|
「これすっごく美味しい!」 ウツボの唐揚げを口にしたスザクは、驚きと喜びを混ぜた表情で言った。よほど気に入ったのか大きな口を開け、美味しそうに次々と頬張っている。相変わらずの気持ちのいい食べっぷりに「小骨があるかもしれないから、注意するんだぞ」とルルーシュは笑顔で注意をした。 「気味の悪い姿だから、美味しくないと思っていたよ。でもこれは、美味しいものだね」 予想外の味に、クロヴィスもご満悦だった。 皇族であるクロヴィスは唐揚げいう庶民の料理は今まで食べたことは無かったため、その食感も楽しんでいるように見える。ルルーシュとしては少し油がクドすぎるし鳥臭いなと感じるのだが、今手に入るのは鶏油しか無いため仕方がない。 どの料理にも言えることだが、サラダ油のようなもの、欲を言うならオリーブオイルでも手に入ればまた違うのだが。 鶏油で揚げた唐揚げは沢山食べれば胸焼けを起こしかねないため、念のため少なめに用意してよかったと思いながら自分も唐揚げに齧りついた。 中までしっかりと火が通っており、表面はパリッとしていて中はホクホク。揚げ加減はもちろん完璧。味付けも上手くいっていた。 改善点は多いが、十分美味しいから及第点といった所だろう。 「見た目と味はイコールではありませんよ。ウツボは美味しい食材です」 「ほんと美味しいよ。でも捌くのは大変だね」 スザクは美味しそうに唐揚げを頬張りながらしみじみといった。 普通の魚と違い、ウツボを捌くのは想像以上に骨が折れた。ウツボの小骨は危険なため、それらも綺麗に取り除く必要がある。ウツボに目打ちをし、初めてにしては要領よく開いていったのだが、大きすぎてなかなか捌き終わらず、何より皮が切リにくくてルルーシュでは太刀打ち出来ず、スザク達も手伝ったがそれでも時間がかかった。 だから見た目はいつも通りだが、ルルーシュはかなり疲労しているはずなので、食後は強制的に昼寝だなとスザクとクロヴィスは決めているし、その空気をひしひしとルルーシュも感じていた。 「午後からどうしようか?海でやっておくことって無いの?」 塩田の方はこれから拠点に戻って色々と道具を用意しなければならないらしく、今すぐここでやる作業は無いという。ルルーシュはこの後即昼寝をさせるため、その間何をやっておけばいいか尋ねた。 「・・・そうだな。昆布はまだ増やしておいたほうがいいかもしれない」 魚介類はこれ以上要らないが、昆布ならば保存もきくし、食材として優秀なだけではなく出汁にも使えて体にもいい。クロヴィスが先程まで干してくれていたが、人数が増えればあの位の量あっという間に無くなるだろう。 「そうだね、じゃあ昆布の採集をしておくよ。沢山あったほうがいいのかな?」 「ああ。取れるだけ取ってくれて構わない」 「わかった。じゃあそれは僕がやるね」 スザクはにこやかに笑いながら箸を動かした。 「兄さんは拠点に戻り、途中になってしまった食器づくりを進めてください。まずは竹で作成してもらえますか?彼らが来たら、今ある分ではたりませんのでお願いします。その後は陶器の準備を進めてください」 ルルーシュの指示に、クロヴィスは驚き箸を止めた。 「・・・それは構わないのだが、竹細工はともかく、陶器はしばらく無理ではないかな?」 藤堂たちが来たら忙しくなるだろう。 未だに焼きの作業ができていないから釜が使えるかも解らないし、もし火を入れたら丸一日はその場から離れられなくなる。そうなれば拠点での作業に手が出せないとクロヴィスは心配していた。 「いえ、拠点での作業は藤堂たちと行いますので、兄さんは今まで通り自由に行動してください」 「・・・いいのかね?」 「ええ。兄さんがやろうとしていることは、俺達には出来ません。ですが拠点の整備はみんなが出来ることですから」 男手が、しかも元軍人が3人も増えるのだから、それで十分事足ります。 「そうか、では私は拠点に戻って作業を続けることにしよう。スザク、ルルーシュはここに残していくけど大丈夫だね?」 クロヴィスは拠点へ戻りスザクは海と別れる以上、何かあった時にルルーシュを守れるスザクの傍で休ませるのが一番だからとクロヴィスは確認をした。 「はい、僕が見てますから大丈夫です」 任せてくださいと、それはいい笑顔でスザクは頷いた。 彼らの会話はルルーシュが昼寝をしている前提での確認で、どうしても眠らなきゃ駄目なのかとルルーシュは密かに息を零した。 |