学ビノ園 第3話


神聖ブリタニア帝国第三皇子クロヴィス・ラ・ブリタニア。
エリア11で最も有名な皇族であり、このエリアの最高責任者・総督と言う地位にある人物が、なぜかこのアッシュフォード学園の教室にやってきた。それも、怒りをあらわにし、この教室の教壇の前に立っていた男に詰め寄っている。
神聖ブリタニア帝国第二皇子シュナイゼル・エル・ブリタニア。
ブリタニアで二番目の権力を持っていると称される宰相であり、このエリア11において皇帝と総督に次いで知名度が高い人物は、平然とした顔で教壇に立ち、異母弟が詰め寄ってくるのを笑みを浮かべて見つめていた。

今この教室には皇位継承権の高い皇族が何故か二人もいるという状況となり、教職員はパニック寸前、生徒たちはまるで俳優を生で見ているような高揚感を感じ、特に少々腐った女子たちは美形揃いのブリタニア皇族の兄弟喧嘩を生で見れることに興奮しているらしく、きゃあきゃあと小さな悲鳴をあげていた。

「やあクロヴィス、随分と早かったね」
「早かったねじゃありません!あれほど!昨日あれほどお願いしましたよね!?絶対に何もしないでくださいと!私が7年かけてようやく!ようやく探し当て、無事を確認したというのに!兄上のせいで逃げられたらどうするつもりですか!!」

怒鳴りつけるクロヴィスの怒りを流し、シュナイゼルは平然とロイヤルスマイルを浮かべていた。
7年・・・?7年だと!?まさか、俺たちを見つけたのはクロヴィスか!?
拾い出した情報で、あらゆる可能性を考えていると、クロヴィスは更なる情報を投下してくれた。いや、正しくはこれは爆弾発言か。幸いこの言葉の意味に誰も気づかず不発に終わったが、俺にとっては間違いなく爆弾だった。

「あの子たちが私たちを警戒していることも知っているでしょう!ですから、まずは二人の安全を確保し、その後徐々に懐柔していく予定だったんですよ!そのために、あの子の親友まで探して護衛にする予定で手続きを進めていたんです!」
「それは解っているよクロヴィス。だが、だからと言って私が動かない理由にはならないのではないかな?」

聞き逃せない単語が多すぎるが、その中でも親友を探してという言葉が強く頭に残った。 その時、部屋の騒ぎを外で伺き見ていたらしい一人の男子学生が、この喧嘩は終わらなそうだと見切りをつけたのか、教室内に入ってきた。
くりるとした茶色の癖毛に深い緑色の瞳。肌の色からイレブンと解る少年は、アッシュフォードの制服を纏っていた。だが、そんな生徒、ルルーシュの記憶には存在しない。存在しない生徒だが、ルルーシュはすぐにそれが誰か解った。
迷うことなく少年はルルーシュを目指し、その横に立つ。

「ルルーシュ、久しぶりだね」
「お前・・・スザクか?」

周りの空気など一切無視し、スザクはにっこりと笑顔を向けてきた。
ああ、間違いない、間違いなくスザクだ。
この空気の読めなさとこの向日葵のような笑顔。
スザク以外にいるはずがない。
だが、どうしてスザクがここに?

「なんか凄いことになっちゃったね」

いまだ喧々囂々とやり合っているブリタニア皇族の兄弟喧嘩を見ながら、スザクはのほほんと言った。いや、お前は昔から空気は読めてない奴だが、この険悪な状況でそれは流石にどうなんだと、ルルーシュは困惑したようにスザクを見た。

「なんで、お前・・・」

ヒソヒソと、周りに聞こえないよう声を潜めて尋ねると、スザクは顔を寄せて同じくヒソヒソと話しだした。幸い全員の視線は皇族二人に釘付で、こちらを伺うものはいない。

「僕?ああ、一昨年ブ軍に入ったんだけど、クロヴィス殿下が僕の名前をリストで見つけて、君に関係している可能性があるからって殿下の直属に配置されたんだ」

枢木って名前は珍しいからね。

「いや、お前まさか」

俺とナナリーの生存を知るのはアッシュフォードと・・・スザクだけだ。
まさか、いや、そんな、スザクが!?
ルルーシュの反応から、疑われていることに気づいたスザクは、慌てて首を振った。

「僕は何も話してないよ?でも殿下は君とナナリーは絶対に生きてる筈だから、必ず見つけ出すって言ってさ。そして、見つけた時には僕が君たちの護衛につくようにって、ずっと訓練させられてたんだけど、先日やっと君たちを見つけたって・・・」
「スザク」

もうそれ以上の情報はいらないと、ルルーシュはスザクの名を呼んだ。

「うん、解ってるよ」

君の考えぐらい。
ルルーシュの強い視線を受け、スザクはにっこりと笑顔を返した。

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