仮面の名 第9話 |
ゼロの脳はあくまでもゼロの体の脳。 玉城の脳はあくまでも玉城の体の脳。 それが解ったからと言って何が変わるのだろうと思いながら、私はちらりと後ろに座るルルーシュを見た。玉城の体だと言うのに、凛々しく見えるから反則だ。 完全に別人と言っていいほど頼りがいのある青年がそこに座っている。 その顔と表情は人の内面を表す鏡だと以前聞いた気がする。 意地悪な人の顔は意地悪な顔に。 優しい顔の人は優しい顔に。 まさに今目の前でそれを見ているわけだ。 私もそうなのかしら。 カレンは思わずその頬に手を当てた。 「あくまでも、ゼロの体の脳はゼロに、ねぇ。言われてみればそうよね。でも、そうなるとその脳波が届かない範囲に行った場合どうなるのかしら?最悪、死んだ場合は?」 脳波自体に異常は無かったはずなのよねぇ。とラクシャータは眉を寄せそう口にした。 今まで考えるべき指針が無く、この現象にどう対応すべきか悩んでいたが、脳波が違う体に作用しているというのであれば、いろいろ思いつく事はある。 「少なくてもこのアジト内の移動では何も問題は無かった。死んだ場合の話で言うなら、体が死んだ時点で脳も死ぬ。だから、私の体が死ねば私が、玉城の体が死ねば玉城が死ぬことになるだろう」 「成程、最悪玉城のその体を殺せば、お前は戻るというわけか」 「なっ!ふざけんなよC.C.!」 「断言はできないな。私の脳波が私の体に戻らない限り、精神的な死を迎える可能性はある」 「駄目じゃないか」 心底残念そうにC.C.がそう口にしたので、玉城:ゼロは嗜めるように口を開いた。 「そもそも、玉城を犠牲にする前提で進めようとするな」 「ではどうする気だ?確かにゼロに関しては問題は無い。お前がその体でゼロとして立てばいいからな。だが、この玉城はどうする?はっきり言って私はこれ以上面倒は見たくないぞ!」 「C.C.」 「お前は解って無いだろ!あの玉城にお前が入ったことで、まるで別人だと言われるぐらい変わるんだぞ!?それはつまり!お前の体に玉城が入ったことで、お前も別人のようになってるという事だ!お前の顔で!声で!あの馬鹿げた発言を聞き続けた私は偉いぞ!褒めて欲しいぐらいだ!」 堪忍袋の緒が切れたとでもいうように、C.C.は怒りをあらわにし、玉城:ゼロに怒鳴りつけた。 「そこまで言うかお前は」 呆れたような口調で玉城:ゼロは呟いた。 「あーえーっと、ゼロ。C.C.の意見には同意です。すっごく、馬鹿っぽく見えるんですよね。イメージも崩れるし、C.C.の気持ち理解できますよ」 「そうだな。私はまだこの玉城とあまり長く共に居ないが、それでも君のイメージがだいぶ悪くなったのは間違いない」 「そうねぇ。私も検査でしばらく一緒だったけど、あれは見てて腹立たしいわよ?」 素顔を知る三人もC.C.に同意し、まあ確かに、俺の顔でそんな発言するな!とか、そんな笑い方するな!とか、殴りたい衝動はあったルルーシュは、自分の体だからそう感じているのだと思っていたが、傍から見てもそうなのかとようやく理解した。 「だがC.C.、藤堂に任せるのを拒んだのはお前だ」 「当然だ」 大丈夫だとは思うが、藤堂も男だ。何かあったら困る。 「カレンとラクシャータも駄目だと言ったな」 「当たり前だ。流石の私でも、こんな獣の相手に女は選べない」 自分ならどうにもできるが、仮にもこの体は男で、中身は獣。非力なこいつがこの強い女達に勝てると思わないが、その見てくれに流されないとも限らない。だから却下だ。 「私が自分で見ると言うのも拒んだな」 「当たり前だ」とC.C.。 「当然よ」とカレン。 「それは反対するわ」とラクシャータ。 「・・・・」そして藤堂。 女性陣は全員反対し、藤堂は無言のまま目をそらした。 「待て藤堂、そこは否定してくれ。どうして目をそらした」 「・・・すまないゼロ。否定出来なくてな」 「・・・理由をいい加減教えてくれないか」 「拒否する」と強い意志を乗せて藤堂。 「言えないわよ」と、目をそらしながらカレン。 「こればっかりはねぇ」と苦笑しながらラクシャータ。 「お前は知らなくていい事だよ、ゼロ」いつもの笑みを浮かべてC.C.。 「・・・どうしろというんだお前たちは」 素顔を知る全員が駄目だと流石に打つ手なし。その体を眠らせ続けると言うのか。 「仕方がない。もう少しこの玉城には私がつき合おう。だからさっさと解明しろ。そして私にピザをよこせ!今日の量では全然足りないぞ!倍はよこせ倍は!ストレス解消には美味しい物を食べるのが一番だ!」 結局はそれかと、玉城:ゼロは嘆息した。 |