていたが、C.C.は華麗にスルーし、話を進めた。 「ルルーシュ、私のことはC.C.と呼べ。お前の下につくのだから敬称はいらない」 その言葉に、ルルーシュは眉を寄せ口を閉ざした。 「私もラクシャータ、でいいわよ」 敬称はいらないわ。 C.C.に同調するようにラクシャータもそう言った。 「では私も藤堂でいい。後から合流する者も同じく敬称は付けずに呼んでくれないか」 実際ゼロにはそう呼ばれていたため、三人は決定事項だとでも言うようにそう言った。 「ですが、年長者を呼び捨てなど」 「いや、あくまでも君がトップで我々は部下という位置になる。だから呼び捨てでも何も問題はない」 今ここに居る黒の騎士団の中で、トップと言っていい藤堂にそこまで言われてしまえば、ルルーシュはこれ以上拒否することは出来ない。 「敬語も不要だ。そうだな、お前生徒会の副会長だったんだろう?その時の要領で頑張ればいいんじゃないか?」 C.C.はちびちびとワインを飲みながらそう言った。 口元が楽しげに歪んでおり、ルルーシュは心の中でこの魔女が!と文句を言った。 「それより、何かつまみはないか?」 見るとあれだけあった料理が綺麗になくなっていて、空の皿が積み上げられていた。 きのこ鍋も綺麗に空っぽだ。 あれだけの量をいつの間に、とルルーシュは驚き目を瞬いた。 更にはルルーシュの手元の皿には、いつの間にか料理が盛りつけられていた。 ルルーシュの反応を伺っていたラクシャータに「それはノルマだから全部食べる事」と言われた以上、これを食べろと差し出すことは出来なかった。 「・・・そうだな、干した魚を焼くか、燻製を出すか・・・」 さてどうするか。 すでに日が落ち、焚き火の明かりと月明かりだけのこの状況で、包丁を握ることをスザクとクロヴィスに禁止されている。 だからちゃんとした料理は出せないから、焼くか煮るだけのものしか出来ない。燻製にした物を煮込んで柔らかく・・・というのは時間も掛かる。となると一番簡単なのは保存食である干し魚を焼くことだな。 そう結論を出した時、C.C.の声が聞こえた。 「燻製だと?何の燻製だ?」 魚の日干しは分かるが、燻製までまで作ったのか! 「カエル・蛇・魚だな」 「なら蛇をよこせ」 「かなり固いがいいのか?」 むしろ蛇に対しなんとも思わないのか? お前女だろう? 「大丈夫よぉ、私も食べるから」 こっちでも蛇と蛙は食べてたから平気よぉ? そう言いながらラクシャータが手を振った。 「あ、私も食べたい!」 カレンも元気よく手を挙げる。 「ということは、やはりあれでは足りなかったか。ならば燻製ではなく、なにか作るか」 この分ではスザクも藤堂も食べ足りないだろう。 「ううん、燻製で十分だよ。どれ出せばいい?」 お腹は満たされているけど、酒のつまみとお茶請けに少しつまみたいだけだからね。 スザクはそういうと、燻製や干物を保管している箱に近づいた。 「蛇と蛙は全部出して構わない」 「わかった」 スザクは大皿の上に蛇と蛙の干物をいくつも乗せて、それらをテーブルの上においた。 その予想以上の量に、皆が目を丸くした。 自分たちはその日食べる分を集めるので精一杯だったのに、ここではポンとこれだけの非常食が出てくるのか。 干し魚と、燻製の魚もあるというし、生活面だけではなく食料面でも安定している事がよく分かる。 「ほほう、いい色だな。匂いもいい」 燻製は飴色になっていて、C.C.は蛇を手に取ると、くんくんとその匂いを嗅いだ。 2mはあるだろう大きな蛇だ。これは食べごたえがある。 そしてバキリと音を立ててその身を幾つかに折ると、その一つを手に取り口にした。 ルルーシュが言うようにかなり固く、パリパリと音を立てながら骨ごと噛み砕き、よく噛んでからワインを口にした。 「なかなかいい出来じゃないか」 C.C.は満足気に蛇にかじりついた。 「固っ!ビーフジャーキーみたい」 結構噛むの大変ね。でも美味しい。 C.C.が折った蛇を口にしたカレンはそう言った。 藤堂はカエルを手にし、焚き火に向かうとその身をあぶり出す。 温めることで美味しそうな匂いがあたりに漂った。 その匂いにつられ、カレンは私もと蛇を手に焚き火に近づいた。 ラクシャータも蛇をゆっくりと噛みしめるように口にする。 「不思議よねぇ?同じ島なのに、ここに居ると自然が豊富な土地に、リゾートで来たって感じがしてくるわ」 思わずポツリとそう口にした。 現地の材料で野性味溢れる料理を出す、一風変わった宿泊施設のようだ。 流れる空気もゆったりとしているように感じられた。 空を見上げると満天の星空で、ああ、星が綺麗だと思えるゆとりまで出てくる。 「リゾートは言い過ぎですよ。まあ、聞けば風呂もなく、面倒な人物に振り回される生活だったということですから、そこに比べれば此処はまだましではありますが」 多少喧嘩をすることはあるが、殺伐とした空気はここにはない。 来た当初あったはずのピリピリとした空気さえいつの間にか消えていた。 ラウンズとなってからは厳しい顔ばかりで、笑顔を見せることのなくなったスザクが穏やかに笑っていることが、一番わかり易い変化だろうか。 「ルルーシュ、敬語は使わなくていいわよ?まあ、あいつらが居ないのは大きいわねぇ」 でも、どう考えてもそれだけではない。 今まで自分たちが感じていた不安も焦りも、此処では感じない。 今朝までは文明の欠片もない洞窟生活だった。 たしかにここも同じような洞窟生活だが、雰囲気は全く違う。 竹製とはいえ家具が置かれた事で文明を感じられるからなのだろうか、それともやはりしっかりと生活基盤を整えた状態で生活している三人が、どっしりと構えているからだろうか。 あの場所では今日を生きるのに必死だった。 でもここなら明日への希望を持てる。 クロヴィスの話を信じるなら、この状況を生み出し管理しているのはゼロであるルルーシュ。そのルルーシュの管理下に入るのは悪くはない。 ラクシャータと藤堂は、今まで重たく伸し掛かっていた肩の荷が下りたような気がした。 |