学ビノ園 第4話 |
神聖ブリタニア帝国 第二皇子 シュナイゼル・エル・ブリタニア 第三皇子 クロヴィス・ラ・ブリタニア 麗しの皇族兄弟が、普通に考えればあり得ないことだが、庶民も通う学園の教室内で言い争いをしていた。話している内容は「誰か」を見つけたとか「誰か」を見守ろうととか、さっぱり理解できないものではあったが、二人の口論するその姿はまるで映画のシーンのようで全員の視線がそちらにくぎ付けとなっていた。 そんな中、突然ガラリと無粋な音を立てて窓が開かれた。 暖かな教室内に、まだ少し肌寒いが心地のいい風が吹き込む。 何だろう?と、全員の視線がそちらに向いた瞬間。 「ほわあぁぁぁぁぁぁぁ!?」 「ルルーシュ、口閉じてて、舌噛むよ!」 先ほどやってきた見知らぬ学生が、この学園の王子様であり、絶大な人気を誇る副会長を軽々と肩に担ぎあげたかと思うと、躊躇うこと無く窓から飛び降りたのだ。 教室内からは悲鳴が上がり、多くの生徒が青ざめた顔で窓へ駆け寄った。 何せこの教室は3階にある。 こんな高さから飛び降りて無事であるはずが・・・。 だが、窓の下には何事も無かったかのように着地し、ルルーシュを肩から腕に抱え直して、ものすごい速さで走り去っていくスザクの後ろ姿が見えた。 安堵と共に、信じられないものを見たという茫然とした視線がルルーシュとスザクに向けられ、クロヴィスも窓から外を見、ルルーシュの無事に胸をなでおろしていた時、シュナイゼルは懐から携帯を取り出した。 「カノン」 『イエス・ユアハイネス』 それだけで通じたのか、シュナイゼルは口元に笑みを浮かべたまま携帯を閉じた。 「す、す、す、す、すざくっっ!スザクッ!!」 突然担ぎあげられたと思ったら窓から飛び降り、地上に降りたとたんに肩から降ろされると、流れるような動作で抵抗するまもなく姫抱きにされたルルーシュは、抗議の声をあげようとするのだが、ものすごい速さで駆け抜けるスザクの腕の中では思うように喋れなかった。しっかりその両腕で支えてくれてはいるが、前後左右に振られている上に人を抱えてるとは思えない速さで駆けているため、恐怖から無意識に腕をスザクの首に回し、ギュッとしがみついた。羞恥心から頬を染め、上目づかいで睨みつけ、抗議の声をあげようとするルルーシュに、スザクは楽しげな笑みを浮かべている。 「喋らないでよ、舌を噛むってば。で、ナナリーは何処?」 ナナリー。 その名前でルルーシュのスイッチも切り替わる。 羞恥に染まり、潤んでいた瞳に知性が戻り、冷静さを取り戻した。 この恰好は恥ずかしいが、最優先はナナリーの安全。 そしてスザクと三人で逃げること。 ルルーシュは進むべき道を指さした。 「あっち?校舎から離れちゃうよ?」 不思議そうに眉を寄せたスザクに、いいんだとルルーシュは何度も頷いた。今日はこの時間ナナリーのクラスはは体育に割り振られている為、見学も出来ないナナリーはクラブハウスに戻っている。だらか目指すはクラブハウスだ。 成人近い男性一人抱えていたというのに、間違いなくルルーシュが一人で走るより速く、スザクは一度も足を止めること無くクラブハウスにたどり着いた。 「鍵を開ける。降ろせ」 玄関にたどり着いても降ろす気配のないスザクに文句を言うと、えー?と不愉快そうな声が上がった。 「このままでも開けれるよね?」 だから開けてよ?と言うスザクの耳をぎゅっと引っ張る。 「いいから降ろせ!」 「いたっいたたたたっ解ったから耳、引っ張らないでっ」 再度の命令に、渋々ながらルルーシュを下ろし、引っ張られていた耳をさすった。 そしてルルーシュがカギを開けている間、辺りを見回した。 あれだけの騒ぎを起こし走ってきたにもかかわらず、このあたりは妙に静かだった。 ・・・嫌な予感がするなと、思わず目を眇めた。 扉が開き、ルルーシュが移動したので、スザクもすかさず後を追った。 もう離れてはいけない、この手の届く範囲にいるなら守れるのだから。 そう思ったのだが。 「ぐぁっ!」 「・・っ!?スザク!!」 扉を潜った途端鈍い音が聞こえ、同時に後ろにいたスザクが苦しげなうめき声をあげて倒れた。慌てて駆け寄りその体を揺するが反応がない。 「スザク?スザク!!」 急いで呼吸と脈を確認する。どちらも僅かに速いが、それはここまで走って来たからだろう。生きてはいる。だが、完全に気を失っていた。 無意識にだろう、スザクは脇腹を押えていたので、恐る恐るその手を退けると、赤いしみがジワリと滲んできた。 「・・・まさか、撃たれたのか!?」 スザクと再会できたことの喜びと、異母兄二人という異常事態で失念していたが、自分たちが生きている事を知られたのだから暗殺者がやってくるのは当然の流れだった。 一気に顔から血の気が引き、このままでは危険だと、スザクの体を引きずってクラブハウス内に入り施錠した。 何処からだ。 誰がスザクを・・・! 窓から外を伺うが、何も解らない。 周りはあまりにも静かすぎた。 スザクをここに残すのは心配だが、まずはナナリーを確保し、ナナリーには悪いが車いすにスザクもどうにか乗せ、それを俺が押して逃げる他ない。 止血の道具も必要だ。 「スザク、すぐ戻る。苦しいだろうが少し我慢していてくれ」 ルルーシュはその場を駆けだし、ナナリーがいるはずの場所へ向かった。 |