まだ見ぬ明日へ 第23話

それから2日後、ようやく意識を取り戻したL.L.は、二人に僕たちの素顔を見せた事に関しては、特に何も彼は言わなかった.
だが、彼らの知っているという不死者については、すぐに問い詰めていた。

彼らの言っていた不死者の名をC.C.と言う。

「やはりあいつか。で、C.C.と最後に会ったのは何時だ?何をしに2人のところへ?」
「最後に会ったのは、かなり昔です。何時もふらっとやって来て、ピザを食べながら数日滞在するだけでした」
「強いて理由を挙げるなら、貴方達のコード、そしてギアスに関するお話をしていく事でしょうね」

その瞬間、L.L.が今までに見た事がないほど冷酷な表情をその顔に乗せた。

「あの女に何を聞いた」

今まで聞いたことがないほど低い声で、辺りの空気も数度下がったのではないかと思うほどの冷気を発していたが、二人の科学者は何事もないかのように受け流した。
なんだろう、この場にすごく居たくない空気と言うか、L.L.がものすごく怖い。
少しでもこの空気から逃れるために、仮面をかぶりたい気分だった。

「心臓のあたりを串刺しにされた方、つまりL.L.あなたのお話と、コードが不老不死の力で、ギアスと言う異能を他人に与えると言う事。ギアス能力者は片目もしくは両目が赤くなる。ギアスは成長し、手に入れた状態を第一段階とするなら、第二段階は暴走、つまり能力の制御が効かなくなる。大抵はこの第二段階で精神を病み自滅する、コードはギアスの最終形態、という所までですね」
「っ!そこまで話したのか、あのピザ女!!・・・まあいい、いい機会だゼロ。今2人が話した事は本当だ。ギアスは使い続ければ制御が出来なくなり、常に発動状態となる。俺は暴走に1年もかからなかった。俺は乱用していたし、個人差もあるらしく、C.C.は使い続けていても暴走まで5年近くかかったそうだ。幼いころから使い続けて10年以上たっても暴走しない者もいる」

つまり僕のギアスが暴走した場合、L.L.そしてC.C.という女性以外に認識されなくなるという事だ。その事を想像した僕の体は、恐怖で全身に鳥肌が立った。
怪我をしようと、病気になろうと誰にも気づかれない。
話しかけても声が届かないし、触れてもその事さえ認識されない。
物を投げ飛ばしても、ポルターガイスト扱いされるだけだ。
それはつまり、僕と言う存在そのものが消えたのと、ほとんど変わらなくなるのだろう。
そして今の話だと、やはりL.L.はギアスを持っていることがわかる。
ギアスの最終形態がコード。
あのイメージで両目が赤かったのは、やはりギアスを発動していたからなのだろう。

「ゼロはL.L.の契約者ですか?」

今は僕も顔を隠していないので、興味津津と言った顔で、ロイドは僕の瞳をじっと見つめてきた。
思わず目をそらすと、いいじゃないですか見せてくださいよ~と、不貞腐れたように言ってきたが、セシルがその襟首をがっしりつかむと、一転平謝りしてきた。
その様子を横目に、ベッドから体を起こしていたL.L.は、真剣な顔で僕を見た。

「いいかゼロ、ギアスの暴走は悲劇を招く。今まで通り緊急時以外は発動をするな。お前は身体能力が高いのだから、ギアスを普段使用する必要は無い」

力強い視線で射ぬかれ、僕は「分かった」と答えるのが精いっぱいで、彼らとの会話はひとまずそこで終了した。



僕はクラブハウスへ、L.L.を連れて戻った。
ロイドとセシルはまだしばらくは動かさない方が良い、と言っていたが、これ以上この科学者二人をこの場に拘束するのは、避けたかった。
それでなくてもブリタニア人に対して、よく思っていないような連中が多い黒の騎士団だ、今はランスロットの整備のため一時離れている、というゼロからの連絡を、ナオトがゼロが負傷したのではないか、という予想の元上手く誤魔化してくれてはいるが、そろそろ限界だろう。
L.L.もそれには同意してくれたので、ロイドとセシルは渋々ながら承諾した。
それ以上に彼を僕にとって一番安心できる場所、カグヤと咲世子の元に戻したかったのだ。
守りたい存在が二手に分かれていると落ち着かない。
手の届く場所に居て欲しい。


僕の部屋へと戻ってきたL.L.は、すぐにベッドに潜り込み、次に目を覚ましたのはさらに二日後だった。

「キョウトから呼び出しだと?」

目を覚ました彼にキョウトから来た手紙を渡すと、真剣にその文章を目で追っていた。
日本語もすんなり読めるのだから流石L.L.だ。

「僕とナオト、扇、泉、玉城の5人が向かう事になった」
「なぜそこに玉城が入るんだ」
「本当なら君を連れて行きたい所だったんだけど、君は動けなかっただろ?玉城が選ばれた理由は、このメンバーの中に玉城以外加わるのを嫌がったからだよ」

何せ司令官ゼロ、そして副司令ナオト、その補佐扇、泉と全員役職持ちの中に入るのだ。普通は嫌がる。
本当はナオトと泉にL.L.を当日連れてきてほしいと頼まれていたが、正直にロイド、セシルも交えあのナリタ戦でL.L.が負傷していた事を告げた。
ナオトは僕じゃなかった事は予想と違っていたが、彼の中では僕とL.L.は同等の存在らしく、負傷の具合をかなり心配された。

「まあいい。誰がゼロを呼び出したのかある程度の目星をつけておこう」
「やっぱり、断った方がよかったのかな?」
「断るのは無理だ。今後を考えるなら行くしかない。ただ、キョウトはゼロの中身を知りたがるだろう。そして自分の正体は隠すだろうな」
「仮面は取らないよ。キョウトに知られるのも正直避けたいんだ。僕とカグヤの生存に関してはね」
「相手は強硬手段を使ってくる。まあ、その事は俺に任せて、お前は何も心配せず、授業に出てこい」
「うん、わかった。あ、そうだ。玉城が活動資金の使い込みしてた。扇に任せてたのに、いつの間にか玉城が資金管理しててさ。ナオトが叱りつけてくれたけど、どうも元紅月グループのメンバーは勝手な行動多いよね。資金管理は泉に任せる事にしたよ」
「そうか。まあ、泉ならしっかりしているし問題は無いだろう。最悪また俺が管理すればいい話だ。使い込んだ金額も調べておくか」

さっさと行けと、言われ僕は渋々朝食のため部屋を出た。
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