いのちのせんたく 第87話


さて、今日から3人加わり、6人になった。
男3人から、男6人へ。
単純に人数が倍なら食材も倍と考えたい所だが、増えたのが肉体派が3人だからそれを計算した量を用意しなければならないだろう。藤堂たちが前回来た時の量を参考に用意してみよう。三人とも顔色はお世辞にもいいとはいえないし、仙波はどこか調子も悪いように見えた。全員、疲労が溜まりすぎているのだろう。それにだいぶ汗をかいているから、今日の夕食は少し塩分を強めにし、魚はやめて肉を使うことにしよう。
残ったワインを使いきってしまいたいから、ウサギ肉はワイン煮だな。
鶏肉は根菜と煮込み、日本人好みの味付けにすればいい。
野菜もそうだが、ビタミンが不足しているように見えたから・・・
洞窟前の調理スペースで、夕食の下ごしらえをしながらルルーシュは川原を眺めていた。初日ということもあり、クロヴィスにも今回は作業に参加しているが、藤堂が上手く場をとりなしているようで、特に喧嘩をすることもなく順調に作業は進んでいた。
男手が5人もあれば作業が早い。
なにより仙波の功績は大きく、しっかりとした作りで取りだが、外しも楽な囲いが完成しつつあった。ルルーシュはいろいろな本を読み、多くを学び知識として蓄えてはいるが、それはあくまでも知識だけで、実際にそれらを頭のなかで組み立てて行動に起こした場合には、やはり現実との誤差が出てしまう。ここにパソコンが有りシミュレーションができればその誤差は限りなくゼロになるし、気になる部分も調べて知識の穴を埋め、より良い形を作ることが出来るが、今はそれが出来ない。つまり、いくら綿密に計算していても、実際に作リ出すまで机上の空論の域を出ないのだが、仙波は幼い頃から培った確かな知識と経験を持っており、ルルーシュの空論を鼻で笑うこと無く、その考えをしっかりと理解した上で現実とすり合わせ、何がどう駄目なのかを明確にした上で改善策を示した。あの仙波にこんな才能があったとはと、今でも驚きが隠せない。
本格的な家の建築に取り掛かる際、仙波がいればよりよいものが作れるだろう。
塩田に関しても、仙波と打ち合わせる必要がある。
朝比奈にしてもそうだ、今まで手が出せなかった罠を作り出せる可能性が出てきた。口にはしていなかったが、方法は色々考えたが、どれもこれも机上の空論止まり。それこそ神根島で穴を掘っていた時のレベルのもので止まっていた。
そして、あの体力馬鹿スザクの師匠藤堂。流石というべきか、藤堂もかなりの体力馬鹿のようだ。だが、藤堂の真価は体力面、運動能力ではない。その場をまとめ上げるリーダーとしての能力だろう。将軍と騎士の能力を持っていると言われるだけのことはある。部下としても、上司としても間違いなく有能だ。
・・・これだけの人材が揃っていながら、苦しい生活をしていた?
それがどうにも腑に落ちないところだが、玉城に足を引っ張られ続けたのだろう。玉城は口だけ男で無能だ。南はそこそこ使えるが、有能とは言い難いし、ゼロにも反発するところがある。扇は事なかれ主義で動く面もあるが、それでもまとめ役としてそれなりの能力はあったはずだが・・・有能か無能かと聞かれれば、無能な部類だった。
副司令という地位も、最初に味方をしてくれたという贔屓目からのものでしか無いし、そもそも何かしら相談をし、重要な案件を任せるという話になれば・・・無いなと思う。
有能3に無能3。
無能が有能を食いつぶしていたか。
有能という話で言うならば、まさかC.C.やラクシャータ、カレンまでこの島にいたとは予想外だった。この場所に来た当初、助けなど来るとも思えず、探索するには広すぎると判断しスザクとともに生き残ること。そして病気にならないことを前提にして動いた。つまり確かな拠点を作ってから、そこを中心にしてこの場所を調べあげる方法をとった。・・・残念ながらこの 役に立たない体のせいで調査は進んでいないが、拠点づくりはほぼ終了し、ようやく調査を進める段階へ来ていた。
もし、拠点づくりをせず、体の無理を押してでもこの島の事を調べあげ、脱出するすべを見つけていたなら。C.C.、カレン、ラクシャータ、藤堂と四聖剣。これだけの人材を失うところだったのだ。
いや、もしかしたら他にもこの島に人がいるかもしれない。
ブリタニアを倒すため、黒の騎士団として失う訳にはいかない人材が。
となれば、やはり今後の方針は今と変えずに、まずは全員が問題なく暮らせる拠点づくりだな。食料の確保も今の量では足りなくなるから、畑を広げなければならない。それと同時に行動範囲をひろげ、この島の事も調べていく。

今解っていることは少ない。

・この場所へ転移した際にギアスの文様が現れたことから、コードとギアスが関係している可能性は限りなく高い。これに関してはまだC.C.に確認は取れていない。
・季節だけでなく自然さえも完全に無視した動植物は、ここが非現実の場所だと示している。収穫してもすぐに実り、種を植えれば急成長する植物、繁殖のスピードが早く、何を食料にしているのか、地中の虫だけでは説明できない鶏たち、こちらが不快に思うような場所には現れない昆虫。これらが遺伝子操作により産まれた 可能性は否定出来なかったが、あの大雨でこの場所が人工的に創り出された場所だという仮説は捨て去った。
・手に入る道具は、こちらの都合に合わせたものばかり。衣服に至ってはサイズや個々の好みまで知り尽くしていると言っていいものが手に入る。何者かの監視があると考えられる。
・何よりクロヴィスの存在が異質すぎた。死者を名乗る偽物のかと最初は考えたが・・・間違いなく本人だろう。あの日、もし死なずに生きていたらという仮説は捨てた。死者を名乗りここでともに過ごす理由がない。・・・いや、死んでいたとしても意味はわからないのだが。少なくとも、今の科学では、死者を呼び戻すことも、こうして生者と同じように過ごすことも出来はしない。

この場所は現実では絶対に有り得ない場所だが、死者の国ではない。
クロヴィス以外は全員生きている。
この場所へ、外部からの助けは来ない。
どれだけの人数がこの島にいるかは不明。
少なくてもここに来る者達の他に、コーネリア・ヴィレッタ・扇・玉城・南がいる。

・・・やはり大した情報はないか。
まあいい。
人数が増えれば、動ける場所も増えるし、新たな情報も増えるだろう。
今はこの場を整えることを優先する。

大量の根菜が入った大鍋はグツグツと音をたてはじめ、すすを洗い流した綺麗な飯盒全てに鶏ガラが入れられ、こちらも順調に煮こまれていた。これはあとで野菜くずと溶き卵を入れてスープにする。片手鍋には焼き目をつけたウサギ肉が煮こまれている。

「さて次は・・・」

ルルーシュがフライパンに油を引く頃には、温泉の柵は完成していた。



*****

私のための情報整理回。
もうじき90話なのに全く進展してないことだけは解りました。

それにしても、同時に料理って・・・
調理用の釜戸に大鍋と片手鍋?(置けるのか?)
焚き火の傍に飯盒をおいて?
フライパンどこで使う?
というツッコミは無しの方向で。

料理用の釜戸はきっと追加で用意したんですよ。
きっと・・・。

86話
88話