まだ見ぬ明日へ 第50話


授業が終わり、大急ぎで部屋に戻った僕は、部屋にしっかりと鍵を掛けた後、新たに用意したパソコンを机の引き出しから出し、すぐに立ち上げた。L.L.は僕が帰宅したことにも気付かず、何時も通り僕のベッドで眠っている。
立ちあがったパソコンにパスワードをいくつか打ち込むと、黒の騎士団のエンブレムが画面に現れ、そこでさらにパスワードを打ち込むと、通信回線が開いた。

『ゼロ、帰ったか』
「すまないナオト、遅くなった」

パソコンに表示された画面には、こちらが通信回線を開くのを待っていたのであろうナオトと、その後ろに泉の姿が見えた。このパソコンは映像つきの通信専用の端末。だが、こちらの姿は相手には一切流れず、あちらには画面にはエンブレムのみで、こちらの機械で加工された音声だけが流れている。一方的なこの状況は正直心苦しいが、自室で仮面とマントを付けるわけにはいかないので、彼らも納得してくれていた。
画面の映る彼らの明るい表情から、作戦の成功が読み取れた。
あの後時間はかかったが、C.C.の言う1手を見つける事が出来、そのやり取りに納得したL.L.が残りの2手を開示した。
たった3手。
だがその3手は作戦の成功率をほぼ100%とし、動かすのは逃走経路確保の人員を入れてたったの11人。しかも相手に気づかれることなく全てを終えるという、想定以上の効果を生んだ。

『今日の作戦は大成功だった。死傷者も出さずに完璧に終えたよ。相手はまだ俺たちが何をしたか気付いていないだろうな。気が付くのは恐らく、全て終わった後だ。今ディートハルトが手をまわしている』
「よくやった、ナオト。今回の作戦に参加した者には休養を与えてくれ。それと、次の作戦からは、ロイドが作ったこの通信機器を使い会議を行う事になる」
『ああ、聞いている。ゼロには出来るだけそちらに居て欲しいというのは、俺たちの希望でもあるんだ。早い段階でこの体制を確立できるよう努力するよ』
「すまないが、頼む。騎士団には今まで通りC.C.が待機する。何かあれば彼女を頼れ。彼女は口は悪いが、根はやさしい。文句を言いながらも道を示してくれるだろう」

その僕の言葉に、通信機の向こうでナオトと泉が苦笑していた。

『解っている。じゃあL.L.によろしく言ってくれ』

そう言うと通信は切れ、画面はブラックアウトした。パソコンを閉じ、僕は作戦の成功でようやく肩の荷が降た気がして、大きく息を吐いた。
・・・疲れた。
授業中も作戦が気になって集中できなかったから、あとでL.L.に頼んで今日の分を取り戻さなきゃいけない。でも、その前に休みたい。
僕は手早く制服から部屋着に着替え、L.L.が眠るベッドにもぐりこんだ。
一緒に眠るのを嫌がるL.L.だが、C.C.の事は許していたのだから、別に僕が添い寝してもいいはずだ。
L.L.は壁に向かい、体を横にして眠っていたので、彼の体温で温められた布団に包まり、彼とは逆方向に体を向けた。背中に彼の体温を感じていると、なぜだろう、とても安心する。それは彼が生きていると実感できるからだろうか?
そう、彼は生きている。
ここで、生きているんだ。
ふう、と安堵の息を吐いてから目を閉じると、すぐに深い眠りに落ちた。




「・・・?・・・!?」

何かを背中に感じ目を開けると、ベッドの中にスザクが潜り込んでいた。勝手に潜り込むのはC.C.であってスザクは今までそんな事はなかったのだが。
寝すぎたかと時計を確認しても放課後になったばかりの時間で、まだスザクが眠る時間ではなかった。
どうしたんだ?具合でも悪いのか?ならばどうして俺を起こさないんだ。
俺は眠るスザクを起こさないよう、その額に手を当てた。熱は無さそうだ。顔色も悪くない。呼吸も正常。熟睡しているように見える。その事にひとまず安堵し、ではどうしたのだろうと、思考を巡らした。
この時間なら作戦はとっくに終わっている。その結果を聞くべきは俺ではなくスザクなので、俺は確認せず眠っていたが、スザクは確認したのだろうか?
机に視線を向けると、眠る前には引き出しに仕舞われていたはずのパソコンが机の上に置かれている。ということは、ナオト達と話はしたのか。
俺を起こさなかったという事は作戦は成功。
まあ、作戦は完璧、失敗する方が難しい内容にまで仕上げたのだ。
それに、万が一何かあればC.C.から連絡が来る事になっていたから、心配はしていなかったが、スザクもそうとは限らないか。となると、作戦の成功を確認して、疲れが一気に来たか?ありえるな。
元々スザクは体力馬鹿だ。
そのスザクが今回の作戦に頭を使っただけではなく、根を詰め過ぎていた。
成長の早さは喜ばしいが、無理をして倒れたら元も子もない。
ベッドから出ようかと思ったが、今動けばスザクを起こす可能性が高いと判断し、先ほどのように体を横にし、再び目を閉じた。
そのまま思考を再びCの世界に飛ばす。
ジェレミアの左目はC.C.の遺伝子の影響だが、マオの手に入れた情報では他にギアス能力者がブリタニアに居るようだった。コード能力者の遺伝子を用い、ギアスを発現させる技術を手にしたのはクロヴィスの研究員だけとるすならば、コード能力者がブリタニアに居るということになる。
だが、ブリタニアのコード能力者と連絡を取ろうとCの世界を通し干渉を加えても、一切の反応がない。今まであらゆる方法を試したが、ここまで反応がないと言う事は・・・。
その可能性はあり得る。
いや、その可能性が一番高い。
過去に何人も目にしてきたのだ、きっとそうなのだろう。
それは、コード能力者が最後に行き着くところ。
・・・いや、結論を出すのはまだ早いか。
暗くなる意識を振り払い、俺はCの世界へ再び干渉した。

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