学ビノ園 第8話


「お兄様、クロヴィスお兄様は信用して大丈夫です」
「・・・え?だがナナリー」
「ふふ、お兄様、私の前では誰も嘘はつけないんですよ?」

にっこり笑顔で断言するその姿はあまりにも愛らしく、ああ、俺のナナリーは何て心が広く優しいんだと、ルルーシュは感動に打ちひしがれた。・・・幸い、先ほどとてつもなく便利な能力、絶対遵守のギアスを手に入れたから、最悪の場合この二人は傀儡にしてしまおうと、ルルーシュは結論をだし「そうだね、ナナリーの前では嘘は付けないね」と、にっこり笑顔を返した。

「クロヴィス兄さん、説明をしていただけますか?」
「クロヴィスお兄様、どうしてこんなことになったのですか?」

ナナリーが太鼓判を押した以上、会話をすべきはクロヴィスだとルルーシュは判断し尋ねた。その声からは、先ほどの地を這うような冷たさは無くなったが、「ナナリーが大丈夫といったんですよ、まさかナナリーの期待を裏切ることはしないでしょうね?」という無言の圧力が感じられた。

「半年ほど前、ようやくお前たちを見つけることが出来た。私たちが気付いたと知ればお前たちは逃げてしまうだろうから、まずはお前たちの周りを安全な状態にしようと、手をまわしていたんだ。そして・・・」

クロヴィスはちらりと、直ぐ側のキッチンに置かれた簡易ベッドに横たわるスザクを見た。本来なら病院に運ぶべきなのだが、クロヴィスたちを信用していない以上、自分の目の届かない場所に行かせられないとルルーシュが引かなかったため、この場で応急処置がされ、今も咲世子の監視のもとで医者たちがスザクの容体を確認していた。命に別条はないが、撃たれてから一度も目を覚ます事無く、昏々と眠り続けている。

「首相であった枢木に預けられた事は知っていたからね。去年スザクの名前を入隊者リストで見つけ、何か情報を得られないかと話を聞いたら、君たちはとても仲良くしていたという。ならば、友人である彼を君たちの護衛にと思い、私の直属に加えて訓練をさせていたのだよ」

二人を見つけ、まずはスザクを学園に入れて安全を確保しようと動いていたら、シュナイゼルに気づかれてしまった。
シュナイゼルの行動は早かった。
元々クロヴィスの動きが怪しい、特に名誉を傍に置くなど絶対に何かあると調べていたら、ルルーシュとナナリーに行きついたのだという。突然宰相がブリタニアからエリア11にやって来ていたので、嫌な予感を覚えたクロヴィスがシュナイゼルと話し合いの場を設けた。予想通り二人の生存を知られていて、まずは二人の安全を確保し、ゆっくりと時間をかけて二人と接触を、と説明していたのだが、「そうだね、二人の安全確保が最優先だからね」とロイヤルスマイルで返しておいて、目を離した隙にアッシュフォードの教師として学園に来ていたという、とんでもない説明をした。
冷静沈着、全ての行動を計算ずくで行う名宰相とは思えない行動力に後れを取ったクロヴィスが、スザクを連れて慌ててやってきて・・・という流れがあの騒動だという。
執着するものが何も無いと言われているシュナイゼルだが、昔からルルーシュにだけ執着していた。そのルルーシュが生きているなら、全てをなげうってでもその傍に行きたいと暴走したらしい。この辺の行動力は流石ユフィの兄と思うべきなのか。

「いいじゃないか。私が教師として学園にいるだけで、二人に手を出そうなどと言う愚か者たちを抑止できるからね」
「出来てないだろう!思いっきり襲われてたじゃないか!!」

何を寝ぼけた事を言っているんだ!と、ルルーシュは怒鳴った。

「あの程度の危機、自力でどうにかでき無くてどうするんだいルルーシュ」

あの時、彼らの目がルルーシュに向いた隙に、黒幕を全員確保できたのだから、褒めてほしい所だと、シュナイゼルは平然と答えた。とはいえ、表面上平然としているが、シュナイゼルの計算では、身体能力にすぐれたスザクがルルーシュを守る前提で泳がしていたのに、スザクが速攻で倒れたため、内心冷や汗ものだった。スザクに関してはルルーシュの手前処罰は出来ないが、クラブハウスで捕えた者、そして黒幕たちには死よりも辛い生き地獄をプレゼントしようと思うぐらい腹も立てている。
どうにかなったのは運が良かったから。そして下っ端とはいえ暗殺者を魅了するほどのものをルルーシュが持っていたからだが、計算ミスしたなどと悟らせるつもりはない。そんなシュナイゼルのロイヤルスマイルに隠された思いには誰も気づかず、当然のことながらこいつは敵だとルルーシュに認定された。クロヴィスに関してはナナリー補正が入ってしまったため、保留中だ。

「では、次はシュナイゼルお兄様」

ナナリーはすっと手を差し出すと、シュナイゼルは恭しく取った。

「どのような目的で教師になったのですか?」

にっこりと愛らしい笑顔で、ナナリーは核心をついてきた。

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