黒の至宝 第6話 |
「本気で言ってるのか!?それはあれか、男にナンパされて困っているところを、颯爽と現れた騎士に助けてもらったってことか!?」 アーッハハハハハハッ・・・ッゲホゲホッゲホッ・・・クッハハッハハハっゲホッ C.C.は咽てもなお笑い続け、話の最中に戻ってきた藤堂は、複雑そうな表情でルルーシュを伺っている。 「笑いすぎだ!C.C.!!」 「そうよ!本当に冗談じゃないわよアイツ!しかも、ゼロをカンに任せて追っていた先で、ルルーシュを見つけてるのよ!」 その言葉に、C.C.の笑い声がピタリと止まる。 「なんだと?つまり野生のカンだけでこいつを見つけたのか?」 C.C.は一転、顔から表情を消し、目を細めながら虚空を見た。 それは・・・末恐ろしいな枢木スザク 「スザク君は以前、スーツに眼鏡程度の変装で、私を別人と判じたことがあってな」 「そうなのか?藤堂」 不機嫌そうにジョッキを傾けていたルルーシュの手がぴたりと止まった 「ああ、このあたりで黒の騎士団の藤堂を見ませんでしたか、と聞かれた時には驚いてしまった」 まさか紅月の事もわからなかったとは、と流石の藤堂も呆れ顔だ。 スザクが10歳になるまでの間だが、藤堂はスザクに武術を教えていたのだ。 そんな自分を、洋服を着たというだけで判別できなくなるとは、正直信じたくなくて誰にも話さなかったのだ。 「うっわぁ・・・アイツそこまで馬鹿なんだ・・・じゃあ私の事ばれないのも当然ね」 流石に呆れた様子のカレンは、スザクは脅威ではないと評価したようだ。 だが、私の評価は逆。 「本当に恐ろしい男だな枢木スザク」 私は最後のピザを手に取り、一口食べた。すっかり冷えてチーズが固まっていているのが残念だ。 「そうかしら?ちょっとの変装でごまかせるなら問題ないんじゃないの?」 そう言いながらカレンは最後の唐揚げを口にする。 甘いな、と私はカレンを一瞥した。 「ゼロを探して、仮面を外したルルーシュに。藤堂を探して、変装した藤堂に話しかけたんだぞ」 つまり、目的の相手を確実に一度捕まえている状況だ。しかも野生のカンで。 これで仮面の中身がルルーシュ、変装したのが藤堂だとばれた後なら・・・ 「これが恐ろしくなくて、なんだと言うんだ。」 あっ・・・と、カレンがつぶやいた後、辺りはしんと静まり返った。 それでなくても運動に難のあるルルーシュを逃がすため、いろいろ策を練っているというのに、あの男はその策を無視し、カンでゼロを見つけ出してしまうという事だ。 あのイレギュラーめ、と忌々しそうにつぶやく声が聞こえた。 「だが、今のところゼロの正体はばれていない。私と紅月がスザク君に変装を見破られる可能性はある、と考えて動くべきだが、ルルーシュ君は問題ないだろう。あの仮面と外套がなければ君だとはだれも思わない」 全員で今のルルーシュの姿をまじまじと見る。 黒のスーツの上下と黒のネクタイそして黒の靴に、今は外している腕時計と手袋も黒。白いシャツとアメジストのタイピン以外すべて黒尽くしがルルーシュの基本スタイルだ。 一見地味に見えてしまう服装でも、そのつややかな黒髪と、シミ一つない真っ白な肌、深く輝く紫水晶を思わせるその瞳のせいでその印象はがらりと変わる。 むしろ服装が黒で統一されているから余計目立つのだろうか。どこからどう見ても、物語に出てくる王子様と言われて納得できてしまうほどの美少年である。 黒づくめという点では同じ怪盗ゼロの仮面と外套を外すと、中身はこれなのだと誰が気づくだろう。 眼鏡を外すと実は美少女でした、的なお約束がまさかあの仮面の下にあると考えている奴は・・・腐ってない限りはいない、はずだ。 「まあ、ルルーシュの悲鳴が聞こえて助けに行ったって言うし、偶然かもしれないけど」 「悲鳴、だと?」 「急に転ばされたから驚いて声が出ただけだ!断じて悲鳴ではない!」 それを悲鳴っていうんだが?わかってても認めたくないのだろう。流石のC.C.もこれ以上ルルーシュを怒らせると、次のピザに困りそうなので突っ込むのをやめた。 |