まだ見ぬ明日へ 第34話 |
「スザクにお弁当作ってきたんです、一緒に食べましょう!」 お昼になり、ニコニコとした笑顔で2つのお弁当箱を手に持ったユーフェミアにそう言われてしまっては、僕に断る道は無かった。 じーっとこちらを見ているシャーリー、睨みつけるニーナ、困ったようなリヴァル。 これは助けは期待できない。 生徒会以外の学生たちは、皇女様の手作り!?と、きゃあきゃあと騒いでいる。 いいな、気楽で。僕もそちら側に行きたい。 人事なら凄く楽しい状況だとは思う。 って待って。手作り弁当を2人で?不味い、不味すぎる展開だ。 「あ~、いつも生徒会のメンバーと食べているので、皆と一緒でもいいですか?」 ちらっとリヴァル達に視線を送ると、シャーリーはホッとして、ニーナはきらきらとした瞳をこちらに向け満面の笑み。リヴァルは仕方ないなと苦笑いした。 「そうなんですか、ではみなさん一緒に食べましょう」 にっこりと笑うユフィを連れて、生徒会室へ移動した。 「天気が良い日は外で食べるんですよ」 シャーリーはユフィの正面に座り、そう話しかけた。 「あら、今日は小雨が降っているから外は無理ですね」 「あ、明日は、て、天気が良ってニュースで、だから、あ、明日は、一緒に外で食べましょうっ!」 「そうね、明日はぜひ」 ユフィの隣りに座ったニーナも、頬を染め、どもりながらだが話しかけている。 L.L.とカグヤ、咲世子の話では、ニーナはユフィが好きなんだと言う。 ニーナが同性愛者だなんて知らなかったが、咲世子が知る情報をカグヤとL.L.がいないときに事細かに、じっくりと教えられ、僕はそこまで何だと思わず引いてしまった。 いや、いいのか咲世子さん、そんな話を男である僕にして。 というか何を見ているんだ咲世子さん。 ここで何をしているんだニーナ。 そういうことは自室の自分の机でやってくれ。 だけど、おかげでニーナが向けていた視線は、恋敵に対する嫉妬だとわかった。 ユフィが用意したというお弁当を受け取り、蓋を開けると、焦げた卵焼きや偏った中身に、まだ作り慣れていないなと解った。 ユフィが恥ずかしそうにこちらを伺っているので、僕はまず卵焼きを口にした。 なんだろう、塩を入れたのかな。 ジャリッとした食感のあと、凄くしょっぱかったんだけど。 焦げた所と、生の所がある。 けど、皇女なのだから料理なんて作った事無いだろうし、頑張ったんだろうな。うん。 「スザク、どうですか?」 不安げにこちらを伺うユフィに、にっこりと笑いかける。 「美味しいよ。有難う、ユフィ」 その瞬間、ふわっと花が咲くようにユフィは満面の笑顔となった。 「よかった、喜んでもらえて。初めて作ったので、自信が無かったんです」 そんなユフィの後ろに見えるニーナの鬼のような視線が痛いが、ユフィが笑ってくれてよかった。 では私も、と、自分のお弁当の卵焼きを笑顔でパクリと食べた後、顔色を変えて「駄目、駄目です!返してください!」と必死にお弁当を奪い返そうとしてきた。 ああ、味見、してなかったのか。とその時気付いた僕はお弁当を勿論死守。 「何で?僕に作ってくれたんでしょ?全部食べるよ」 と、その可愛らしい反応に笑いながら完食したが、後から一緒に居たリヴァルに「カップルにしか見えなかった」とか、ミレイに「天然て怖いわよね。でも、もうちょっと考えなさい」と叱られ、カグヤにも「これ以上ユーフェミアに好かれてどうするんですの!」と、怒られた。シャーリーに至っては「ユーフェミア様のこと、好きなんでしょ!」と、何故か怖い顔で言われてしまう。 どうして?僕何かした?と、監視システムに視線を向けたままのL.L.に聞くと、呆れたような溜息を一つ吐いて、メモ用紙にサラサラと第三者視点で書かれたテキストを作ってくれた。 その内容が、どう考えてもバカップルのそれで、それを咲世子がカグヤに読んで聞かせると、カグヤは「まさにそんな感じでしたわ」と力強く頷いていた。 「お前、どうしたいんだ?本当はユフィと恋人になりたいと言うのであれば、俺もあらゆる手を考えては見るが」 その場合は黒の騎士団は解散。 日本奪還は諦め、カグヤと咲世子は・・・仕方ない、俺が安全な場所で保護するか。 呆れと困惑が入り混じった声で言うL.L.の肩を掴んで、僕はぶんぶんと首を振りながら、違う、違うんだと訴えた。 肩を掴まれ驚いたL.L.は、監視システムから僕へと視線を移した。 「考えなくていいから!本当に違うから!」 「だが、どう考えても」 「違うって、信じてL.L.!」 必死に否定する僕と、言葉を信じられないと言いたげなL.L.との会話を聞いていたカグヤは、くすくすと笑い出した。 「L.L.知ってますか?枢木のお兄様は天然たらしとして有名なんですの」 「天然、たらし?」 その言葉にL.L.は僅かに眉根を寄せた。 「カグヤ、そう言う事はL.L.に教えなくていいから!」 「あら?いいんですの?では枢木のお兄様は本気でユーフェミアとお付き合いを?」 「違うって、そんなつもりないから!」 「ならばちゃんとL.L.にも天然無自覚だと、知っておいてもらわないといけませんわ」 「そうか天然か。だが、それならどんなに事前準備をしても意味がないと思うが」 困ったなとL.L.がパソコンを操作しながら呟くと、今度はどうすれば天然な行動が取れなくなるかをカグヤと咲世子が話し合い始め、今後ユフィに対してどういう態度を取るべきかを、さんざん教え込まれることになった。 延々と話し続ける2人に、僕は心底疲れたという視線でL.L.を見ると、仕方がないなと苦笑しながら紅茶をいれてくれた。 いい香りに2人も気が付き、L.L.が焼いたというケーキを食べて休憩する事となった。 L.L.が作ったというケーキはモンブラン。市販品と言われても信じてしまえるほどの出来で、とても美味しく、甘い物が苦手な僕でもあっと言う間に食べ終わるほどだ。同じ手作りでも、ユフィとは天地の差があるなと思った時、ふとお昼の会話を思い出した。 「そう言えば、近々宰相補佐のシュナイゼルが日本に来るらしいよ」 「シュナイゼルが?何かあったのか?」 「なんでも、神根島っていう島に遺跡があって、クロヴィスが調査をしていたんだって。で、その事をユフィがシュナイゼルに話したら、興味を持ったらしい」 「不味いな、神根島に行くのか」 「知ってるの?神根島。僕聞いたこと無いけど」 「ああ、あの場所は俺とC.C.がよく使っているから、何かしら残しているかもしれない。最後に使ったのは5年前か」 「遺跡をよく使うの?コード絡みの物なのかな?」 「あの遺跡は世界各地にあって、俺たちはその遺跡を利用して世界中を移動をしている。コード、少なくてもギアスが無ければ門を開く事は出来ないが、そうか」 シュナイゼルが日本に来る。クロヴィスとユーフェミアとシュナイゼル。皇族三人が合流するのは近くの式根島。 どうにかシュナイゼルを押さえられないだろうか?と、L.L.に聞くと、少し考えさせてくれとL.L.は言った。 |