まだ見ぬ明日へ 第46話


「どういう事だL.L.!君が出るなんて聞いていない!」

作戦が終了し、黒の騎士団の格納庫で、ガウェインから降りてきたL.L.に、ゼロはそう怒鳴りつけた。
幸いここに居るのはL.L.とC.C.、作戦に参加していたナオト、ガウェインとランスロットクラブの回収をしていたロイドとセシル、泉とマオだけだった。

「言っていなかったからな。でもいいだろう?無事作戦は終了した。澤崎の計画は潰れ、ナオトも滞りなく任務を果たし帰還している。何も問題はない」

ちがう、そう言う話ではない!ゼロはそう叫んだ。

「なんで僕に一言言わないんだ!?君は僕の共犯者だろう!」
「そうだ、共犯者だ。だが、何を怒っているんだ?これは何時もお前がやっている事だろう?」

冷たい言葉に、ゼロは言葉を詰まらせた。
まだ怒っているのか、あの日の事を。
共犯者である彼に話を通さずに行動した事を。
確かに僕が悪いのだが、一体いつまで引きずるつもりだ。

「おいおいL.L.。まだ成人もしていない子供相手にそう怒るな。喧嘩の前に茶を入れろ。腹も減ったからピザも焼け。話は茶を呑み茶うけを食べながらでも出来るだろう?」

C.C.がL.L.の後からガウェインから降りて来て、険悪なその空気を砕きながら、L.L.とゼロの間をわざと足音を立てながら通り過ぎた。

「ピザピザと、いい加減あきないのかお前」
「飽きる?あり得ないな。小麦にチーズに沢山の野菜、肉に海鮮。栄養バランスもよく美味い。神の食糧だ」
「俺が作るから栄養バランスがどうにか保たれているんだ。偏食も大概にしろ」

そう言いあいながら、L.L.はC.C.と共に格納庫を後にした。

「ゼロ、ガウェインとランスロットクラブは僕達が見ますから、L.L.とC.C.の所へ行ってください」
「L.L.は理由もなく怒る方でも、煽る方でもありません。ちゃんと話をしてきてくださいね」

ロイドとセシルがそう言うと、ゼロは礼を言った後急いで2人の後を追った。

「でも、ロイドさん、セシルさん、L.L.って本当に怒ってるんですか、あれ」

ランスロットクラブから降り、口論を遠巻きに見ていたナオトが、ロイドとセシルの元へ移動し、そう聞いた。

「あら、ナオト君はどう思うのかしら?」
「なんか、わざとな気がするんですよね。あの、喧嘩の原因になったっていう会議の後からの態度も、なんか可笑しいんですよ。何がと言われても答えられないけど、本心からとは思えなくて」

言葉も冷たいし、拒絶もしていたが、その声音に罪悪感のような物を感じていた。
ゼロは頑なにL.L.をガウェインに乗せないようにしていたから、調整のためにと喧嘩を装い傍を離れたと考えれば納得は出来るのだが、それが終わった今、まだ続ける意味は解らない。

「うんうん、君は本当に優秀だね。僕にはその辺の人間の感情ってやつは全く理解できないんだけどさ、L.L.様はあの程度の事で怒る御方じゃない事は知ってる。ガウェインの調整もあるだろうけど、あと一つ二つ目的があるんじゃないかな」
「目的が・・・ま、俺が考えても仕方ないか。L.L.の思考に俺が行きつけるわけがない」

ナオトはそう言うと、腕を組み、うんうんと頷いた。

「L.L.はすっごく優しいんだから。ゼロにとってマイナスになる事はしないよ」

ギアスの制御装置を手に入れてから、目に見えて落ち着いたマオが、作業用のつなぎを着、髪を後ろに纏めてガウェインの整備を始めていた。制御装置を定期的に解除し、周囲を警戒する以外は今は殆ど能力をオフにしている。

人の声が聞こえないなんて、なんて幸せなんだ。すっごく周りが静かだよ。
恨みがこもった声も、下種な考えも、不快な発言も何も聞こえない。ああ、こんな日が来るなんて信じられないよ。
これだけ静かなら、きっと夜もよく眠れるよ。ありがとう、ありがとう!

機械が完成した日、マオはそう言いながら、涙を流して喜んだ。
C.C.を救い出してからは、基本的にC.C.と共に行動しているが、今はこうしてC.C.から離れ、ナイトメアの整備を手伝えるほど精神が安定し、それと同時に止まっていた精神も成長をはじめているようだった。
人の話をよく聞き、よく考えてから行動する、2人によく似た思慮深い人格へ。
なにせマオの教師はL.L.とC.C.だ。
これからマオは化けるぞ、とC.C.が嬉しそうに言っていたのが印象的だった。
最初会った時はその狂気の瞳に怖気が走ったが、そんな人間をここまで更生させるL.L.には、それまで以上に信頼を向ける事となった。
枢木朱雀と皇神楽耶天皇の信頼を受けただけの事はある。
さて、そんな人たちのやり取りに入るべきではないと、ナオトも作業用のつなぎを身につけ、ランスロットクラブの整備に向かった。

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