帽子屋の冒険2 第13話 |
広々としたその部屋にいるのは、白の騎士と白いコートの銀髪の青年だけでした。 その銀髪の青年は、まるで値踏みするような視線で白の騎士を見つめた後、悠然とした笑みを浮かべました。 気に入らないなと、白の騎士は切っ先を向けたまま、その青年を睨みつけます。 「君が僕を此処に呼んだのか?」 「そういう事になるのかな。あのチェシャ猫が姉弟ゴッコしてた男が逃げちゃったって報告がきてさ、実は困ってたんだ。いいところに君がいたからね。また逃げられないうちにここに招待しただけだよ。ああ、剣はいい加減下ろしてくれないかな?それとも今度は100m上空から落ちてみる?」 冷たい笑みを浮かべながら言われた言葉に、ポケットの中にいる帽子屋を危険には晒せないと、白の騎士は剣を鞘に戻しました。 「バンダースナッチを誘拐するよう命令したのは、君という事でいいのかな?」 白の騎士の言葉に、男はそういうことになるのかなと、不愉快そうな笑みを浮かべました。 「欲しかったのは帽子屋で、バンダースナッチでは無かったんだけどね。まあいいよ、君を餌に帽子屋を釣るから」 「帽子屋を?彼にどんな用があるのかな?」 「関係ないだろう、君には。さて、どうやって呼ぼうかな?彼はああ見えて激情型だからね。その純白の衣服を血に染めて、ハートの城にでも投げ込めば、きっと彼は犯人である僕をすぐに見つけ出し、誰にも言わず一人で乗り込んでくるだろうね」 その言葉に、白の騎士の瞳は更に険しさが増し、細くなりました。 ポケットの中で会話を聞いていた帽子屋が、白の騎士に危害を加えるという言葉を聞いてから、ここから出せと、じたばたと暴れだしたので、何時でも迎撃できるよう構えると同時にそのポケットを男の視界から見えないよう、自分の体で隠しました。 万が一にも、帽子屋に怪我などさせるわけにはいきません。 その場所が運悪くこのポケットだった場合、帽子屋の命に関わります。 そして、今の会話でわかったことは、この男は帽子屋が小人化し、ギアスが使えなくなっていることを知らないということです。 本当は帽子屋の誘拐に成功していて、更には今ここに帽子屋がいる可能性など欠片も考えていない事は白の騎士にも解りました。 これは好都合です。 万が一にも帽子屋がここにいることを気づかれてしまえば、白の騎士だけ追い返されて、帽子屋だけここに残されてしまいます。 相手がコードをもっている以上、救い出すことは不可能と言っていいでしょう。 ならば今がチャンスとばかりに、白の騎士は男目がけて走りだしました。 一瞬でその男に接近し、素早く剣を振り下ろします。 瞬き程の時間で行われた白の騎士の攻撃でしたが、振り下ろした剣の先に男はいませんでした。 「コード能力者相手に、物理攻撃が効くと思ったのかな?」 後方から聞こえたその声に振り返ること無く、白の騎士は反射的に回避行動に移りました。白の騎士がいた場所には頭上から数十の刃物が降り注ぎ、回避した先にも刃物が次々降ってきます。 頭上を確認する余裕もなく、白の騎士は刃物をかわし続けました。 「すごいな、君は本当に人間なのかな?」 それまで白の騎士を小馬鹿にしていた男は、すっと眼を細めると、先ほどよりも多い刃物を次々と降らせ始めました。 明らかに殺意を込めたその攻撃を紙一重で交わしながら、白の騎士は男を目指しますが、あと少しのところで男は転移してしまいます。 そして地に落ちた刃物を再び転移させ、空中から降らせ続けているのです。 どちらの体力が先に尽きるかの勝負ではありますが、その刃物で怪我をしたら不利となる白の騎士のほうが明らかに分が悪いのです。 その上、相手は危なくなったらここではない安全な場所へ転移すれば済みます。 その前に仕留める。 白の騎士はその足を止めること無く銀髪の男を目指しました。 銀髪の男=ライ。 ロスカラはやったんだけど、ライの口調とかいまいち理解ってません。 UPして思い出したけど、ガラス片と香りがどうして誘拐犯たちについていたのか全く説明してませんね。まあいいか。 |