まだ見ぬ明日へ 第36話

「明りが?」
「うん。多分捜索隊だと思うんだけど」

僕とユフィは林の中を進んでいた。
夜、人工的な光が見えた場所へと進んでいく。

「・・・スザク、私の騎士になることは出来ないのですか?国を亡くしたスザクの気持ちもわかりますが、テロリストとして生きるよりも、ずっと幸せになれると思います」

昨夜から何度か尋ねられているその言葉に、僕は苦笑する。

「ごめんねユフィ。僕はブリタニアが許せないし、成すべきことがある。君の騎士にはなれない」
「では、また敵同士に戻るのですね」

暗い声で俯きながら話すユフィに、僕は笑いかけながら、今はね、と言った。

「ユフィが誰にも話さないなら学園でクラスメイトとして会えるよ」
「そうでした!信じてください、絶対に話しませんから」

パンと手を叩きながら、ユフィは嬉しそうな笑顔でこちらを見た。
ユフィが言う事を信じていいのであれば、皇女とゼロは敵同士だが、ユフィとスザクはクラスメイトでいられる。
とはいえ、L.L.とカグヤ、咲世子が無理だと言えば、姿を消すことになるかもしれないが、それを今言う必要はない。
和やかな空気のまま歩みを進めると、前方から人の気配を感じた。

「誰か来る。ユフィ隠れて」

僕は急いで仮面をかぶり、マントを羽織った。
その場で息をひそめ、近づく気配に目を向けると、そこに現れたのはナオトとカレンだった。

「あれは、カレン!」

ユフィは嬉しそうに、カレンの名を呼ぶと、草むらから姿を現した。
いや、隠れていた意味考えてユフィ!

「ユフィ!貴方も来てたの!?」

本当に、思い立ったら即行動する人だな、こちらの都合も少し考えて欲しかった。
僕はすぐにユフィの腕を掴み、銃をユフィの頭に向けた。安全装置は外していないから、あくまでも脅し。ユフィは僕が撃たない事を知っているから、あら?という顔はするが、全然怖がってくれない。
僕はよく空気の読まないと言われるが、彼女は絶対に僕以上に空気の読めない人だ。
だが、こちらに駆け寄ろうとしたカレンは、その姿にぴたりと立ち止まる。
そ の事に、僕は内心ほっとした。

「ナオト、カレンと言う事は、彼女は君の妹か?」
「ああ、そうだ。今は停戦中なんだが・・・これは困ったな。どうしようか、カレン」
「どうしようじゃないわよ、お兄ちゃん。そっちのトップなんでしょ、ちゃんと話をしてよ」

完全に兄弟の会話だ。そして兄は妹に弱いと。
これはどこの兄弟も同じなんだろうか?
まあ、この様子だと二人とも怪我もなく無事に過ごせたようだ。

「よかった。私とゼロも今、停戦中なんですよ」

銃を突きつけられているというのに、その事を全く気にせずユフィは話した。
・・・ユフィ。銃の意味、ホント考えて。
ああもう、だめだ。この状況で銃を向けても何も意味がない。
僕は諦めて銃を降ろした。
ホッとした表情のカレンと、僕が撃つと思っていなかったのだろう苦笑したナオト。
そして、にこにこ笑うユフィ。
敵同士がここに集まったというのに、緊張感が欠片もなかった。

「で、ゼロ。ここがどこか解るか?」
「ここは神根島だ。夜、この辺りに人工的な明かりが見えた。恐らくは捜索隊か、遺跡を調査するために来たアヴァロンだと思うが」
「アヴァロンか、だとしたら不味いな。カレンとユーフェミアはそちらに任せればいいが、俺たちが脱出する方法は考えなきゃな」

ナオトはそう言いながら、カレンとユーフェミアはもう安心だなと視線を向けた。
妹の安全が確保できるのだから、兄としては当然の反応か。

「脱出方法は考えている」

突然、ここには居ないはずの声が聞こえ、カレンはユフィを背に庇う様素早く動いた。
がさりと草を踏む足音と共に姿を現したのは、予想通りの人物だった。
黒いコート、顔を隠すよう目深に被ったフード。変声機越しの声。

「L.L.も来ていたのか」

警戒を示さない口調で話すナオトに、それが騎士団関係者で、自分たちに害を加える相手ではないのだと判断したのだろう、カレンの緊張が僅かに取れた。
だが、僕は反対に嫌な予感をがしていた。
なぜならここに姿を現したのは、L.L.だけだからだ。

「L.L.、もしかして君は一人で来たのか?」
「当然だ、他に誰が来るんだ?ブリタニア軍がいるこの島に」

やはりそうか。何があるか分からないこんな場所に一人で来たのか。
よく来る場所だと言っても、一人で。
仮面の下で、眉根を寄せながら、L.L.を思わず睨みつける。

「では、やはりあの光はブリタニア軍の物か」
「ああ、アヴァロンの物だ。それにしても、4人とも一緒だとはな、探す手間が省けた」
「4人とも、と言う事はこの島に居るのはアヴァロンの者以外我々だけだと?」
「そのはずだ。少なくとも騎士団側で姿を消したのはゼロとナオトだけだからな。ブリタニア側の通信でユーフェミアとカレンの2人が行方不明だと確認済みだ」
「で、アヴァロンに2人を任せるとして、俺たちはどう戻るんだ?」
「今、遺跡にシュナイゼルがナイトメアを持ち込んでいる。それを奪う」
「・・・つまり遺跡に三人で突入し、奪うと?」

明らかに不機嫌そうに話す僕に、ユフィとカレンは、不安そうにこちらを伺っていた。
この分だとゼロとL.L.の関係は険悪なのだ、と認識されただろう。が、別に他人に何と思われても関係ない。
自分が囮になると言い出しかねないL.L.だ。
死なないからと彼は無茶をしすぎる。

「突入はするが、ここから直接その場に行く。私がナイトメアに向かうから、近くに居る兵は任せる。ユーフェミアが傍に居れば、銃は撃ってこないだろう」
「ここから?」

どう見ても、遺跡も、ブリタニア軍も見えないこの場所から行くというL.L.の言葉に、全員が驚き、L.L.を見た。

「行くぞ。いいな2人とも、絶対に無理はするな。もし私がナイトメアにたどり着けなかった時はゼロ、お前がナイトメアを奪え。操縦に問題は無いはずだ」

L.L.がそう言うと同時に、突然周辺に風が吹き荒れた。
そして、足元に禍々しいほど真っ赤なギアスの文様が浮かび上がる。
がくんと地面が揺れ、地響きと共に地面が下降し始めた。




「L.L.、無茶はしないようにって僕は何度も、何っ度も!言ったはずだよね!!」

アジトに戻った僕は、ナオトとロイド、セシルをゼロの部屋に呼び、仮面を取るとL.L.を睨みつけた。
ガウェインと言う名の複座式ナイトメアを奪い、僕たちは神根島から無事に脱出し、黒の騎士団と合流する事が出来た。
あの未来のイメージで見た空飛ぶKMF。もっと先の未来だと思っていたのだが、このガウェインは空を飛ぶ機能を有していて、最悪の未来が徐々に近づいている事をも気づかされた。
それはつまり僕とL.L.が銃を向け会う未来が近いという事。

「無茶などしていない。全員無傷で、しかも敵のナイトメアまで手に入れた。これ以上の成果は無いと思うが?」

フードを外し、素顔を晒したL.L.は、なぜ文句を言われないといけないんだ、と不機嫌そうにこちらを睨んできた。

「それはそうだけど・・・でも、一人で来るなんて!」
「あのナイトメアで逃げる前提で行ったんだ。何人も連れて行けるか。少しは考えろ」

明らかに声を低くし、怒りが爆発しそうなL.L.だが、こちらも退くわけにはいかない。
口を開こうとしたその時、ロイドが僕とL.L.の間にひょろりと体を滑り込ませた。

「そのナイトメアの事ですが、誰が乗るんですかぁ?」
「俺が乗る」

即答されたその返事に、僕とナオトは驚きの視線をL.L.に向けた。

「駄目!絶対駄目!」

僕の否定の言葉に、L.L.は明らかに不機嫌な視線を向けてきた。
あの機体に乗せるなんて、許すつもりはない。

「L.L.のシミュレートは見たから、かなりの腕だとは知ってはいるけど、あの機体は目立ちすぎる。集中攻撃されるのは目に見えている」

そのスザクの言葉に、ナオトも同感だという様に頷いた。

「それに、あれは複座式だろ?誰と乗る気なんだ?マオとか?」
「マオはナイトメアに乗れないし、乗せるわけがないだろう。あんなに感情が不安定なんだ、危険すぎる」
「じゃあ一人で乗るのかい?ああ、藤堂さんと四聖剣が来るんだっけ?藤堂さんと乗るの?」

藤堂のKMFの腕は、ナリタで見ているので、藤堂と乗るのであれば許せるのだが。
それとも、藤堂たちと一緒に来ると言う、先日内部抗争の末解散した日本解放戦線の残党の中から選ぶのだろうか?
彼らが来たら、軍隊の訓練を受けた人間が増えるが、いろいろ大変になりそうだ。
僕としては藤堂と四聖剣だけ欲しいが・・・。って駄目だ、思考が脱線している。

「ああ、もしかして、C.C.が見つかりそうなんですか?」

ロイドが口にしたその名前に、僕はすっと目を細めた。
C.C.。
名前は何度も聞いている。L.L.と同じコード能力者であり、行動を共にする者。
つまり、L.L.に一番近い存在。
ようやくマオのギアス制御装置が完成したので、マオが政庁にいるクロヴィスの心を読み、そこからC.C.の居場所を探し始めた所だった。

「マオから連絡があった。やはり、俺と同じ日にブリタニアに捕まり、実験体として今も奴らの手にあるようだ。居場所が確定次第、俺とマオで救出に行く」
「2人でブリタニア軍の研究施設から?それこそ騎士団で動くべきじゃないのか?」

また危険な事をしようとして。僕は思わず睨みつけながらそう言った。

「状況によってはそれも考えるが、マオがいれば2人でも問題は無い。C.C.が解放されれば、彼女も闘えるからな。C.C.なら問題なくガウェインも操縦できる」

L.L.は何でもないと言いたげに、僕の視線も言葉もあっさりとかわした。
何でそんなにマオを信頼しているんだ?君を襲った男なのに。
しかもあんなに感情が不安定で、暴走しやすい人間と2人で?無茶すぎる。
危険な真似は駄目だと何度も言っているのに、また死ぬ気なのか?
もっと自分の安全も考えてくれと、何度言ったら解ってくれるんだ?
完全に目が座り、L.L.を睨みつけているスザクは、はっきり言って怖い。外気が数度下がったような、そんな冷たい空気が漂う空間に耐えきれなくなったのは、ナオトだった。

「L.L.。悪いけど、君もマオも黒の騎士団の一員だ。俺もこの件に関してはゼロに賛成する。動くなら騎士団として動くべきだ」
「僕もその意見に賛成~。たとえ貴方に、人が持っていないような力があったとしても、無理をしていい理由にはなりませんからねぇ」
「私も賛成です。貴方はもう少し周りの人の気持ちを考えてもいいと思います。C.C.さんを助け出すときは、騎士団として作戦を立ててください」

三人からそう言われると、流石のL.L.も自分の意見を通すのは難しいと判断したのか、不機嫌そうに解ったと呟いた。
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