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「C.C.、あんたどんな手品使ったのよ?」 「言っていなかったか?私は、魔女だ」 「はいはい、わかったわよ魔女様。それで、どんな手を使ったわけ?」 絶対に、何かあったはずだとラクシャータは尋ねた。 なにせ、ここを出て行く事と、少しとはいえ貴重な道具を持っていくことを了承した上に、ブリタニア軍人、つまり自分の部下であるセシルを連れて行くようにと、あのコーネリア自らが言ったのだ。 突然の命令に驚きを隠せなかったセシルだったが、皇女の命令である以上、是と答える以外に無かった。以前からセシルをここに残していけない、連れて行きたいと言っていたラクシャータだが、そう簡単なことではないことは知っていた。 セシルがもし望んでいたとしても、皇族であるコーネリアが許さなければそれで終わりだし、皇女を残して立ち去るなどセシルの性格上無理な話だ。 それなのに、このC.C.はどちらの問題もあっさりと解決させてしまった。 「何、簡単な話だ。私たちは、今日出て行く。セシルを連れていくことを了承すれば、こちらに救援が来た時に有利だと言っただけだ。それと、セシルが残れば、ここでの料理は全てセシルが作ることになることを、思い出させてやった」 それが決定打になったと、C.C.は笑った。 「なるほどねぇ・・・」 セシルの料理を考えれば納得はできるかと、荷物をまとめているセシルを見た。 コーネリア、ヴィレッタ、セシル。 もしここに彼女が残った時は、皇女であるコーネリアと、一代限りとはいえ貴族であるヴィレッタに食事の支度などさせる訳にはいかないため、セシルが今後料理も何もかもすることになるだろう。 他の面では非常に優秀なセシルだが、料理に関して言えば、残られては困るのだ。 味覚音痴ではないし、彼女の料理は美味しそうに見えるのに、食べると失神しそうなほど不味い創作料理を作り出す。それがセシルだ。 コーネリアは初めて食べる 救援と料理を理由に、ヴィレッタは「セシルを騎士団と行動させたほうがいいのでは」とC.C.に加勢し、1箇所より2箇所のほうが発見されやすいかとコーネリアも納得した。 水と温泉があるこの場所を離れるなんて馬鹿な連中だと呆れているが、不安などその顔には見られなかった。ヴィレッタが居れば問題はないと思っているのだろう。 実際に、二人きりになったらどうなるか・・・ 食料の調達もせずに、ずっと上から目線でふんぞり返っていた二人だけはわかっていないため、二人のことを思いセシルはしばらく食い下がっていたが、ヴィレッタにはセシルが自分を売り込んでいるように見えたし、コーネリアには、まるでセシルがいなければ自分たちは野たれ死ぬような言いように、苛立ちを感じた。 あんな不味い料理をつくる人間が何を偉そうにと、悪い印象を持ったのだ。 セシルが説得すればするほど、二人はセシルを拒絶した。 そして、セシルは不安を抱えながらも皇女命令でここを離れることになった。 「確かに料理はあれだけど・・・それだけで、こんなにうまくいくかしら?」 それを聞いても、この少女は応えないだろう。 自ら魔女と名乗るだけあり、この中で最も若いはずの少女は誰よりも老齢して見えた。押しても引いても、彼女が望まない限りその口から情報を聞き出すことは不可能。 ・・・だからこそ、ゼロと共にあれるのかもしれない。 ただの娘ではないとは思っていたが、この場所で共に生活して行く過程で、彼女の異質さを何度となく目にし、魔女という言葉さえ本当ではないかと思いはじめていた。 こちらの考えが解っているかのように、C.C.は口元に弧を描いた。 「終わったことを考えている暇はあるのか?もうすぐ時間だぞ?」 藤堂との合流時間に間に合わせるには、そろそろ出なければならない。 今回は、あの道のりを初めて歩くセシルと千葉もいるのだから、余裕を持ってでなければならない。 荷物を持ち運ぶための袋はC.C.がずっと持ち歩いているリュックと、寝袋が入っている袋ぐらいしか無い。竹で作った水筒を各自に1つもたせ、予備の水筒は大鍋に入れ、蔓で縛りカレンが持ち運ぶことになった。 忘れ物はないか確認し、全ての準備が整ったのを見てラクシャータは頷いた。 これでやっと、ここから離れられる。 ゼロの、ルルーシュの元へ行ける。 「じゃ、行きましょう!」 明るい笑顔でカレンは言い、先頭になって歩き始めた。 |