まだ見ぬ明日へ 第22話 |
L.L.は一週間たっても目覚める気配はなかった。 ロイドとセシルが言うには、知り合いの不死人は早くて数分で蘇生するのだと言う。 初めて会った頃も数分では蘇生しなかったし、蘇生した後数日間は、一日の半分以上眠っていた事を伝えると、こればっかりは体質か、あるいは不死の力の差かもしれないという結論になった。 心臓はすでに動いていて、呼吸もしっかりしているのだから、静かに眠らせる以外やる事もなく、眠り続けるのは傷が原因ではなく、疲労も原因かもしれないというので、僕はロイドとセシルに彼を任せ、自分は学生生活に戻っていた。 泥のように眠ったあの日、意を決して僕は2人に素顔を見せた。 僕の素顔を見ても、意外な事に2人は驚く事は無く、今までと何も変わらないかのように僕に接してくれた。 ただ、学生ならちゃんと学校に行きなさい。とセシルに言われ、僕はクラブハウスへ戻っていた。 血に染まったゼロの衣装と仮面も、彼らの元に置いたままだと言う事に気が付いたのは、クラブハウスにたどり着いてからだった。 仮面と衣装の予備もないので、取りに戻ろうとした時、セシルから連絡が入り「予備をこちらでも用意したいので、しばらく預けてもらえませんか」と言われ、彼女にすべて任せる事にした。 これだけ勝手な事をしてL.L.に怒られるかもしれない。 僕たちの身を危険に晒しているのかもしれない。 だが、黒の騎士団内にも僕たちの理解者を作る必要があるとL.L.は言っていた。 ならば、KMFの開発者で、医療にも明るいこの二人は必ずこちら側に引き込みたい人材、僕は間違っていないはず。 あの時感じた直感も、僕は信じたかった。 授業が終わり、生徒会の仕事も無かったので、僕は部屋へ戻ると、いつもならこの時間は彼が占拠しているベッドへ身を委ねた。 一時的とはいえ、L.L.と離れられたのはよかったのかもしれない。 あの時、彼に触れたことで見えた光景に、僕の頭はいまだ混乱していた。 それは、不思議な光景だった。 まるでギアスの契約時に見たような白い世界と、見知らぬ記憶。 人が、沢山死んでいた。 その中に見知った顔、シャーリーが居た。 彼女は血だまりに倒れ、こちらに微笑みながら、何かを話し、そして死んだ。 アッシュフォードの制服を着た真っ青な顔の少年の姿もあった。 そして、謎の兵器 アッシュフォードと思われる建物の近くに出来た巨大なクレーター。 どの場所かは解らないが、先ほどよりも巨大なクレーター。 そして、戦場 KMFが空を飛び、丸い光が辺りを包むと、その周辺のナイトメアが次々消滅する。 その光景を見ているランスロットに乗った僕と、豪華な白い衣装を着たL.L.。彼と共に戦艦に乗っているロイド、セシル、咲世子 少し形が違うランスロットと、あの赤い機体も空を飛び、ランスロットが一瞬で手足を切り落とされる。 そして、僕 何やら式典の会場のような場所でユフィに膝を折る僕。 ランスロットのコックピットの上部を破壊され、姿を見せたパイロットスーツの僕。 そしてユフィ 笑いながら機関銃を乱射し、体中を血に染めるユフィ。 そしてゼロに撃たれたユフィと、彼女を手に上空へ逃げるランスロット。 そして、僕とL.L. 今とは違うゼロの衣装を身に纏い、額から血を流しているL.L.に銃を向け、憎しみと怒りにその顔を歪めた僕。 そして、白い拘束衣を纏ったL.L.を引きずり倒し、その頭を押さえながら誰かに話しかける僕。 白い、どこかで見覚えのある騎士服の僕と、ゼロの衣装を纏った赤い瞳のL.L.が、ブリタニア皇帝と、黒髪の女性と不思議な空間で対峙している。 そこで彼の肩から手を離した。 意味が分からないその光景に、僕は悩まされていた。 シャーリーもユフィも生きている。 確かにL.L.がゼロの衣装を着る可能性はある。 いや、今後場合によっては彼に着てもらうべきだ。 だが、僕がL.L.に銃を向け、彼と敵対すると? 僕はあの白い騎士服に覚えがあり、調べるとそれはブリタニア皇帝の騎士ナイトオブラウンズの物だった。 あの式典の意味を知りたくて探してみると、コーネリアがギルフォードを騎士とした時の映像が残っていた。 皇族の専任騎士の叙任式の映像。 彼のいない一週間、僕は考え続けた。 そして一つの結論を出す。 きっと僕が見た映像は、時系列順に見た物ではない。 となると、一番最初はユフィの選任騎士となったあのイメージだろう。そして、L.L.は僕に替わりゼロとなる。騎士と言う事はブリタニア側だから。 僕はブリタニアの騎士として白いパイロットスーツを身に纏い黒の騎士団と対峙する。 仮説を立てるなら、ブリタニアの内部に入り、スパイとなったという事。 だが、ショックイメージだと彼は言っていた。 恐らくその力を使っている間は、彼自身もその能力の影響で、悪夢を見る。 だから僕が目にしたのは、彼が強いショックを受けた、あるいはこれから受けるであろう場面。となると、僕が騎士となったのはL.L.には予想外の事で、その映像を見て驚いたという事だ。 ならば僕の独断か。 そして、ユフィが笑いながら機関銃を乱射し人々を殺害。ゼロ扮するL.L.が彼女を撃った。あのゼロが僕ではない理由は、その後にランスロットが彼女を連れ去ったから。 僕はL.L.を憎む。まさに憎悪という言葉がふさわしいほどに。そして彼と対峙し、彼に銃を向ける。 身体能力で彼が僕に勝てるはずがない、僕は彼を取り押さえたのだろう。 拘束衣を着せて誰かに彼を差し出した。恐らくはブリタニアの皇帝。 彼をゼロとして、そして不死の実験体として皇帝に献上し、ナイトオブラウンズの地位を手に入れる。 だが、不死の彼は、何らかの手段で再びブリタニアの手から逃れた。 戦いは続き、やがてナイトメアは空を飛ぶほどになる。 そこに新たな兵器。 トウキョウ租界、そしてどこかの大地に巨大クレーターを出現させる程の威力。 僕とL.L.は皇帝と、黒髪の女性と対峙していた。 彼の瞳は赤く輝いており、それは僕の目にも宿っているギアス。 敵対していた僕とL.L.は再び手を取り、戦争とは言えないような一方的な力を前に戦いを続ける。 そこにはロイドとセシル、咲世子もいた。 僕はあの赤い機体に手も足も出ず、ランスロットの手足を奪われる。 恐らくあれでは捕虜になったか、死んだか。 シャーリーと少年は、恐らく戦争に巻き込まれたのだろう。 つまり、あの時見た光景はL.L.のコードが持つ能力で、僕は未来を見たのだ。 あれが来るべき未来だとしたら、僕は将来L.L.と敵対し、彼と憎しみ合うという事だ。 ブリタニアに取り込まれ、憎しみに支配され、闘い続けている姿は醜かった。 あの未来は回避しなければならない。 恐らくキーポイントはユフィ。 全ては僕がブリタニア側にいるからこそ起こること。 どうして僕がブリタニア側へ行き、彼女の騎士となるのか想像もできないが。 そこは回避しなければならない。 そして将来生み出される兵器をどうするべきか。 あの赤い機体に僕が負けるのなら、今以上に訓練を重ね、必ず勝って見せる。 そう、あんな未来、絶対否定してやる。 早く目を覚ましてL.L.。 僕が見たものを君に話すから。 そして、その最悪の未来を回避する方法を2人で考えよう。 大丈夫、僕と君が揃えば出来ないことなど無いのだから。 |