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カレンが切り出してき竹を削り、ラクシャータは器用に罠を作成していった。 あちらで実際に使われている罠をじっくりと観察してきたのだ。何を作ればいいかは既に頭の中にある。後はそれを形にするだけだったため、それらは簡単に完成した。 千葉とセシルも器用にナイフを扱い、同じように罠を作っていく。 それと同時進行で他の小物も作成していき、釜戸も大きめの石を使ってしっかりとしたものを作成した。 これらのことに不向きなカレンは、竹をいくつか切り出して、そのあとはひたすら周辺の清掃と薪拾い。集めた薪は洞窟の入口付近にまとめて積み上げていく。 C.C.は、ルルーシュにこちらの拠点周辺の植物採集を頼まれていたため、食材探しのついでにいろいろな木の実や種を集めて回っていた。 戻ってきてからは、コーネリアたちに見向きもせずテキパキと行動を起こし始めた面々に、ヴィレッタは探るような視線を向けていた。 「何があったかしらないが、殊勝な心がけだな」 相変わらずの上から目線。 その上、何を作っているのかよく解っていないくせに、ああしろこうしろと余計な口出しをしてくる。まるで自分が指示を出しているのだと言わんばかりの姿に、イラッとしてしまうのは仕方が無いだろう。 だが、ラクシャータも千葉も、ぎろりとひと睨みしただけで、すぐに視線を手元に戻した。何も知らないセシルは、一人困ったように眉を寄せ、ラクシャータたちの態度に腹を立てたヴィレッタの愚痴を聞かされていた。 「お前が気弱なことをしているから、奴らはつけあがるんだ。そんな作業、騎士団連中にさせておけばいい。我々はブリタニアの軍人だということを忘れるな!」 この環境下では、身分や人種など一先ず忘れ、共に協力して生き抜く道を探すべきだというのに、それに反する行動を取ろうとする。そしてセシルにも同じような行動をさせ、騎士団の面々を奴隷のように使えと言ってくる。それがどれほど馬鹿げた内容か解っていても、地位の低いセシルはただひたすらに頭を下げるしかない。 自分がいることで、ラクシャータたちがコーネリアとヴィレッタの分の食事も、渋々ではあるが用意している事を知っているから尚更だ。 ゼロの情報を報告した事で手に入れた地位。 たったそれだけで手に入った、薄っぺらい地位。 この女にあるのはそれだけなのに、皇女という後ろ盾があることで分不相応な自尊心を持ってしまった。そもそも黒の騎士団相手には皇族も貴族も意味が無いのに、それが解らないのか、解りたくはないのか。我々は皇族と貴族なのだ。お前たちとは違うのだとふんぞり返っている。 偉そうな顔ができるのもあと僅か。セシルは、もらっていくから。あんたたちには勿体無いもの。ラクシャータはセシルの謝る声を聞きながら、心の中でそう言った。 食事を用意したことに対してお礼一つ言わず、偉そうに味がどうだ、あれはこうしろと文句だけ言う連中とはやはり一緒にはいたくはない。 温泉にしてもそうだ。 昨日見つけた温泉は、カレンと千葉が朝早くから地面を深く掘り返し、不器用ながらに形作ってくれたおかげで、腰まで浸かれるようになっていた。カレンたち、そしてセシルはその温泉で体を清めてから、こうして作業を始めたのだが、昼近くになってようやく起きてきたコーネリアが我が物顔で温泉を使用し、何時間もそこを占拠し続けていた。 いくら川で洗い清めていたとしても、やはり体は悪臭を放つようになる。落としきれない皮脂汚れが原因だ。体に染み付いたそれらの臭いは、体を温め垢をふやかして洗い落とし、汗をかくことで汗腺に溜まった汚れも洗い流す必要がある。洗うための石鹸類はないが、それでも格段に体は清潔になるし気持ちがいい。 そこまでは皆同じ気持だから長湯してしまうのも仕方がないと思っていたが、なぜもっと早くに見つけられなかった。無能だから発見が遅いという発言に、これから彼女たちをここに捨てていくことへの罪悪感は吹き飛んだ。 今すぐセシルも連れてここを離れてしまいたい衝動にかられた。 だが、ルルーシュとの約束がある。 彼女たちが生きられるようにすること。 その約束を違えることはできない。 中途半端なことをすれば、ルルーシュが不安を感じ、一人で確認に来るだろうとC.C.が言ったため、自信を持って大丈夫だと言える状態にすると決めていた。 だから、どんなに苛立ちが募っても、手は動かし続ける。 コーネリアたちのためではない。 心と体に問題を抱えたルルーシュを悪化させないためだ。 そう考えるだけで作業をするのも少しは楽しく思える。 あとで、あちらの洞窟の壁面にあったように、この洞窟の壁面に、いままで発見した食材の位置を書き記しておこう。それを見れば、ある程度のものは見つけられるだろう。 見捨てたことで、自分たちが自責の念を感じないためにも、出来る限り残していこう。 ・・・でも、早くあちらに戻りたいわね。 そう思いながら、ラクシャータはヴィレッタの醜い発言の数々に耳を傾けていた。 |