まだ見ぬ明日へ 第4話

どうして知っていたのか。西口路線を走っていた列車を止めると積荷はサザーランドで、テロリストにその機体を与えた。それから先は一方的な戦闘だった。

「君、すごいね・・・」

次々とブリタニアのナイトメアがLOSTしていく。
彼が指示したとおりに通信機で伝えただけで。

「ここに、リアルタイムで見られる情報がある。そして、指示どおりに動く手足がある」

後は見た通りに、手足を動かせばいいだけだ。大したことはしていない。

「P1、P2は8時方向へ移動、20秒後3時方向を撃て」
『P1、P2は8時方向へ移動、20秒後3時方向を撃て』

20秒後にはブリタニアの識別信号が減る。たったこれだけの表示で、秒単位指示を出す。しかも僕が指示を出すタイムラグも計算している。僕に向けていた無線を降ろし、モニターを見ながら数瞬考えた後。

「よし、スザク。俺たちはこのままそのビルの裏へ。そこにいるナイトメアを撃て。左側に3機だ」
「僕には秒単位の指示は無いの?」
「必要ない。大体、秒単位で指示してお前は動けるのか?」

ビルの裏、3機。しかも背後から。

「無理かなっ!」

できるだけ彼の体に負担がかからないよう、それでも迅速に3機沈める。その後無線が再び僕に向けられる。

「P4はそこから左に100m移動、正面壁越しに打て。R1は10秒後、4時の方向へスラッシュハーケンを撃て。」

L.L.は指示を出すとすぐ無線の送信スイッチを入れる。

『P4はそこから左に100m移動、正面壁越しに打て。P1は10秒後、4時の方向へスラッシュハーケンを撃て。』

僕が言い終わるとすぐに通話の送信スイッチを切る。

「その一帯のナイトメアは7分の間居なくなった。Nグループは、民間人を誘導し6分後ポイント9へ向かえ」
『その一帯のナイトメアは7分の間居なくなった。Nグループは、民間人を誘導し6分後ポイント9へ向かえ』

送信スイッチを切るとL.L.は無線を降ろした。

「さて、敵の選択肢は5つ」
「え?それしかないの?」
「ああ。戦略として考えるなら、な」

彼の頭の中は一体どうなってるんだろう。不死身の体よりよっぽどその頭脳のほうが恐ろしい。L.L.が敵側だったらと思うと・・・考えたくもない。大体、彼自身が指示を出さず、僕を介する意味もわからない。
やがてブリタニアの識別信号が陣形を崩し、一か所に集まり始めた。

「・・・最も愚かな手を」

うん、さっぱりわからん。
その後いくつかの指示を出した後、彼の作戦、ミッションナンバー3が開始された。その後中心点から円を描くように敵の機体が次々LOSTしていく。

「え?なにこれ!?何したの!?」
「その話は後だ。今のうちにチェックをかける」

テロリストに簡単な指示をいくつか出した後、本陣へ向かった。戦闘で警備が手薄となっていっていることもあり、検問も不可視化た状態で簡単に相手を無力化できたのであっさり突破した。まだ身動きの取れないL.L.を抱えてGIベース内へと入る。
L.L.も不可視化できれば楽なのに、と言ったら俺にはギアスは効かない。と返された。
俺を消すことはできないし、俺にはお前の姿は見えている、と。
GIベースの奥には彼の目指した標的。殺戮の元凶クロヴィス・ラ・ブリタニア。拳銃で脅せばすぐに停戦命令が出た。こんな、簡単に。建造物に対する破壊活動、負傷者はブリタニア人、イレブン共に救助することでさえ、あっさり命令させれた。つまり、いかに早くこの場所に来て、いかに早くクロヴィスに停戦をさせるか。この戦いはクロヴィスを押さえれば勝ち。反対に抑えることができなければどちらかが滅びるまで続く。だが、クロヴィスが各地から援軍を呼ぶことを選択したら、ブリタニアの勝利が確定する。
僕はそんなことにも気がつかず、目の前の敵を倒すことしか考えていなかった。考えが足りなかったことを痛感する。
必要な命令を出させた後、GIベースの主電源を落とした。

「もういいのか?」
「ええ。上出来です」
「次は何だ?歌でも歌うか?それともチェスのお相手でも?」
「いえ、そのようなことは望んでいません。殿下」

それまで、隠れていたL.L.がゆっくりとクロヴィスへと近づく。そして僕とクロヴィスの間に立つ。

「きっ貴様は・・・!コードRの実験体!!」
「・・・あなたには私の呪を受けていただこう、クロヴィス・ラ・ブリタニア」
「ノロイ・・・だと!?」
「L.L.が命じる。今、この時からナンバーズを迫害する政策を廃止せよ。そして、このエリア11でブリタニア人、イレブンともに幸せに暮らせるやさしい世界を目指せ」

さもなくば、わが呪であなたのその瞳は光を失うだろう。芸術家にとっては、死に等しい呪だろう? ああ、あと俺と後ろの男に関することは忘れろ。だれにも、教えるなよ?

「・・・わかった。やさしい世界を、そしてお前たち二人のことは忘れよう」

L.L.の脅迫にクロヴィスは是と答えた。
こんな男が・・・こんなにあっさり屈する男が支配しているのか、この国を。

「・・・殺さないの?」
「クロヴィスを殺しても、新たな総督が来るだけだ。何も変わらない。ならばこの国のため良き統治者となってもらうさ」
「口約束じゃ信用できない」
「ならば俺を信用しろ、問題はない。それよりもスザク、もう時間が無い。すぐに護衛が来る。お前は姿を消して、急いでここから離脱しろ」
「・・・わかった」

僕に背を向けたままのL.L.をひょいっと抱きかかえる。
驚いたL.L.がほぁぁぁぁぁっ、と素っ頓狂な悲鳴を上げた。

「急ぐんだろ?ほら、走るから掴まって」
「ばっ馬鹿か!姿を消して離脱と言っただろう!」
「あ、忘れてた」

これでいいかな?と、ギアスを発動する。

「この馬鹿!俺は消せない!降ろせ!」

これでは、人が空中に浮かんでいるように見えて余計に目立つ!

「ってことは今ギアス意味ないよね。大丈夫、来た時と同じように」
「すでにGIベースの異変は気付かれている!ここは別々に逃げるべきだ!」
「やっぱり僕だけで逃げろって意味だったんだね。でも、その命令は聞けないよ」

立ってるだけでいっぱいいっぱいのくせに。やせ我慢にもほどがあるよ。

「スザク!」
「だーめ。こんな状態の君ひとり残していけないよ」
「俺は不死だ!殺されたところで」
「それに、君は頭がいい」

彼の言葉を遮り、僕はナイトメアで戦っていた時から思っていたことを言葉にする。

「僕は体力には自信があるんだ。だから君が指示を、僕が君の手足になろう。君と僕が協力すれば大丈夫だよ」

安心させるようににこりと笑うと、彼はくしゃりと顔をゆがめた。
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